第三十六話 三銃士登場
「では三銃士のスナイプとロックそしてショットが入場いたします。みんな拍手!」
プレイヤー達はそれぞれ説明で聞いた番号の位置についた。大理石の床は格子状の線と数字を浮かび上がらせ天井に崩れた淡い模様を描いている。俺は和白とルキナの位置を見て首を傾げた。
和白とルキナが22番と24番の位置から左右いずれかに移動すると41番と45番の三銃士が一歩前に進むだけで三マスの射程距離に入ってしまう。中央に四つあるいずれかの椅子の上に移動する必要がある。それが不可能なのであれば一発でゲームオーバーになってしまうのは一目瞭然だった。通常通りピエロはわざと一部のルールの内容を明らかにしないようだ。
和白とルキナは前と後ろの椅子を見回してから肩を窄めた。背中からは迷いと落胆が伝わってくる。
二番席と四番席の洗濯機の両隣が開いた。三銃士がゴツゴツとしたブーツの音を立てて入ってきた。大きな帽子に洋風な剣士の服装を想像していた俺は顔を前に出して遠くにいる騎士の風貌に目を凝らした。
三銃士は全員黒のロングコートに黒のシャツにフィットしたパンツ。黒のブーツを履いていた。そして手には海外映画でよく見かけるグロッグ銃が握られていた。そして右の二の腕にはそれぞれスカーフが巻き付けられている。
イヤホン越しにブーツの足音が聞こえる。動き出した三銃士の三人はそれぞれ41番から45番に立った。そして腕を広げたり手を顎に当てて考えてみたりするジェスチャーを交えた寸劇を始めた。
「ふうようやく辿り着いたな。ロック。ショットみてみろよ。広場に通達をした甲斐があったじゃないか。広場の市民達は店を閉めたようだ。取り残された盗賊達が俺たちを待ち構えているぜ。みたところ新人だな。俺たちから逃げることができれば億万長者になれる。だがその可能性は皆無だ。盗むこと以外に取り柄のない蛮族が俺たちに勝てるはずがない」
「油断をするなよスナイプ。あいつらの手にはいくつかの魔術が収められた簡易呪文のカードがある。この広場に流れた王国の宝物の中には魔法が使えなくても俺たちに対抗することができる代物があるって話だっただろう?」
「スナイプ。俺たちは宗教上魔法を使うことができない。盗賊達は魔法を使って宝物を盗み出したんだ。ロックの言う通りかなり早い段階で始末しないと厄介だぞ」
「なあにいつものように脳天を弾いて片づけてやるさ。では参るぞ!ロック。ショット。我らはエオルロンダ王国直属騎士。三銃士!国家に刃向かう族を排除する!」
まるで昔からある斜め上から見下ろすタイプのストラテジーゲームのようだ。大抵このタイプのゲームシナリオは王子の主人公が父を裏切った闇の騎士に追われているシーンから始まる。最初のステージで奇跡的に裏切り者を倒した主人公が国の戦争に巻き込まれる。そして多くの出会いと経験をする重厚なストーリーが定番だった記憶がある。
イヤホンの中に流れるチクチクとしたビートと軽やかなオーケストラの音楽が再生された。長く聞いていても気分が悪くならないタイプの音楽は長時間プレイするのに最適だ。
現実でマスの上に立ちスマホを用いてゲームをする。アミューズメント施設でイベントができるのではないかと感心する程のクオリティなのだが残念なことにロボットの手には日本にあってはならないグロッグ銃が握られている。
この広場の空間なら簡単に俺たちを狙うことができるだろう。設定上三マスの射程距離以内に入らないとあの銃を撃つことはできないと言うことになる。
シンバルの音の後にシリアスなナレーションが流れた。
「エオルロンダ王国の夜明けは近い。国王の勅令によって密やかに抹殺されんとする若き盗賊達は最後の決戦に身を投じる。今の若き盗賊達では王国直属の騎士団には敵わない。だが彼らは準備をしてこなかったわけではない。勝算はある。この広場で拾い集めた魔法の込められたアイテム。彼らの手の中にある呪具が道を切り開くだろう」
結構すごいな。俺はスマホを見た。画面は縦に切り替わりカードは画面下の方に並んでいる。45マスのステージが真ん中に表示されていて画面下の41、42、45には顔の横で銃を構える黒い暗殺者のアイコンが表示されていた。それぞれ赤と緑、青のスカーフで区別されている。
ボンの文字にゲームコントローラーのイラストが添えられたアイコンが9番。シオリと自由の女神の顔と掲げた松明のアイコンが7番。和白の文字に設計図のイラストのアイコンが22番。ルキナの文字にハートのアイコンが24番。
そして画面の中心に光に包まれた文字が現れた。
「一ターン目開始!」
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