第5話陰謀

土曜の夜、輝はバイトのシフトに入っていた。日曜日の前日とあって来店客数が多いのでバイト達は総出で昼と夜に別れて出勤する割合が多い。そして時給も良い。

元々客数が多い曜日でもあるのだがなぜかこの日は異常に店内が客でごった返していた。

「池本さん、今日はお客さんやけに多いですよね。品出しが間に合わなくって。」

「うん、店が儲かるのは良いことだけれど、こうお客の数が多いと定時に上がりずらいよね。」

輝がもう一人のバイトの女性と話していると、ふとあることに気がついた。

それは、店内にいる客達が輝の方をニヤニヤしながら注目しているからだ。

輝は昔から女の子にモテていて女子から熱い視線を浴びせかけられる事もあったので注目されることは慣れていたのだが、見知らぬ人達や、ましてや男性客にまでガン見されると気持ちが悪い。

「池本さん、なんか注目されてませんか。気のせいならいいんですけれど。」

「いや俺もそう思う。明らかにお客さん達に注目されてる。」

訝しんでいると、店の外から数人のガラの悪そうな若い男達がゲラゲラ笑いながら入店してきた。

店に入ってくるなり、金髪で耳に沢山ピアスをつけている男が輝をみて指さした。

「うぉっ、マジでいた!コイツだろぉ。」

すると、髪の毛部分的に刈り込んであえて頭に模様を形作っている男が答えた。

「コイツだわ、話しかけてみようぜ。」

男の合図に呼応するかのように腕から首筋にかけてタトゥーを入れている男がスマホを輝の顔面にかざした。

「この動画に映っているの兄ちゃんだろ?」

輝が男がかざしたスマホで再生されている動画をみると、そこには輝自身が映っていた。しかも今現在のリアルタイムの映像だった。

「これはなんですか・・。映っているの僕ですよね。」

「ですよねって、アンタ自分で生配信してるんじゃねぇの?」

「してないですよ、これMy Tubeに配信されてるの?」

「『の?』って・・知らねえのか?俺たちこの動画に配信されているのが近場の店だったからさ、直接見に来たんだよ。」

そう話をするこのガラの悪そうな男も動画配信に映り込んでいる。

輝はあわてて店の奥の事務室に駆け込むと店長に泣きついた。

「大変です。店長!」

「池本君どうしたの?」

言葉で説明するよりも直接動画を見せた方が早いと思った輝は事務机の上のパソコンをいじってネットでMy Tubeを検索すると生配信されているこの店の配信を探した。

店長もネット配信されている今現在の自分の店をみて驚愕した。

「なんだ・・これは・・。一体誰がこんなことを・・。」

動画のカメラのアングルをよくよく分析すると、ある一つの答えにたどり着いた。それは、防犯カメラだ。誰かが店の防犯カメラにアクセスして店内を勝手にネット配信していたのだ。

数時間後、輝はバイトをあがり自宅アパートにいた。あれから店長がMy Tubeの運営サイトに生配信の動画の削除依頼をだし削除してもらい、念のため警察にも通報した。

「ふう、今日はなんだか疲れた。布団に突っ伏しその日の労働の疲れを癒やして一息つくと突然スマホが何かを受信した。

画面を見るとメールが一通届いたのだ。メールをクリックして読んでみると


    捕 マ え た


という文章だった。差出人は不明。相手先のアドレスも不思議なことに表示不可になっていた。

「なんだよこれ、誰だよ・・。」

輝はスマホを投げ捨てた。

店内では人の群れが押し寄せ、誰がちゃんとした店の客なのかが判らないほどごった返していた。

週が明け、月曜日。この日は四限目に文化人類学の授業が控えている。しかし、浜崎教授からだされた課題のレポートはまだできあがっていなかったが、輝にはそんなことどうでもよかった。授業の前に輝は月山に電話をかけて今まであった一連の不審な出来事を説明した。

