誰が為に殺人は起こる(後編)
<ミルムの独白>
お母さんを殺したあいつらが憎い。
そして、わたしを蔑み、虐めるお父さんも憎い。
わたしからユミトを盗ったルミーも憎い。
わたしを裏切ったユミトも憎い。
皆んな、死ねばいい。皆んな、わたしが殺してやるんだ。
わたしの母はルスト共和国の魔術士だった。
帝国の侵略を受けたルスト共和国はあっという間に崩壊し、わたし達は這う這うの体で、あのスベルト村まで逃げてきたのだった。
そしてそこでルスト共和国で体験した悲劇を再びこの村で体験することになろうとは.....
魔物が来た時、お母さんはいち早く気付いた。
あの魔物が吐き出す毒の霧。あれを喉に入れると、息が出来なくなり死に至る。
ルストであの魔物と対峙し、毒の霧を吸い込んでしまったお母さんは、自らに浄化魔法を掛けたが、後遺症として呼吸困難な状態が続いていた。
それなのに、それなのに、あの時も自らを犠牲にして魔物に立ち向かったのだ。
そして何とか斃すことは出来たものの、既に毒の霧は村に撒かれてしまっていた。
当然、お母さんも大量に吸い込んで、瀕死の状態だったのだ。
それを、それをあいつら.....
動けないお母さんを、ベッドから引きづり下ろして殴る蹴るの凶行.....
わたし達も殴られ村を追い出された。
街に移り住んでからも、自暴自棄になったお父さんは仕事もせずに酒ばかりを飲んでわたしを働かせた。
そして15になった時、わたしは冒険者としてお父さんから逃げ出したのだ。
わたしにはお母さま譲りの魔法の才能があった。
だが、それは人には見せない。お母さんは人助けをするために魔法を使い、そして魔女と罵られて無残に殺されたのだから。
ならば、わたしはこの魔法を使って憎い奴らを殺そう。
スベルト村に向かったわたしは、あの時の毒の霧を真似てあいつを殺してやった。
最初にお母さんを魔女だと罵った男を。
そしたら、村から逃げ出そうとした奴がいたので、そいつらも殺した。
しばらくして、冒険者ギルドにスベルト村からの護衛依頼が入っているのを見つけた。
わたしはその依頼を受けるようにユミトに促す。
そしてわたし達のチームはスベルト村に向かうことになった。
斥候として先に森に入ったところで見知った商人に会う。
わたしが殺した村人の件で、騎士団を呼ぼうとしていた。
「懐かしいねえ」と油断している商人の心臓を一突きにして、持っていたぬいぐるみをその場におく。
事前に用意していた傀儡の人形だ。
人形の動作は、昨日お父さんで実証済だった。
そしてしばらく時間を潰し、ユミト達が死体を発見したのを確認してから、何食わぬ顔でユミト達のもとに戻ると、予想通り、ユミトはわたしに街まで知らせに行くように告げる。
わたしはそのまま街まで急ぎ、街に着いたとたん父親殺しの罪で拘束された。
わたしは今街の牢にいる。
傀儡の人形の目から見える景色で、あの憎い奴らを殺せるのだ。
ぬいぐるみをルミーが持って行くのは分かっていた。
なぜなら、ルミーに催眠の魔法を掛けていたから。
そう、全ての結末は最初から決まっていたのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます