第16話 スプーンの勇者誕生2





「ふざけてる?」




(いえ、、、ワタクシもあなたの能力を見たのは今が初めてでして、能力は元の世界でもっともゆかりのあった事柄が能力に反映されるのですが、かたいものをスプーンですく「2回も言わなくていいってば!」



「なんなんだよそれ、

完全なハズレスキルじゃないかよ、そんな能力でどうしろってんだよ、、」



(そうこう言っている内に魔物が近くまできているようです。)



竜太郎が落胆しているなか、その言葉で自分が命の危機にめんしている事を思い出す。



すぐ近く後方からザッザッザっと何かが

こちらに向けて走ってくる



「わ、わ、わぁー」



竜太郎は恐怖のあまりうまく走れない、思うように動かない足を前後に動かして必死に先へ進む



(そのまままっすぐ走り続けてください。まだ魔物との距離はあります)



「なんだよ!なんだよ!サポートしてくれるって言ったんだから助けてよ!」



(申し訳ございません、ワタクシができるのは、これから先、生き残る為の助言と行くべき場所ををお伝えする事しか出来ないのです、命に関しての物理的サポートはできかねます)



「なんだよそれ!くそ!くそ!くそ!」



パッと後ろを振り向くと遠目に写ったのは森と同化するかのような黒い毛並みに狼のような見た目で大きなツノを生やした魔物だった。




「はぁ!やばい、追いつかれる!どうしよう、、、!?!?」





竜太郎は後ろの様子を伺いながら前に前に必死に走る、その時魔物が一匹でない事に気づく、



「いったい何匹いるんだよー!!ちくしょー!!なんで俺がこんな目に!!」



(あれはブラックウルフです。集団で行動する事が多い魔物です)



「そんなの今はどうでもいいよ!!」




どんどんと竜太郎と魔物の距離が

近くなってくる




「あぁ、もうだめだ、もう死んじゃうんだ」



竜太郎が半分死を覚悟したその時、ブラックウルフは急に足を止め竜太郎の追跡を中断する



「え?どう言う事?もしかして助かったの!?え?え?」



竜太郎は走りながらも後方を確認し、魔物が自分とは反対方向に退散する姿を確認する


「やった!やったー!助かった!助かったよ!」



竜太郎は嬉しさと安堵のあまり

声を張り上げる



(止まってください竜太郎様、この先に何か大きな気配を感じます)



「え?」



だが忠告既に遅し、竜太郎が大きな声を

あげた事によってその先にいる大きな気配の者に気づかれたようだ


その者は森の先の方からゆっくりと

竜太郎の方に歩み寄ってくる



竜太郎はブラックウルフから逃れられた事による安堵感と疲労、自分に歩み寄ってくる者への恐怖でもう動けないでいた



「あぁ、ああそんな、助かったと思ったのに」



謎の人物は声が届く範囲まで近づいてくると、竜太郎に対して声をかける




「お前は人間か?魔力を一切感じない、なぜこんな場所にいる、何者だ」




その者は竜太郎が頭で想像していた恐怖の存在とは裏腹に透き通るような綺麗な女性の声で話しかけてきた。



竜太郎は涙目でよく見えない自分の目を擦り、目の前の存在に目を向ける


そこには先程までシルエットしか見えていなかった者の姿が映し出される



足元まで伸びた真っ白な純白の髪

服装は黒いローブで見たこともないぐらい

整った顔立ちの女が目の前にいた


とてつもない化け物を想像していた

竜太郎は呆気にとられ、目を離せずにいた



「おい、聞いているのか、質問に答えろ」



「いや、お、俺は、気づいたらこの場所にいて、俺も何がなんだか、、」



女は奇妙な物を見るかのように竜太郎を

頭の上から足先までじっと観察する



「お前もしや転生者か?」



「転生者?そ、そうです!多分そうです!」



(いえ、竜太郎様は転生者ではなく転移者です)



竜太郎は

うるさいなとそんなん今はどっちでもいいんだよ、と頭の中で一言発する



「私の管理するこの森から奇妙な気配がすると思って、私みずからきてみれば、奇妙な男を発見したものだ」


「あ、あの助けてください!俺ほんと何がなんだかわからなくて!このままじゃまた襲われて、、」



「まぁよい、とりあえずついてこい、話はそれからだ」



「は、はい!」



竜太郎は謎の女について行こうとするが、

安堵と疲れからかその場に倒れ込む



「い、いつつ、あれ?体が思うように動かない、、」



「はぁ、人間という物はなんて脆いのだ、仕方ない」



謎の女はそういう竜太郎の周りに風を纏わせる



「わっわっ!」



「安心しろ、ただの浮遊魔法だ、」



「すげー、これが魔法」



竜太郎の体がフワフワと無重力になったかのように宙に浮く、その時また脳内に声が響いた



(それではあなたの身の安全は確保されましたので、ワタクシのサポートはここまでとなります。この先あなたには大きな使命が課せられるでしょう、今はこの者と行動を共にし、また時がくればお会いしましょう)



「え?ちょっと待ってよ!まだ聞きたいことが!全然何もサポートしてくれないじゃないか!」



「なんだ!くどいぞ!サポートだと?大人しくついてこい!」



「いや、ちが!あなたじゃなくて!」



「ん?さっきまでかすかに感じていた奇妙な気配が消えた、、?」



謎の女は眉をしかめ辺りを見渡す



「まぁ今考えても仕方ない、後ほど、奴らに調べさせるか、ところでお前、名は何という?」



「えっと、あの、竜太郎です!ところで今からどちらに向かわれるんでしょうか??」



「そんなの決まっている、我が魔王城だ」



「我が魔王城、、??」



「ん?ああ、私の城だ」



「、、、、、、、、、、」




「では行くぞ竜太郎」











魔王かよーー!!!



竜太郎は心の中で叫んだ


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