第31話 Vtuberになったら?

「考えてたんだけど……ホラーゲームをやってみたら?」

「ホラーゲーム……」ユーサーは意外そうに、「……相性が悪そうですが……私は大きなリアクションができないですし……」

「そこを武器にすればいいんじゃないかな? あまり驚かないからこそ、できることもあると思う」

「……静かさを売りにしたゲーム実況、ですか……」


 基本的にゲーム実況はテンションが高いことが多い。そのリアクションが楽しいし、見ていて元気がもらえる。だけれど、中には落ち着いた大人の実況をする人もいるし、それを求めている人もいる。


「だから……えーっとね……攻略情報も事前に仕入れて、解説プレイみたいなことかな。サクサクと計画的に進んでいくゲーム実況。それなら配信でもできるし」


 配信で怖いのはグダグダになることだ。そのグダグダを笑いに変えられるトークスキルがあれば良いかもしれないが、そこはユーサーの苦手分野。やはりゲームはサクサクと進んだほうがいい。そうなると、事前情報を仕入れるのは必須だろう。


「なるほど……私のリサーチ力と計画力……冷静さが活かせるということですね」

「そうだね。それで……うまくいけばRTAとかも挑戦してもいいし」

「RTA……リアルタイムアタックですね。そこまで練度を上げるのは難しいと思いますが……」ユーサーならできると思う。そういうやりこみは得意そうだ。「しかしなるほど……ホラーゲームですか……考えたことありませんでしたが……」


 ユーサーはしばらく黙り込む。おそらく自分がホラーゲーム実況をした場合のシミュレーションをしているのだと思う。


「……爆発的な人気を得るのは、時間がかかりそうですね」

「……そうかもしれない……」


 わかりやすいリアクションなしで有名実況者になっている人は、おそらくトークスキルがバケモノ級なのだ。プレイスキルも含めて、最高クラスのスキルを持っている。

 それで地道に活動を続けて認知されて……だからこそ人気は根強い。一度獲得したファンは、その人の実況の虜になっているだろう。


 しかしユーサーにトークスキルを求めるのは酷というもの。ならば……


「なにか他の要素も欲しいね……」

「流行に乗る、ですね」

「そうだね……」

 

 ホラーゲーム実況はいつの時代も受け入れられている。いわば長い流行とも言えるかもしれないが……なにか他の流行も欲しいな。


 流行があって、やはりとまさかがある……かつユーサーに合っているもの……


 流行……流行かぁ……


「僕はあんまり……流行には詳しくないからなぁ……」

「私もそこまで詳しいわけではありませんよ。その都度、調べているだけです」


 だろうな。ユーサーとヤーは世間から取り残された存在だ。インターネットという便利なものがあるから情報収集できているだけであって、本来はもっと世間に疎い。こんな山奥に住んでいるのだから、まともな情報なんて入ってこないだろう。


「……調べてみますか……」


 というユーサーの言葉を受けて、2人で検索を開始する。


 動画投稿サイトone-tubeワン・チューブで『ホラーゲーム 実況』と調べてみる。検索結果は多数。大手の実況者が最新の、話題のフリーゲームをプレイしている。


 ……ユーサーのゲーム実況の参考になりそうなのは……やはり冷静さを売りにしているチャンネルだろう。あまり驚かないことを売りにしているゲーム実況者がいたはずだ。

 

 その人は……たしか少し前に……


「あ……」


 1つ候補が思いついた。


「どうしました?」

「ユーサーさん……」

「なんでしょう」

Vtuberブイチューバーになったら?」

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