第5話 追放される

 スキル【レベルアップ】を得たが、これは初期が辛いも間違いなくチートオブチートだ。

 途中で修正が入りそうで入らなかった最凶スキルである。


 一応転生者だから持っているスキルは分かる。


 スキル【レベルアップ】の詳細。

 1つの項目に付き1日1度だけレベルアップをする事が可能。

 【レベルアップ】の最大レベルは10。

 1日に上げられる個数はレベル1だと1個、レベル10だと10個のレベルを上げられる。

 ただし、1度レベルを上げた対象の項目は、翌日にならないと再度上げられない。


 なので先ずはスキル【レベルアップ】を上げる。

 これでスキル【レベルアップ】がレベル2だ。

 しかし、もう1個上げられるも、スキル【レベルアップ】については翌日まで上げられない。

 なのでここは己自身のレベルを上げる1択しかない。


 残念だがステータスは見えない。

 魔物を倒してもレベルは上がるが、実際はレベルが上がると魅力以外の各パラメーターが10ずつ上がる。

 勿論ゲームでの話だが、現実世界ではどうやってもパラメーターを見る事が出来なかった。


 筋力、素早さ、賢さ、運、魅力、魔力、生命力等だ。


 キルカッツは剣聖になり、多分今の各項目が100だ。

 レベルアップすると補正も有り20ずつ上がるはずだ。

 魔物を倒すとレベルアップするが、普通は100が頭打ちだ。

 俺は各項目が150前後。

 魔力は鍛えたので20000前後のはず。


 キルカッツに関して、単独であれば今すぐなら大丈夫だが、序盤のレベルが上がりやすい時だと魔力以外のパラメーターが俺よりも上になるおそれがある。


 多分1か月程逃げ切ればもう俺を倒す事は出来なくなると思う。

 だが、即死系のスキルには気を付けないといけないが。

 また、この世界でのレベル上限が分からないが、ゲームだと999までは行けると噂されていた。


 普通にやるとそこまで行けず、剣聖でさえ200を超えると経験値が入らなくなりもう上がらない。

 そこまでして各パラメーターが4000程だ。

 最短でレベルを上げていっても999まで上げた者には敵わない。

 999まで上げるとパラメーターが9999とカンストするからだ。


 また、ある程度レベルアップすると新たにスキルを得られる。

 光が最後はどうなるのかについては分からないし、今となってはどうでも良い。

 そう、転生したのがサービス開始から3年未満でレベルが999になる前だったからだ。

 それと転生者には【女神の祝福】以外に各個人に特殊能力が付与されている・・・はず。

 ゲームと同じならで、俺の場合魔法をコピー出来る。

 勿論勉強して覚える事もできるが、コピーはチートと言えなくもない。

 ただし無視できない条件があるので歯切れが悪いんだ。

 自分が受けた魔法しかコピー出来ないからだ。

 弱い魔法なら良いが、少なからずダメージを貰ってしまうからかなりの覚悟がいる。

 ただ、戦闘で敵から食らったのを覚えられるという事は、戦闘の幅が広がりその戦闘が有利になるだろう。


 俺は気が着くと馬車に揺られていたが、それはメイヤが俺を馬車に連れて行ってくれたからだ。


 屋敷に着くと俺は父がくいくいと指でこっちに来いと示すのに従い、メイヤは馬車を車庫に入れに行った。


 玄関ホールにて扉を閉じると、父は横にキルカッツを立たせこちらを睨め付ける。

 他に儀仗兵を努めた騎士が2人いる。

 そして警護の任に着いていた騎士が父の横と俺の後ろに控えている。


 ゲームと同じだ。


「あのようなギフトを得るとは我が家の恥だ!お前は廃嫡だ!今すぐここを出て行け!そして2度と戻る事を許さん!」


 そして騎士が肩に掛けていたカバンをひったくると、出迎えたメイドに投げた。


「食料を入れて来い」


 父がメイドにそう告げると、次は俺の後ろに控える護衛に就いている正装の騎士に告げた。


「お前が今携えている剣と財布を小僧にくれてやれ!後で代わりの財布と金を渡すから心配するな!」


 騎士はこの剣はと言い掛けたが、睨まれたのもあり恐ろしくて黙って剣帯ごと外して俺に着けて来た。


