第26話 オークの処理

「ヒャイッ!」

 

 俺は意識を取り戻して体を起こしたが、咄嗟にタニスは体を仰け反って俺の頭もガチンコするのを避けたようだ。


「い、生きているのか?」


 つい呟いた。

 しかし、肩を捕まれ、再び横にされる。

 左を向くと・・・ここは外だな。

 右を向くが、プニッ!

 ?柔らかいぞ!

 もう1度上を見ると、タニスの顔がある。

 そうか、膝枕をされているのか。

 と言う事はさっきのはお腹か。


 再び起きようとしたら肩を押さえられた。


「セル様、もう少しこのままで。皆の準備が整うまで休んでいて下さい」


 額を撫でられたが、うん、心地良いな。

 しかし、何か煙たいと言うか、焦げ臭い。

 状況を確認しよう!


「あの後どうなった?」


「はい。セル様の目ん玉光線でグレートオークは首の付け根に穴が空き、そのまま絶命しました。た、多分あれが最後です」


 歯切れの良くない話し方だ。

 しかし、流石に目ん玉光線はないぞ!絶望的なネーミングセンスに乾杯!


「何も言ってこないけど、全員無事か?」


「あっはい。私の脚ももう大丈夫ですし、メイヤもハーニャも怪我1つありません。セル様が魔力切れにより倒れただけです!」


 それから10分ほど休ませて貰ったが、何とか魔力が少し回復したのが分かる。

 魔力切れは初めてだ。

 本来は安全にギフトの解放を進めて行くのだが、逃避行の間出来る訳もなく初めて放った。


 ラージリオンオンラインの世界では魔力が切れても行動制限状態になるものの、動けなくはなかった。


 メイヤとハーニャが戻って来たが、オークの魔石抜き取りと討伐証明部位を切り取ってくれていたんだ。

 しかし、そんな悠長な事を何故しているのかを問う事にした。

 勿論やんわりとね!


「3人共ありがとうな。よく魔石の抜き取りとか出来たね。他の魔物は出なかったのかい?」


「良かった!気が付かれたのですね!他の魔物は多分来ませんよ!」


 漸く体を起こしたが、ふと見ると森が燃えていた。

 誰だよ火を放った奴は!

 ↑自分です!


 ここは草原の方に少し移動していたが、森が視認出来る位置だ。


「動かなかったのかい?」


「私達にはセル様を背負って移動が出来なかったし、森があのような状態だったから警戒しつつ魔石の抜き取りをしていました」


「あっ!セル様、その槍はどうしましょう?」


「グレートオークが持っていたやつ

 だよね?メイヤは使いこなせそうかい?」


「はい。少し体の方を修正しないとですが、良い感じでした」

 

「それじゃあそのまま使おうか。邪魔なら今までのは売ろうか」


 そうしていると、数台の馬車がやって来たが、先程の薬草採取をしていたおねぇさん達だ。

 リーダーはウルナさんと言ったかな?4人の仲間と共に現れた。

 22、18、16、14歳と言った所か。

 肌は荒れ、髪も手入れをしていないからボサボサで田舎娘の体裁だな。

 肌の手入れをし、ちゃんと髪を梳けば中々の美形なのに、勿体ないなとつい思う。


 薬草採取をしている時は気が付かなかったけど、この4人でパーティーを組んでいる仲間のようだ。

 他の者は知り合いか、他のパーティーのようだな。

 よく見ると服も継ぎ接ぎだらけで、若い女性が着るようなお洒落さとは縁遠い服装だ。

 まあ作業服だよな。


「メイヤ様、何とか馬車を借りてまいりました!それと布も」


「あっはい!ちゃんと皆さんにも報酬を出しますから、オークの積み込みをお願いします!布を使い・・・」


 メイヤが指示をする。

 4人いれば何とかなるんだ。

 オークの体を転がして布の上に乗せる。

 そこから4人で引き摺り馬車の手前に置く。


 で、俺の出番だった。

 この中では俺が膂力は1番あるので、魔力切れをしたとはいはえ荷台にオークを乗せるのは訳無く出来る。


 オークは肉の需要が有るので中々の稼ぎになるそうだ。

 ゲームだと魔石がいくらとか、体はいくらとかであり、その先この体がどうなるのかまでは気にしていなかった。

 しかし、リアルだとそこで生きている人の生活があり、食事も空腹度と言った現実味の無いパラメーターとは違い、食事の時間が近付けば空腹になり、何も食べなければ死んでしまう。

 それに食料は生産されたり、市場に並ぶ等のルーチンがちゃんとある。


 そこでメイヤ達3人の持っているなけなしのお金を全て集め、薬草採取者に渡して馬車を連れてくるように依頼した。


 お金を持ち逃げされるのではないか?と思うだろうが、しかしそこは戦闘する力を持たない若い女性達にとって無謀以外の何物でもないんだ。


 持ち主に発見され、報復されるのが関の山だし、何よりメイヤはこの人達の性質がそのような事をしないと感じたようだ。


 そうして積み込みが終わると、薬草採取者達を含め全員馬車に乗り、町へと帰るのだった。

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