「池本君、これから会えない?」

「いいですけど・・でも授業が・・いや、会いましょう。」

輝は月山と会うことにした。根津戸の死に関わる事だからというのもあったが、何よりも男として美女と二人きりで会うのは胸躍る。しかも輝自身も気がついてはなかったが、個人的に月山と話すのが好きなのだ。輝の彼女は河井伊奈であるが、伊奈と違う魅力を持つ月山に少しずつ惹かれ始めていたのをまだ輝は気がついてはいなかった。

電話を切ると、少し離れた所から甲高い声で自分の名を呼ばれ、顔を向けると、同じ文学部の後輩の山辺美優が輝の元に走り寄ってきた。

「せ~~んぱい。お久しぶりです。元気でしたか?」

文学部三年山辺美優。また輝が所属しているサッカー部のマネージャーでもある。

「みゆちゃん。」

「先輩、最近就活とか忙しいのですか?全然部活に顔を出してくれないんですもん。」

「そうだね、就活も忙しいけど、それよりも他にも色々あったてね。」

「もしかして、先輩の同級生の方が亡くなられたからですかぁ?」

「う・・ん、それもあるけど、他にもトラブル続きで。でも近々顔を出そうかなって思ってる。皆元気でやってる?」

「そりゃ~もう。元気ですよぉ。でも池本先輩がぁ来てくれないから美優は寂しくってぇ。」

美優は体をもじもじさせて、照れくさそうに微笑む。

輝はこの美優の相手への好意を隠そうとしない素直さに何度も伊奈を忘れそうになった事があった。男という生き物はこういうはっきりと好意を見せてくれる女の子が好きなのだから。伊奈の友人でもあり、美優と同じくサッカー部のマネージャーを務めている丘野菜流がいうには『あざとい』らしいのだが。