「坊っちゃん、済みません・・・」


 俺にだけ告げて来て、財布を渡して来た。


「このまま去れ!今日からはこのキルカッツが嫡男だ!役に立たない昼行灯め!それをくれてやるからとっとと去ね!明日以降許可無くこの町で見掛けたら容赦せぬぞ!」


 俺はにやりとしてから顔を上げた。

 それにどうやって許可を得るんだよ!と突っ込みたいが、ゲームのまんまだ。


 他にもある。

 今回神殿に行く段取りを任されたのは俺だ。

 護衛の騎士に高価な異空間収納のカバンを預けていた。


 今日はこの2人の騎士が護衛を兼ねた儀仗兵という事もあり、屋敷にある宝剣を各々に貸与していて、戻って直ぐのためまだ外してはいなかった。

 部類的にはブロードソードの1種で、今の俺では使いこなせないだろう。

 だが、日本円に換算すると2億円は下らない価値があると思う。


 確かに父が騎士に持っている剣を俺に渡してやれと命じたが、流石にこの事態を予測していたとは思うまい。

 俺が勝手に持ち出したのならば不味いが、皆の前で確かに言ったから今更引っ込みがつかないだろう。

 勿論ゲームでそのようにしていたから、リアルでもそうするだろうと儀仗兵に宝剣を帯剣させていただけだ。

 ちゃんと執事長には持ち出し申請と、持ち出し時に理由も確認して貰っているから手続き的には問題ない。


 しかしだ、父が気が付いた時にはもう遅い。

 クッ、クッ、クッ、クッ!



「これまでお世話になりました。それでは私は勝手に生きていきますからもう構わないで下さい。手を出してこなければこちらからは何もしませんが、手を出してきたら容赦しません。お互いそれで良いですね!?」


 慌ててメイドが戻ると持って来たカバンを俺に投げ付けてきた。


「そうだ。それで良い。これはせめてもの餞別だ。勿論侯爵家の長子だと名乗る事は許さんぞ!」


「分かりました。そうそう、老婆心ながら1か月は私が使っていた机に触らぬ事です。それでは失礼します」


 俺は踵を返すとドアに向かったが、執事が開けてくれた。


「セバスチャン、世話になったね。死にたくなければ1週間以内に屋敷を出なさい。この屋敷は襲われる」


 ドアを出て屋敷に向かい1礼して、それから屋敷を後にしたが、執事は首を傾げた。

 勿論セバスチャンと言う名ではない。


 ゲーム序盤で屋敷が火災に遭うので、まあ、その警告だ。


 俺は予め書き置きを机に置いておいた。

【何人たりとも持ち主の許可無く机を動かしたり引き出しを開けるなかれ。それを行えば燃やし尽くしてやる!】


 まあ、十中八九誰かが開けるのだろう。

 警告はした。

 ゲームで起こった火災は俺が使っていた机が原因だったんだろうな。


 そう、盗難防止の為に仕掛けをしてあり、手順を踏まずに引き出しを開けると燃え盛るように仕込んであるが、勿論今回の腹いせにだ。

 神殿から戻った後玄関から先に行かせて貰っていないから、これは普段からの警戒にしか思えないだろう。


 メイヤには馬車を小屋に戻しても屋敷に入らず、直ぐに屋敷の敷地から出て待ち合わせの場所に隠れ潜むように言ってある。


 俺が慌ててレベルを上げたのには訳が有る。


 ゲーム通りだと大丈夫なはずだが、レベルが2になるとギフト【光】の特典である光操作にて使える数少ない攻撃手段を得る為だ。

 後に目ん玉光線と言われる。

 魔力を消費して左眼に眩い光を発生させ、眼球内のレンズで焦点を絞る事により指向性のある光の束を発射出来るのだ。


 太陽の光を集めるのと原理は同じだ。

 魔力総量が大きい程大きな太陽炉相当になり、あり得ない程の熱量を放つ事が出来る。


 はっきり言って強い。


 ただ、慣れが必要で今はまだ使った事が無いから、最終手段としていたが取り越し苦労だった。

 但し魔力をバカ食いするから多用は出来ないのが辛い。


 俺は追手がいない事を確認しつつ、急ぎ屋敷から距離を取るとそこから方向を変え、メイヤが待つ隠れ家のある場所に向かったのだった。

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