第55話 事後との勘違い

 団体戦の事を考えていたのは現実逃避だった。

 今の状況は隣にウルナさんが裸で寝ている。

 シーツに染み付いた俺の体液にはウルナさんの血が混ざっている。


 そういう事だ・・・

 やった覚えはないが、妾にして欲しいと迫られていたようなきがするし、食事の途中から記憶がない・・・断片的にはあるが、朧気だ。

 清楚で大人なウルナさんを抱いてしまった。

 しかも愛人として。


 昨夜またもや俺の所に酒が持ち込まれ、ウルナさんも知らずに飲んでしまった。

 お互いに酔っており、ウルナさんに迫られた。

 彼女は酒が入るとスイッチが入るようだ?

 俺が酒にてフラフラだったので、宿に行き1つ部屋を取った。

 そこで迫られたんだ。

 キスをした。

 よろけてベッドに倒れ込みその時に唇と唇が重なったんだ。


「歳上はお嫌いですか?お慕い申し上げます。貴族様と結婚が出来ないのは分かっています。愛人の1人として尽くさせて下さい」


 その胸に俺の手を持ってきた・・・

 そして理性が飛んでから激しく求めた気がする?

 平民の女が貴族の男に取り入る事はよくある。

 愛人、つまり妾となれば囲われ屋敷に住める。

 ましてや俺は命の恩人だ。

 酒の勢いもあり手を出してしまった。

 ちゃんと結婚はして欲しいと言う。

 但し自分ではなく然るべき御身分のお方と言っていた。


 そして、起きた後に結婚を申し込んだら断られてそんな事を言われた。


 俺は父のようにはなりたくなかった。

 ただ、この世界の男女比はかなり偏っている。

 魔物との戦いにおいて、男が率先して戦わざるを得ない。

 また、一部の騎士以外は兵士も男の仕事とされている。


 武闘大会は女もそれなりにいるが、新たに探索者になった男子のうち、1年以内に半数が死ぬと言われている。

 出生率は男の方が1割ほど多いらしいが、先ずは18歳で男女比を見ると1対2、20歳だと1対3程になり、男が圧倒的に少ない。


 あの女神の言っていた事はこういった事情で、男は複数の妻を持つのが当たり前とされる。


 結婚適齢期は女は16から18歳、男は18歳だ。

 成人は14歳の信託の儀を持ってになるが、男は死にやすいので女は基本的に18歳以上の男から伴侶を選ぶ。


 また、貴族は事情が異なり、望むと望まざるに関わらず複数の妻や妾を持ち数人の子を作るのは義務とさえ言われる。


 そんな中ウルナさんは俺を選んだ。

 俺は強者とされ、優良物件だ。

 平民からしたら喉から手が出るほどだ。


 ウルナさんも女であり、誇示達のリーダーだ。

 だから強い男として俺に身を委ね、俺の女として生きる道を選んだ。

 多少の恋愛感情があると思いたいが、この世界はこんな事が当たり前だ。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ウルナ視点


 いけない。誰も頼んでいないのにお店の方がお酒を出してしまったわ。

 今日は誰も頼まないようにしているのに。


 見事にセルカッツ様が飲んでふらふらになってしまったわ。

 後からわかったのだけど、セルカッツ様が各テーブルを周り、成人にお酒を頼みなよと言っていた事が判明。

 これはチャンス!じゃなく、祝勝会を主催した身ですから責任を持って部屋に送らないとだわ!


 部屋に向かったのだけど、鍵がないし、部屋も分からないわ。

 って泊まっているのは別の宿だったわね。

 一旦廊下に座らせて2人分払って部屋を取ったけれども、食堂兼宿屋で助かったわ。

 何とか肩を貸すと歩いてくれたけれど、歩けなかったら私1人だけなら無理ね。


「もう少しでベッドで横になれますから頑張って下さいね」


 先日もそうだけど、セルカッツさんはお酒に弱いわね。

 可愛い。


 ふう、ベッドに着いたわ。

 広いベッドね。

 あっ!やだわ。

 これはダブルベッド?

 キャッ!

 セルカッツさんがベッドを見て私を押し倒したわ!

 遂に私はお貴族様の妾になるのかしら?

 あら?倒れた時に私が巻き込まれただけ?