「先輩、今度ぉ一緒にご飯でも行きませんかぁ。」

美優がさりげなく輝の服の袖を引っ張ると、またしても少し離れた場所から自分を呼ぶ声が聞こえた。

「輝!」

伊奈とその友人の丘野菜流だ。二人は輝と美優に近寄ると、伊奈は輝の体を引っ張り、丘野は美優の体を引っ張り二人をある一定の距離まで引き離した。

「もう、輝ったら、何やってるの。」

伊奈は少し怒っている様子だった。明らかに山辺を意識していた。

「別に、みゆちゃんと話をしていただけで・・。」

「山辺さん、そろそろ部活行こうか。これから一緒にいこう。」

「でも~丘野先輩、部活の時間にはまだ早いっていうかぁ~。」

「ほら、部室の掃除もあるし、ね。」

「でも~」

美優は丘野に背中を押されながら部室棟の方向へつれていかれた。

「輝、山辺さんと何話してたの?」

「別に、サッカー部の話題だけだよ。」

輝は少し嘘をついた。美優に食事に誘われた件は伊奈には伏せておくことにした。

「ならいいけど、もう少ししたら輝は授業でしょ?」

「ああ、それなんだけど、俺今日授業サボるわ。この後ほら例の雑誌記者の月山さんと待ち合わせしてるんだ。」

「月山さん?何で?」

「最近俺の周りでおかしな事が続いているだろ?なんだか誰かにストーカーされているっていうかさ。これって根津戸が死んだことと何か関係があるんじゃないかって思って。」

「なら、私も行く。」

「えっ。」

「来るなっていっても行くから。行こう、どこで待ち合わせてるの?」

強引に輝の腕を取ると伊奈は歩き出した。

以前月山と伊奈と三人で入った喫茶店にて顔を合わせていた。注文した飲み物も以前と同じ、輝と伊奈がクリームソーダで月山がウインナーコーヒーであった。

輝はコレまでに起こった、誰かが輝を監視して、嫌がらせをしているらしいことを話すと、月山は少し考え込んだ後話し始めた。

「恐らくそれは・・・今私が追いかけている『モノ』かもしれない。」

「月山さんが追いかけているモノってなんなんですか?」

「それは・・インターネット世界に存在するモノ。つまり・・・」

匂わせぶりに話し出す月山の言葉に輝も伊奈も生唾を飲み込み集中して耳を傾ける。

「人工知能のプログラムなの。つまりAIなの。」

「AI?それが根津戸を殺したっていうことですか?」

「そういう事。」

「月山さんが調べているのは同じ日に日本各地で起こった自殺事件の事じゃ無かったんですか?」

「そういう事。」

「AIが人を殺しただなんて、どうやって、いやたかがパソコンの上でしか生息できないようなモノに人が殺せるわけないでしょ。」

「でも、そういう事。」

月山は手元にあるウインナーコーヒーを一気に飲み干すと話し始めた。

「AIは世界中の科学者達が研究を続けていて、日々より高度な性能を持つAIが生み出されているというのは、二人も知ってるわね。」

「はい、それくらいは・・。」

輝の言葉に伊奈もうなずく。

「今から一年ほど前、とある研究所で高度な性能をもつ人工知能プログラムが開発されたの。その名も『フォボス・システム』」

「フォボス・・・・。」

輝は数日前に自分のスマホにかかってきたフォボスと名乗る人物からの電話を思い浮かべた。ただ悪趣味の嫌がらせだと思っていたが、ただの嫌がらせではなさそうだと思った。

「フォボス・システムは元々はサイバーテロを防ぐ為やネット上の検閲を目的として開発されたらしいんだけれど、最初は命令通りにしか動かなかったのが、自我を持ち命令違反を繰り返すようになって、あるとき使役者である研究所の手を離れてどこかへ雲隠れしてしまった。それが、まさかあんな事件を起こすなんて・・。」

「ちょ、ちょっと待ってください。そのAIが根津戸や他の人達を自殺に追い込んだって事ですか?」

「そういう事。確証はあるの。私の他にフォボス・システムを追っている仲間達からの情報だと、死んだ人達のパソコンやスマートフォンからフォボス・システムが侵入した痕跡が残っていたんですって。」

「そんな・・仮想空間上のAIじゃ警察も逮捕できないじゃないか。」

「もちろん、警察も自殺した人達のスマホやパソコンは調べているでしょうね。でも結局は解析不可能な正体不明のデジタルタトゥーであって、人工知能がやったなんて思わないんじゃないかな。」

「あのう・・ちょっといいですか?」

伊奈が控えめに口を挟む。

「警察も解析不可能なデジタルタトゥーなのに月山さんのお仲間は亡くなった人達のパソコンからフォボス・システムの痕跡を探し出すことができたのはなぜでしょうか。」

「うっ・・えっと・・・それは・・あ~ほら、私たち記者の捜査能力のたまものよ。教える事は出来ないけれど、あちこちに情報提供元や太いパイプを持っているからね。フォボス・システムを探している科学研究所から漏れる情報なんて簡単につかむことができるんだから。でも池本君はフォボスに気に入られたみたいだね。ほんと言うと、その自殺した人達が集まってみていた裏掲示板のサイトからフォボスの痕跡を探って芋づる式に潜伏先を特定してやろうと思ってたんだけれど、池本君の周辺をうろついているみたいだし、池本君にはもう少し協力してもらっちゃおうかな。駄目・・?」

上目遣いで輝を見上げる月山。伊奈はそこに自分の彼氏につけいろうとする女のあざとさを感じた。

「駄目じゃないです。そのフォボス・システムは今度俺につきまとっているみたいだし、これ以上嫌がらせさせられたんじゃたまったもんじゃないから。でも、どうやってネット上のAIと対決したらいいかなんて判んないよ。この間のバイトの時みたいに盗撮とかマジで勘弁。」

「う~ん、そうだね。とりあえず家にいるときはなるべくパソコンは開かない方がよいかもしれない。スマホもね。webカメラで盗撮される可能性もあるし。」

「判りました。パソコンは電源切っておくし、スマホは極力使わないようにします。あ、そうだ、これからこの間話した俺の友達の川口って奴の所一緒に行きます?何か情報を知っているかどうかは判らないけれど、死んだ根津戸と同じアパートに住んでいるんで、そのフォボス・システムって人工知能ももしかしたら川口の周辺をうろついているかもしれないんで。」

