第14話 和解

「つかさ大丈夫か?いつ目覚めたんや?」




訓練場での出来事の後裕太の部屋に戻った俺たちは、つかさの様子を見るべく、医務室に来ていた。




「お~俺は全然大丈夫や、ついさっきやけどな、…それより裕太、悪い事したな」




「え!覚えてるの!?」




「あぁ薄っすらとやけど意識はあったねん、けど映画見てるみたいに、目の前で勝手に物事が繰り広げられてる感じで…」




「そっか…じゃあ僕がつかさにした事も覚えてるよね…ごめんね…」






バシッ!


つかさが裕太の肩を叩く


しかし、やはり体が痛むのかいつもの


力強さはない。






「え!?」




「やめいや!辛気臭い!あの裕太にここまでされただけでも俺のプライドがズタボロやのに、謝られたら余計腹立つわ!今回は先走った俺が悪い!それをお前が止めてくれた!それでこの話は終わりや!…それと………」






つかさは裕太の事を気遣ってか明るく振る舞う。


いや、気遣ってるんじゃなくこれがいつものつかさだ。それを察してか裕太もうん!とだけ返事をしてそれ以上は何も言わなかった。


しかし、つかさの様子がおかしい、と言うより歯切れが悪い。どうかしたのか?






「いや、、あの……」




「なんやねん!頭強く打ちすぎたんか?おかしなったんちゃうか?」






俺はさっきからもじもじしてるつかさをからかった。






「じゃかましい!うっさい!黙っとれ!」






怒られた。






「あの…だから、あぁー!!健太さん!」




「!? 俺??」




「あの…あんたが気を失った俺をここまで運んでくれたんやろ?目覚ました時先生に聞いたわ……訓練場でも迷惑かけたし………、」






みんな無言でその場を見守る。






「あの………ありがとうございました!それと、牢屋の中でいきなり殴りつけたり、失礼な事ばっか言ってすみません、最初健太さんが事故おこした理由聞いた時はまだ半信半疑やったけど、裕太と健太さんの関係見てる内に…何て言うか、うまく言われへんけど…」






そう言う事か。


つかさは昔っからプライドが高くて表現が下手くそな奴だったからな、


健太さんを憎むべき相手として見ていたのに


この短時間でコロっと見方を変えるのが


照れ臭かったのか。


けど、つかさの気持ちはわかる、


あの時つかさと俺の立ち位置が逆だったら俺も今のつかさの様になっていただろう。


それにまだ健太さんと知り合って一日もたってないが、この人が嘘をつくようにも見えない、人間の直感って奴かな?






「………………」




「あれ?健太さん、もしかして泣いてるの!?あはは!もぉ~2人の前だよ!」




「う!うるさい!目にゴミが入っただけだ!」




「目にゴミが入ったって健太さん、それもうギャグみたいなもんやで!…健太さん泣かんといてや!ええ大人やろ!」






健太さんは涙を目に溜め上を向いている。


それを裕太と、つかさが茶化す。


つかさは自分が好感をもった相手には付き合いの時間など関係なしに平等に接する。


良く言えば友好的、悪く言えば馴れ馴れしい。




「うるさい!お前らとそんなに年は変わらないんだ!泣くぐらいいいだろ!」




「「え!?」」




「あ、そういや2人にはまだ言ってなかったね!健太さんこう見えて22歳だよ!僕たちの2つ上!って言っても2人とは2年の時差があるから2人にとっては4つ上かな!」






まじか…


妙に落ち着いてるから20代後半ぐらいかと…






「な、なんだよ!悪かったな老けてて!」




「え、いや、老けてるとかじゃないですよ!ほぼ同年代と思えないぐらいの貫禄がでてるって言うか、、」




「はっははは!まじか!健太さんそんな若かったんか!そりゃその見た目やったらさん付けで呼ばれるわ!」




「んなっ!?」






つかさはまた健太さんを茶化す。


しかし健太さんは怒るどころか笑いながらつかさに


ツッコミをいれる。


それから俺たちは俺たちの元の世界の話など


色々な話をした。


俺たちにとっては昨日の事でも2人にとっては


2年前の事なのだ、みんなで楽しく談笑をした。


時間も忘れてそうこうしてる内に外は


明るくなっていた。










「やばい…もう朝だよ!健太さん早く帰って少し眠らないと僕たち今日は書類片付けないといけないよ!」




「あ!そうだった!じゃあ2人ともまたな」






裕太と健太さんはそう言って部屋を出て行こうとする。


しかし、ふと健太さんが扉の前で立ち止まった。






「?健太さんどうしたの?忘れ物?」




「………裕太」




「ん?どうしたの?」




「海、、つかさ…」




「はい?」




「ん?」




「ぶり返すようで悪いが俺のケジメとして聞いてくれ。俺はどんな理由があれ、一度は三人をバラバラにしてしまった。裕太、お前は特に2年間も2人と離れ離れに辛い思いをさせた。海とつかさの2人にも本当に怖い目に合わせてしまった。だから…いつ帰れるかわからないこの世界では……俺は何があってもお前たちを守る!もう絶対に死なせたりなんかしない!お前たちがもし危険な目にあったら俺が命を捨ててでも守ってやる!だから……、」




「許してくれとは言わない、でも…でも…」








健太さんはまた目に涙を溜め俯いた。


健太さんはそれ以降何も言わなかった。








「もぉ何言っての健太さん!僕は健太さんに感謝の気持ちはあっても恨む気持ち何てないよ!」




「何で俺が守ってもらうねん!自分の身は自分で守る!その為にも能力使いこなせるように訓練付き合ってもらうで!」




「そうですよ健太さん、俺たちは守ってもらうだけじゃない、だってもう仲間じゃないですか!この4人なら守って守られる信頼できる関係になれますよ!」






俺たちは健太さんに一言づつ言葉をかけた。


自分でもクサイ台詞を言ったと思う。


けど、不思議と恥ずかしさはなかった。


心の底からそう思えたからだ。


























健太side






俺は医務室をでて城の中に用意された自分の自室に


戻っていた。


海とつかさは客室でしばらく寝泊まりしてもらう事になった。




「仲間……守って守られる信頼できる関係か…そこまで言ってくれるなんてな…」










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「許してくれとは言わない、でも…でも…」










お前たち三人に少しでも歩み寄る事を許してくれるか?










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