第1話 さらば世界

全国の高校生がもうすぐ冬休みだと


ウキウキしている季節。


大阪のとある町で3人の少年がいた。




「おい、お前らこれ見てや」




東城つかさはそう言うと、ブレザーを脱ぎ


シャツの袖を捲り出した。




「は??お前入れたん!?」




シャツの袖を捲り露わになった二の腕には


ツーフェイスのピエロのタトゥーが大きく彫られていた。


ツーフェイスとは笑った顔と泣いた顔が組み合わさったデザインの事だ。その顔が二つともピエロになっている。




「どうよこれすごいやろ??」




美濃裕太は目を輝かせすごいすごいと


はしゃいでいる。


一方俺はしらーっと白けた感じで


横目でつかさのタトゥーを見ていた。




「どうせシールかなんかちゃうんか、しかもそれが本物やとしてまだ俺ら高校生やのにバレたら退学やぞ?」




「あのなー海、もうじき俺らも卒業やし、こんな季節半袖なる事ないやろ?バレる訳ないやん??」




ニコーっと満足気な表情で語るつかさに対して


俺は、やれやれと言った感じで受け流す。




「何で卒業まで我慢せえへんかなー全く」




「俺もこの前18になったし卒業したら親戚んとこで土木する気やからな!願掛けって奴や!」




「お前願掛けの意味わかって使ってんか?」




「さぁ?けど使いかたはあってるやろ!」




「知らん」




つかさの返答に適当に返事を返した俺は後ろの方で「なぁ痛かった??いくらかかった?」「それはやな~」などと興味津々でつかさに質問をする裕太と、嬉しそうに話すつかさを置いて先に学校に向かいだした。








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「おい、つかさ!ほってくなや!」




先に教室に入り本を読んでいた俺の元に


遅れてやってきたつかさと裕太が


扉を勢いよく開けて教室に入ってくる。


その瞬間クラスの全員の視線が2人に


注がれる。








東城つかさ[とうじょうつかさ]


金髪のウルフヘアーに両耳に二つづつのピアス、キリッとしたした目に細い眉毛、身長180センチの筋肉質。誰から見ても柄の悪い不良である。この前何か街で絡んできたチンピラ2人を病院送りにしていた。つかさ曰く2人までなら余裕で返り討ちにできるらしい。




美濃裕太[みのうゆうた]


茶髪のショートカットにくりっとした目と整った顔、身長は170センチ程だがモデルのようなスタイル。特徴を言うとすればただのイケメンである、それに超鈍感なラッキースケベ野郎ときた、モテモテの憎い奴。






それで俺、中谷海[なかやかい]


容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群


って程まではいかないが、


一応学年3位の成績、中学時代はバスケで


推薦が来た事もあるし、ルックスもそこまで


悪くはないと思う。


特徴を言うと身長は168センチ黒髪のショートカット、目は常にダルそうとよく言われる。正直特にこれと言った特徴はない、、、




そんな俺だが、この存在感の塊のような2人といつも一緒にいるせいで俺の存在感が極限まで薄められ異性との交流などはほとんどない。




まぁこいつらといたら退屈はしないので、それはそれで、いいのだが。




俺の夢は小説家になる事だ。


こいつらといると色々な面白いネタが


入ってくる、だからいつかその事を


まとめた小説を書いてもいいかなと


思っている。






「おい、海何にやけてんねん、エロい事でも考えとったんか?」




どうやら知らない間ににやけていたらしい。




「あほか、お前と一緒にすんな!」




「なっ!それ言うんやったらこいつやろ!このラッキースケベ野郎、男の敵や!」




どうやらつかさも思っている事は同じらしい。




「何で俺やねん!俺のは不可抗力やないか!」




あ、ラッキースケベ体質の事は自覚してんのか。


そんな会話をしている内にチャイムが鳴った。


一応学校一の不良と言われるつかさだが


授業は真面目に受ける。またまたつかさ曰く


俺がする悪い事は喧嘩だけや。らしい。




そんなこんなで下校時間になった。




「つかさ、裕太どこ行った?」




「あぁ何や職員室呼ばれとったわ、提出物がなんやらで」




「ふーん、ほなちょっと教室で待っとくか?」




「ええでー」




俺達はいつも3人で下校していたので


裕太が帰ってくるまで教室で待つ事にした。








「きゃーー」








「なんや??」




「見に行ってみるか?」




しばらく待っていると、廊下から


女性の悲鳴が聞こえたので、俺たちは


教室をでて悲鳴が聞こえた方に向かった。




するとそこには、女子生徒に押し倒され


顔面に胸を押し当てられた裕太がいた。




「またお前か」




「裕太お前ええ加減にせえや!その子が可哀想やろ!どいたれ!」




どちらかと言うと裕太が下敷きなので、女子生徒がどく立場なのだが…


つかさは羨ましくて怒っているのだろう。




「ちゃうって!この子が階段から足滑らして支えようとしたらこの体勢になったんや!信じてくれ!」




必死に弁解を試みる裕太だが、鼻の下が伸びきっている、こいつ本当は狙ってやってるんじゃないのか?




「ご、ごめんなさい美濃君、大丈夫?足滑らしちゃって…」




「あぁ大丈夫!大丈夫!それより怪我はない?」




「う、うん!大丈夫、ありがとう!」




そう言って女子生徒は顔を赤らめて去っていった。また裕太のファンが1人増えたなチクショウ。




「まぁとりあえずはよ帰ろや」




「せやな!裕太はよ来い!ほってくぞ!」




「ちょ、待ってくれや!」




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「冬休みの計画たてよや!」




「そんなもんいらんやろ、その時の思いつきで遊んだええやん、それに裕太!お前どうせ女の子から誘われたりしてんのやろ!」




「…………ん?何が?」




「何やねんその沈黙!しばいたろか!」




「海~助けてや~つかさがいじめる~」




「一回しばかれて顔の形変えてもらった方がええんとちゃう?」




「そりゃないでー!!!」








(あ………は…界………要………さ…た………)








「ん?誰か何か言うたか?」




「そりゃないって言うたんや!」




「違う違う、そうやなくて…まぁええわ」




さっきの声は何だった?


頭に響くような声。




「あ、つかさ!そういやもう一回見せてやあのタトゥーほんまにかっこいいよな!」


「ん?そうか?そうかそうか!まぁどーしても言うんやったらしゃあないなー!」




裕太がつかさに見えないようにガッツポーズをしている。


つかさは単純な奴だな。




俺はその光景を笑いながら見ていた。


いつもの帰り道


いつもの会話


いつもの光景


そんな毎日が当たり前と思っていた。




そんな時、さっきまではしゃいでいた


2人の声がピタリととまった。


2人が俺の方を見てとてつもない物を見る目で


見ている。




「どうした??」




すると突如


裕太が俺に向かって勢いよく走り出してきた。




何だこいつ、いきなりおかしくなったのか?


俺は身構えたが突然の事に対応しきれなかった。




裕太に突進され突き飛ばされ


地面に叩きつけられた衝撃で


俺の意識は途絶えた。










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