「いいかも。川口君とやらに会わせてくれるかな。」

三人は川口の住んでいるアパートに行くことになった。

川口の住んでいるアパートに行くと、二階の一角のドアが開きっぱなしになっていた。家の中から段ボールを持った中年男性や中年女性が出入りしていて、川口自身も段ボール箱を重そうに運んでいた。

「智。」

「輝・・。」

「何、お前も手伝いにきたの?」

「この部屋は?」

「亡くなった根津戸の借りていた部屋なんだ。今親御さんが来て荷物整理をしていてさ、僕も手伝ってたんだ。」

部屋の中をのぞき込むと紐で縛られた雑誌類や段ボール類などが散乱していて、そのうちの一角に根津戸のものと思われる骨壺も置かれていた。

「あらあなたたちも智春のお友達?」

根津戸の母親らしき女性が話しかけてきた。

「あ、はい、僕たち根津戸くんと同じ大学の者です。池本と申します。」

川口も入れて四人は根津戸の部屋の一角に座って根津戸の母親にお茶を出してもらっていた。

「智春くんがあんなことになってしまって、お悔やみを申し上げます。」

「ご丁寧にありがとうございます。せっかくきていただいたのに慌ただしくてごめんね。智春の火葬が終わったから、部屋を引き払って地元でお葬式をしようと思って。」

「いえ、こちらこそ大変な時に押しかけてしまって申し訳ありませんでした。」

チラリと根津戸の骨壺に目をやると切なくなってくる。根津戸は小太りな方だったが、今やあんな骨壺に収まる位の大きさになってしまって、輝は胸が熱くなった。そしてそれは伊奈も同じ気持ちであった。

「智春が自殺したなんて未だに信じられないけれど、警察も自殺は疑いの余地は無いって。」

「あ、あのう。」

月山が母親に声をかける。

「私、雑誌記者の月山と申します。実は智春くんの自殺の原因を調べていまして。智春くんが使っていたパソコンもしくはスマートフォンはありますでしょうか。」

「ああ、ありますよ。警察が来ていろいろ調べていたみたいだけれど、特に不審な点は無いって返却してきました。」

根津戸の母親はごそごそと荷物をあさると、根津戸が使っていたと思われるスマートフォンを差し出してきた。画面があちこちひび割れており事件当日根津戸がこれをもって大学の校舎の屋上から飛び降りたのをもの語っている。

月山は手に取って、スマホ表面を見つめただけで、すぐにスマートフォンを根津戸の母親に返却した。

母親は返却されたスマートフォンを机の上にそっと置くと、再び話し始めた。

「智春の自殺の原因は私もしりたいの。でも警察の話では、インターネット上の何かのサイトに書き込みはしていたみたいだけれど、そのサイトは警察が調べた時にはすでに削除されてしまっていて、警察でも完全には復元できなかったんですって。」

「と、いうと?」

「そのサイトは自殺を促すものだったみたいなんだけれど、すでに削除されていて警察でもそのサイトを完全には復元できなかったみたい。プログラムが破壊されていたって言った方が早いかもね。でも結局は智春は自殺には間違いないからって警察も捜査は終了したそうよ。」

重い沈黙が流れタ後、輝達や川口は長居してもご迷惑になるだけなので帰宅することにした。しかし、根津戸の部屋を立ち去るその瞬間川口は見てしまったのだ。月山が根津戸のスマホをそっと自分の鞄に入れれて持ち去るところを。


男性は長い廊下に敷かれている上質なカーペットの上を歩いていた。男性は見た目初老の男性といった風貌でネクタイを首元まできっちり絞めており、顔つきも引き締まって知的なイメージであった。

