とあるOJTにて

「おめでとうございます。




貴方は3528人目の転生者に選ばれました!




貴方には素晴らしいチート能力を授けますので、楽しい異世界生活をお送り下さいませ。




それでは頑張ってくだ「ちょっと待て!」さい…ってええっ!今なんと?」




「ちょっと待てと言った。




一方的に話しを進めるが、なんのことだ!」




「なんのことと言われましても……」




「言われましてもじゃ無い!




さぁ、順序立てて、キチンと話しをしようか」




「キチンと言われましても…」




「人をこんなところに連れてきておいて、どういうことだ。




異世界がどうのとか言っていたが、何故わたしが異世界を好ましく思うと思ったか。




そしてチート能力とかそんなもので、釣られるとでも何故思う?




キチンと話しをしてもらおうか」




「い、いえ、わたしはそんなつもりじゃ…」




「そんなつもりじゃなかったら、どんなつもりだ。




…何をする、そうか、その杖でわたしを何処かへと飛ばそうとしているのだな」




「ち、ちょっと、触らないで、嫌っ、それは大事な物なんです。




困ります、か、返して下さ〜い」




「他人が困るのはお構い無しで、自分が困るのは駄目なんだな。




ますます信用できん」




「い、いや、本当に困るんです。




だって、日本人は異世界転生が大好きじゃないですか。


貴方の前の3527人は喜んで転生したって聞いてますよ。




それが、何故わたしが初めて担当することになった貴方が拒否されるのですか?




わけわかんない!」




「ほう、今までが上手くいったから、わたしも同じだと思ったと。




日本人は1億2000万人もいるんだ。




その中の高々3527人がそうだからと言って、サンプル数が小さ過ぎる。




何の根拠にもならんな」




「だ、だって、こういうのはノリが大事だからと先輩から教えられて…」




「そのノリで、嫌なのに一方的に送られた日本人もいたんじゃないのか。




言い訳は見苦しいぞ」




「あ、あのぉ〜、そ、その〜」




「キッチリと説明を求める!そうでなけ…」




カラン…







「ほら言うだけ言ったらすぐに送らないと。




相手に考える時間を与えちゃ駄目だろ。」




「先輩!…だって…」




「だってもヘッタクレも無い。言い訳は結構だ。杖を拾え。




さぁ、すぐに次が来るから、今度はすぐにな。」







「おめでとうございます。


貴方は3529人目の…」



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