 私の胸に顔を埋めて寝てしまったわ。


 部屋には湯浴み用のお湯が置いてあるわね。

 湯浴みと言っても手ぬぐいを濡らして体を拭くだけ。


 ・

 ・ 

 ・


 ふう!綺麗になったわね。

 ふあああ!眠いわ・・・駄目、私酔っ払っちゃったわ。

 瞼が重い・・・服を着なきゃ・・・Zzzzz・・・


 ウルナも間違って出された酒を飲んでおり、酔っ払っていた。

 そして頭がきちんと回っていなかったから、お湯を見て何故か自分の体を拭き、服を着る前に力尽きてしまった。


 朝セルカッツさんは私に覆い被さっていたわ。


 その、ずっと寝ていたようで汗臭いわね。

 それと後でシーツを拭かなきゃ。

 女の子の日になってしまっておまたからの血が少し付いてしまったわ。

 セルカッツさんの身体にも少し付いてしまったようだから拭きゃなきゃ。


 やっぱり逞しいわね。

 きゃっ!こ、これが男の人のあれなのね。

 ちょっと臭うわね。

 確か子種もオシッコもここから出るのよね。

 確かにオシッコの臭いが少しするから、拭いてあげなきゃ。

 確かお貴族様のメイドさんはタオルか何かで綺麗にするのよね。


 は、恥ずかしいけどやらなきゃ・・・

 気の所為かしら?

 さっきより大きくなった?

 あっ!何か変な白いのが何度かに分けて飛んできたわ。


 びっくりして避けたけど、私の血が付いた所に飛んだけど、ちょっと変な臭いがするのね。

 あっ?目が覚めそうだわ。

 ど、どうしよう?私は裸だし・・・

 こんな時は寝たふりね!


 こうしてウルナはセルカッツの隣に寝て布団を掛けた。

 そしてセルカッツが目覚めた時に戻る。



 実際はベッドにウルナと行った後、セルカッツは酔いつぶれ朝までぐっすりだった。

 誘惑とかは夢だ。

 ウルナはセルカッツの股間を清潔にするのに真面目に拭いていたが、性的な刺激となり、出してしまった。


 ・

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 ・


 俺は情事の後の体液を見て土下座を敢行した。


「ウルナさん。僕の記憶にはないけど、どうやら部屋に連れ込んで、僕が君の純潔を貰ってしまったようだ。その、結婚して下さい!」


「お断りします!」


 俺はその言葉に驚いた。

 この世界の純潔はかなりの価値があるというか、貞操観念はかなりのものだ。

 言っちゃなんだが、廃嫡はされたが、俺はまだ子爵家に名を連ねている。

 そんな者から求婚されたら平民は気絶しかねないと聞く。


「えっ?ウルナさんの初めてを僕に捧げる事になってしまったのに何故?」


「その、妾にして頂き、あの子達が体を売らずに済むように尽力して頂ければと思います。妻は・・・有り難い申し出ですが、貴族様の役目や所作を知らない私達平民には務まりませんわ。辛い思いをするだけです。然るべき身分の方を奥方にお迎えになり、私達はたまに御寵愛を賜る程度の存在にしかなれませんわ」


 成る程。

 確かに貴族の教育を受けていないのにいきなり貴族社会で他家とやり取りするのは無理だよな。

 平民自体が貴族社会に晒されたくないと思うのも分かった。


 そうか。

 母もそうだったのかな?

 別段父の妻達が妾に辛く当たってはおらず、仲の良い姿すら見た。

 しかし、妻同士はギクシャクとし、第1夫人は自分よ!と跡継ぎは自分の息子だ!と揉めていたのを良く見た。


「わ、分かりました。本当に妾になるという事で良いのですよね?」


「セルカッツ様にはお分かりにならないかも分かりませんが平民の私にとってはこれ以上にない幸運なのです。年下とは言え、好ましく思い優しい方に見初められたのですから。それよりソロソロ闘技場に向かわなければならないはずですわ。後は大丈夫ですから向かって下さい」


 俺は頷き、慌てて服を着た。


「ウルナさんを大事にしますから。行ってきます!」


 軽くキスをして部屋を出たけど、ウルナさんはピュアだな。肌を重ねたのにキスだけで顔を真赤にしていたもんな。

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