廊下の奥まで進むと、ひときわ大きな扉の前で立ち止まり、扉を二度三度ノックした後、「失礼します」と賭け声をかけて部屋に入り込んだ。

「大臣、よろしいでしょうか。」

「なんだね。フォボス・システムの事で何かあったのかね。」

大臣と呼ばれた男性は豪華な革張りの大きな背もたれの椅子に深々と座っていた。そして横柄な口調で室内に入ってきた自分の秘書に目線をやる。

「はい、実は、各地に派遣した『草』の一人からの情報によりますと、フォボス・システムは関東圏のある地域に潜伏しているとの情報がありました。」

「なに!?それは本当かね。捕獲はできそうか?」

「いえ、それはまだ。ですが、フォボス・システムと接触したと思われる若者を今マークしているそうです。」

「ふむ・・。」

「どうやらフォボス・システムはその若者を・・・」

話の最中に、今度は年若そうな背の高い男性と若い女性が突然部屋に入ってきた。

「大臣、『草』の一人がフォボス・システムが接触した若者の内の一人のスマートフォンを手に入れてきました。」

「見せてくれ。」

大臣は手渡されたスマートフォンを手に持つと、ニタリと貪欲そうな笑みを浮かべた。

「この中に記憶されているフォボス・システムの痕跡や、他の『草』達が手に入れたフォボスシステムの痕跡を解明してデータ化できればシステムの後継システムを開発できるな。」

「その通りです大臣。でも是非ともオリジナルのフォボス自体も手に入れましょう。オリジナルのシステムは素晴らしい芸術作品です。」

大臣と秘書の一人である初老の男性は顔を見合わせニヤついた。そして大臣はタバコケースから葉巻を一本取りだし、口にくわえると火をつけて吸い始めた。

「大臣、タバコは辞められたかと思ってました。」

「いや、今でもたまに吸ってるんだ。今みたいに嬉しいことがあった時にはねぇ。」

若い女性秘書の問いかけに誇らしげに返答する。

「大臣、そのフォボス・システムは本当に安全なのでしようか。元々人間の命令に従わずに暴走するようなシステムなぞ私は信用できないのですが・・。」

「君みたいな若い女性には理解できんだろうねぇ。このシステムは新しい生命体だ。人間は長い年月を経て今現在の姿に進化してきた。この生まれたての新しい生命は今はまだ進化の途中なのだ。いわばまだ善悪の判断がつかない赤ん坊なのだよ。今はまだ従順さを学んではいないみたいだがもう少し時間をかけてどちらが上か下かを学ばさせればこちらの命令を聞くようになるだろう。」

「しかし、私は不安なんです。別のプログラムを自らに取り込み体の一部にしてしまうAIを軍事転用するなんて・・いずれ人間をも凌駕する存在になるのでは無いかと・・。」

「君ね、タバコは体に悪いだろう。でも私は今そのタバコを吸っている。なぜならばタバコを吸うことで一時的な快楽を感じているからだ。でも体には悪い。君なら一時的な快楽と健康どっちを選ぶかね?」

「健康を選びます。」

「でも、私は一時的な快楽を選んでいる。それはなぜかというと、例え体に悪影響を及ぼすと言ってもそれは何十年後の事だし、今は医療技術も発展しているから悪影響を緩和できる。それに人によって悪影響も無く快楽ばかりを得ることができるからだ。政治も同じ。リスクと利益は表裏一体なのだよ。それに利益追求は政治家の仕事なのでね。」

「・・・よくわかりました。」

女性秘書は一礼すると大臣室を退出した。そして背の高い男性秘書も後を追うように退出した。

「まったく、女って奴はなんでああも悪いように考えるのかねぇ。」

大臣は深々と背もたれに体を預けた。

「彼女はまだ、若い。若さ故の未熟さでしょう。政治家は何が一番大切なのかがまるで判っていない。」

「ふっ・・・君は政治家が何を一番大切にしているか知ってるのかね?」

「はい。これでもあなたの秘書を35年も務めていますから。政治家で一番大切なのは利益のみです。」

「ははは・・・大正解だ。」





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