第20話 気持ち
裕太の部屋に戻った俺達は何やら書類に
書き込みをしている健太さんに声をかける。
「健太さん、仕事ですか?」
「おう!海!つかさ!これはお前らの入学手続きの書類だ!一応決まりなんでな暇なんで書いてたんだ!で、どうだった??」
「悪いな健太さん、まぁどうもこうも自己紹介して、能力の説明して終わりって感じやな」
「そんなの僕らが書かなくていいんですか??王様との話は今つかさが言ったとおりですね」
「まぁこんなもん一応規則だから提出してくれってだけで何の意味もないから適当でいいんだよ!そうか…あの人威厳そうに見えて案外適当な所あるからな~」
健太さんは笑いながら俺がこんな事言ってたって誰にも言うなよ!っと俺たちに言ってきた。
確かに堂々とし中々の風格があったが、上から物を言って来る感じには思わなかった。
そういう人だから周りの人もついていくのかもしれないが。
「ほらよ!明日この書類忘れんなよ!じゃあ俺は自室に戻って色々する事あるから明日遅刻するなよ!」
俺とつかさは健太さんにお礼を言って入学書類を受け取った。
「健太さん親切やな~俺ならお前らでやっとけ!で終わりやわ」
つかさの言う事に俺も頷く
「凄く面倒見がいいからね!奴隷商会の件でもバタバタしてるらしいから、僕もあんまり甘えてばっかりいられないけど、、じゃあ2人とも明日の朝部屋まで迎えに行くから!用意とかはこっちでするからもう部屋で休んでていいよ!あとこれ明日からの制服ね!」
「おう、サンキューな、ほなまた明日」
「んじゃな!」
俺とつかさは裕太と別れ自室に戻り、風呂に入り寝る準備をした。
俺達の部屋は客人用の部屋を2人1組で使わせてもらっている。
つかさは1人部屋じゃないんかい!とか最初は文句を言っていたが、まぁ海も1人じゃ不安やろ?とか言いながらなんやかんや納得した様子だった。
すると、つかさが俺に問いかける。
「なぁ海、この世界で1週間過ごしたけど、どう思った?」
「何や急に……けどそうやな、俺らの世界みたいにくだらん決まり事とかないから正直ちょっと楽しんでる自分がおるよな、まぁまだたったの1週間やしわからんけどな」
「そうやよな、俺も正直こっちの世界で生きて行くってのもありやなって考えてる、俺はあっちの世界に家族はおらんし連れもお前らしかおらんしな。親戚は別に俺がおらんなったところで、探そうともせんやろ…それに正直あれはダメこれはダメって決まりにもうんざりしとった。」
つかさには親がいない、裕太にも。
俺たち三人は孤児だった。
俺達は同じ施設で育ち、同じ中学、同じ高校に
通った。
俺達は三人とも親に捨てられ、親戚は誰も
俺達を引き取ってはくれなかった。
それを恨んではいない。
だが、色々世の中の汚い物を見てきた。
その三人の中で唯一素直に育ったのが裕太
汚い世界で、綺麗な心を持って生きていきたい。
汚れた物に染められず、国の決めた価値観で
人と接する事のないように、自分と同じ境遇の
人間が少しでも減るようにと言う優しい心を
持ってできた人間が裕太。
非行に走ったのがつかさ
誰が誰の為に決めたかもわからないルールで縛られた世の中で、持った人間が持たざる人間からどうやって物を奪うかしか考えていない世の中で、国民の為だの何だの能書きを垂れるお偉いさん方たちの中で本当に国民の為を思っているのは一体何人いるのだろう。
世の中の人間が全員が全員同じじゃないとわかってるくせに
世の中を色眼鏡でしか見れなくなった人間が俺。
中学に入学したと同時に裕太は養子として引き取られた。老夫婦だった。裕太の親となった2人は俺達の事も本当の息子のように可愛がってくれた。
俺とつかさの事も引き取るって言ってくれた時は本当に嬉しくて泣いた、しかしその話しを俺とつかさはそこまで負担はかけれないからと言って断った。裕太の葬式をあげる時も色々と動いてくれた。
2人には本当に感謝の気持ちしかない、2人がもしかしたら俺達がいなくなった事でかなりの心配をかけているかもしれない。
けど、俺は正直元の世界に帰りたくないという気持ちが強かった。
その話こそしないが
もしかしたら一番帰りたがっているのは
裕太なのかもしれない
小学生の頃は周りの大人はこう言った。あの子達両親がいないらしい、可哀想。きっと寂しい思いをしてる、子供を捨てるなんて最低。
俺達の何を知っている?何故そんな事がわかる?俺達の産みの親の事情を知って言ってるのか?
本当に可哀想だと思うなら放っておいてくれ、俺達の耳に入らないように言葉にしないでくれ。
つかさが荒れに荒れだした頃も俺たちがつるんでいた時にはこう言った。
ちゃんと教育してくれる大人がいなかった。
寂しいから周りの大人に構ってほしいんだ。
表現方法がわからないからああ言う伝え方しかできないんだ。
つかさをこんな風にしたのはその大人達だろ?
無駄に構ってきたからこうなったんだろ?
俺たちがどれだけ必死に伝えようとしても話を聞く形だけとって行動には移してくれない。
ほとんどの人間がそうだっただろ?
所詮持つものの言葉がこの世の中を動かし
持たざるものの肩身をまた狭める。
その頃からだった、俺がこの世の不条理や、
疑問を文書にして綴りだしたのは。
そしていつか持つものの側に周り持つものから奪う
持つものになると決めた。
「そうやな…それもほんまにありかもな…」
「けど、お前には夢もあるし俺みたいな落ちこぼれでもないやろ?だから俺はお前の意思を尊重しようと思っとる」
「………ありがとな…、けどお前はお前の生きたいように生きればええ、俺に合わせる必要はない。落ちこぼれでもない。まぁこれからゆっくり考えていこ……んじゃ寝よか!明日寝坊したら怒られるぞ!」
「、、、、、、あぁせやな、ほな明日」
そして俺たちは眠りについた。
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