第14話 19時10分
午前に動画の企画を考え、午後に動画を撮影する。それをひたすら繰り返して、1週間が経過した。
「ふむ……」ユーサーはパソコンの画面を眺めて、「ストックが約50本できましたね」
「そんなに?」
「はい。まぁ1日10本の動画を撮影してますからね……動画編集が終わってないのを含めれば、もう少しありますよ」
「動画編集って……疑問に思ってたんだけど、いつ動画編集はしてるの?」
動画編集なんてのは、楽な仕事じゃない。しかもユーサーは午前は企画をヤーと一緒に考えて、午後は動画撮影のアドバイスをしてくれている。しかも朝食も昼食も夕食も作ってくれているのだ。
いったいどのタイミングで動画編集なんてやっているのだろう。
「私は少し……通常より活動時間が長いので……その時間にやっています」
「そうなんだ……」触れられたくない話題だったようで、「じゃあ……そうだね。いつもありがとう」
「こちらこそ。一日10本の動画撮影なんて……かなり短い動画とは言え、結構な無茶をさせていますよね。スタートダッシュがしたかったので……」
たしかに1つ1つの動画は短い。撮影も、勇者の得意分野なのでそこまで時間はかからない。とはいえ、当然楽な仕事ではない。
だが、
「大丈夫だよ。体力には自信があるからね」
むしろそれしか自信がないとも言える。
「その体力に助けられております」ユーサーはペコリと頭を下げる。結構礼儀正しい。「それから……少し相談があります」
「なに?」
「そろそろ動画投稿を開始したいのですが……動画の投稿時間についてです」
「時間……ああ、固定したほうがいいんだっけ?」
「一般的にはそう言われていますね」
「じゃあ……何時に投稿する?」
「そうですね……少し考えていたのですが……19時10分、はどうでしょうか」
「19時10分……それはどうして?」
「有名な動画投稿者の人が19時に動画を投稿しているからですね。その動画を見に
「なるほど……だから10分なんだ。有名動画投稿者さんの動画を見終わって、そこからだね」
「そうですね……老若男女問わず人気な動画投稿者様なので……そもそも19時から21時くらいが、動画投稿には適しているともいわれていますし……まぁ視聴者層や投稿動画にもよるのですが……とりあえずの候補は19時10分です」
投稿動画……トレーニング動画の投稿時間はいつが良いのだろうか。いまいちよくわからない。それに、勇者の動画をどれくらいの年齢層が見るのかも不明だ。
とりあえず……試してみるしかないだろう。何も考えないで投稿するよりは100倍良い。今までの勇者ヤーよりは圧倒的に良い。考えて投稿すれば、反省することもできるのだ。思考を停止すればそれもできない。
「この50本の動画は……基本的には視聴者層や投稿時間……これからの方針等……いろいろなものを確認するためのものです。当然この50本である程度の人気が出てくれるとありがたいですが……まぁそう簡単にはいかないでしょう」
「今までよりは増えそうだけどね」
「そうですね……とはいえ先は長い。貯蓄が尽きる前になんとかしないといけません。しっかりと考えて、行動していきましょう」
「わかった」
と言いつつ、ヤーには少し疑問がある。
どうしてこの少女ユーサーは、自分にここまで尽くしてくれるのだろう。ユーサーは……
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