とある神のひとりごと

日本には古来より八百万の神々がいることをご存じだろうか。




森羅万象全ての物に神が宿っており、畏怖し信仰せよという神道の教えに基ずくものだ。




本当にそんなものがあるのか...なんて思うだろうが、わたしが知ったことじゃない。




いや、知っているよ。実に多くの神々がこの国、いや世界に存在することを。




八百万もいるかどうか知らないだけだ。数えたことが無いからね。




かく言うわたしも神のひとりだ。




わたしが司るのは、『上腕二頭筋』なのだ。




『上腕二頭筋』 ああなんて素晴らしい響きなのだろうか。




筋肉神としての格でいえばわたしは結構上位の方に当たる。




神の格は信仰度合いによって決まるからね。




いつも近くにいる上腕三頭筋さんや上腕筋君とは格が違うのだよ。




わたしのライバルといえば、胸筋氏、腹筋氏、そして広背筋氏くらいだ。




我等は筋肉四天王として切磋琢磨している。




大腿筋君も四天王に加えろと煩いが、残念ながら彼にその資格はない。




確かに大腿筋に固執する者もいるにはいるが、鍛えすぎると最近流行のスリムパンツが入らなくなるからね。




それだったら、お前も同じじゃないっかって。




確かに逞しすぎる上腕二頭筋は着る服を選ぶだろう。




だが、安心して欲しい。上腕二頭筋の発達を望む者は、半そで、そう半そでを好んで着るのだよ。




そしてその逞しい腕で抱かれることを夢見る女子の大きことよ。




それこそが『バッタの足』と揶揄される大腿筋君とは一緒にしないでもらいたい所以なのだ。




絶対王者の胸筋氏、腹筋氏、次いで広背筋氏とわたしが次点争いをしているわけだが、最近、伏兵が現れた。




何と、これまで歯牙にも掛けていなかった上腕三頭筋さんなのだ。




夏に女性が気にする通称『振袖』の解消策として上腕三頭筋さんが注目され出したのだ。




流行の発信は女性からというのが世の常。




危険だ、今から手を打っておかねば、四天王の地位も危ういかもしれない。

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