第十八話 第三ゲーム開始まで

 スマホに表示された時刻は二十七時十五分。ドラム型洗濯機のバッテリーはすでに洗濯槽の中に設置してある分で足りているようだ。何のアナウンスもなしに洗濯機の扉のロックがかけられた。扉に設置された丸い窓の外からさす虹色の光が幕を下ろしていく。結果第二ゲームで脱落したプレイヤーは銀田静雄だった。


 青い照明で照らされた洗濯槽の中で俺はトートバッグの中から水を出して全部飲み干した。ため息をつきバッグにペットボトルを直した時に洗濯槽の中に浮遊感が漂った。


 まだ時間はあるはずだ。スロットのマスコットキャラクターであるジャグラー風のピエロについて考えてみる。俺が知っているパチスロ動画配信者でジャグラーを遊んでいるのは女性が多かった気がする。この中にゲームマスターの人物像に該当する人間はいない。今までの人生でホテルやアミューズメント施設などを利用したことは数回しかないが記憶の中を辿ろうしてみても何も見えてこない。自分の記憶を辿る時ですらネット検索ができないと情報が足りない。


 eスポーツカフェの店名は「グッドゲームカフェ」という名前だったはずだ。ピエロの向こう側にいる人間はこのゲームに参加しているプレイヤーの個人情報を把握していることからネット関係の仕事をしているのかもしれない。このクソみたいなランドリータワーの運営にかかる経費も詐欺だとかハッキングで手に入れた汚い金で賄っているということも考えられる。


 もし生き残ることができたなら警察に相談するなり弁護士に相談するなりして刑務所送りにしてやる。


 意外にも早く洗濯機の浮遊感がなくなって洗濯槽の中に紫色の光が差し込んできた。ドアのロックが外れてすぐに扉を開いた俺の目に飛び込んできたのは生配信で見かけるeスポーツの大会会場のそれだった。紫のカーペットが敷かれた会場には前の野球とカードのゲーム会場のようなプレイヤー同士を遮る壁はなく昔から変わらないアーケードゲームの筐体が二台置かれている。そしてゲームテーブルの前には六つのスマホスタンドを乗せた小さい丸テーブルがある。


 ゲームセンターの格闘ゲームコーナーで見かけることの多いレバーと六つのボタンが取り付けられたテーブル。そしてその筐体の前と向こう側のスペースを遮る分厚いガラスが天井まで伸びている。人影が二つ窓の奥にあるが曇りガラスになっていてよく見えない。


 俺は少し歩いてテーブルの方に近づくと他のプレイヤーである和白が右にシオリとルキナが左にそして市来がゲームテーブルと分厚い窓の境目にある壁の前から現れた。ゲーム会場の半分を囲っているドラム型洗濯機は紫の照明に照らされてゲームセンターにあるメダルタイプのスロット台のように並んでいた。


「ぼん、これで今からゲームをする見たいだな。ゲームセンターにあるゲーム機じゃん」

「そうですね向こう側にロベルトが二体…いるってことですよねコレ」


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