第13話

「クハハハハハハっ! 見たか新入り。人間も人間に肩入れするソウルも、全部ぶっ壊せ!」


 高笑いを浮かべるのは黒服に身を包み、水色の髪を肩まで伸ばした男だった。いや、それに性別はないのかもしれない。

 半焼した建物の上にあぐらをかく彼は、消防士たちには見えていない。


「それにしても驚いた、こんなところで原初が三体も見れるとはな。とはいえ、内二体はまだ力を使いこなせてねぇみてぇだが」


 足に肘を置いて頬杖をつく男は、面白がるようにニヤリと口角を上げた。


「スクリューさん、もう時期ここにも祈祷師が来ます。早く移動した方が……」

 あぐらをかくスクリューと呼ばれた男の後ろ、服を後ろ前に着た新入りは、注意を促す。


「おい新入り、お前は真面目なのか不真面目なのか分かりづれぇな」


 そう言うスクリューに、苦笑する新入りはポリポリと頭を搔いた。その態度は至って真面目だと主張するかのようだ。

 クハハと再び笑うと、スクリューはこれまた楽しそうに話す。


「いいか新入り、俺たちの敵は祈祷師だけじゃねえ」


 スクリューが言った瞬間、突如として後ろから槍が降りかかる。

 それをひょいと躱したスクリューは、にちゃあと笑って槍の飛んできた方向を睨む。


「ほらほら、噂をすればお出ましだぁ」

 睨んだ方向には、燃えるマントを身につける男と、瑞々しい肌を露出し、膨らむ双丘を貝殻で隠す女がいた。


「スクリュー、貴方のやっている事は間違っています」

 女が諭すように小さな声で、それでも確かに聞こえるように言うと、スクリューは迷うことなく笑って応えた。


「よお姉貴、俺が間違ってるだぁ?」

「我らが主は、我々と人間が手を結び世界をより良くすることを望まれました。今の貴方は主の意思に反しています」


 姉貴と呼ばれた女性ーーアクアは、首を横に振って依然としてスクリューを否定する。


「クハハ、下らねぇ。世界を汚染してるのは俺か? 違ぇな、それはいつだって人間さ。人間こそ世界の膿なんだ」


 スクリューは見てきた。人間の行いによって汚れる川、消えた林、住処を無くした生き物たち。


「あぁ、なんて愚かなんだ。俺たちを作り出したのすら人間なんだぜ?」

 クハハと笑う彼の目には、明らかな憎悪が浮かんでいる。


「確かに人間は多くの過ちを犯してきました。しかし、人間は変わることが出来ます。だからこそ私たちは手を取り合うべきなのです」

「姉貴の戯言は懲り懲りだ。クハハ」


 本当は意見の合わない姉を消滅させてしまいたいスクリューだが、後ろに構える男ーーヒートはソウルの中でも無類の強さを誇る。

 この場は分が悪いと判断したスクリューは、銃を構える新入りを手で制すと、再びにちゃあと笑って身体を翻す。


「出直すぞ新入り」

 そう言って彼らは、夜闇に姿を眩ませた。


「全く困ったものですね、帰りましょうヒート」

 同じくアクアとヒートも、その場から姿を消したのだった。

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祈祷師見習いと神の末裔 キウイ @hajikerukiui

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