世界に不要な転移者とスプーンを持ったできそこない勇者

イロゴム

1章

プロローグ


「お母さん!俺新しい魔法を覚えたよ!


ってあれ?お母さんいないの?」




1人の少年が庭から慌ただしく一軒家のリビングに


駆け込んでくる。




「お母さんなら街に買い物に行ってるよ、今日はアベルさんの家でご飯を食べてくるって言ってたから遅くなるかもな」




少年は露骨にガッカリした表情を見せる。




「そっか…まぁいいや、、お父さん俺新しい魔法使えるようになったよ!」




「この前お母さんに教えてもらってたやつか?」




「ううん、それはまだできてない…けどお母さんにもらった本に書いてあった火の魔法できたんだ!」




少年はそう言うと手を開き正面に突き出した。




「おお!凄いじゃないか!」




そこには、拳ほどの大きさの火の玉が浮かんでいた。




「へへへ、これからもっと練習してもっともっと大きな火の玉にするんだ!他の魔法も覚えてお母さんをびっくりさせてやる!」




「おう!ルイならお母さん以上の魔法使いになれるかもな!けどごめんな、お父さん魔法の事は全くわからんからルイにアドバイスしてやれなくて…」




そう言って20代半ばの男はルイと呼ばれた少年の頭を優しく撫でる。




「ううん、大丈夫だよ!そういや何でお父さんは魔法を使えないの?お父さんの使うあれは魔法じゃないの?」




ルイにそう尋ねられた男は少し寂しそうに、何かを懐かしむかのように微笑んだ。




「そうだな、お前にはまだ話した事がないもんな、よし!ちょっと待ってろ!」




男はそう言うとリビングから寝室に行き、一冊の本を持って戻ってきた。




「これはお父さんの過去に本当に起きた出来事が書かれた小説だ」




男はにっこりと笑いその本をルイに手渡した。


ルイは受け取った本をパラパラとめくりだす。




「お父さん、これ何て書いてあるの?読めないよ。」




「あ、あぁ悪い悪い、お父さんの世界の文字で書いてあるんだったな、じゃあ今からご飯まで時間があるし話してやるから聞くか?」




「うん!」




「じゃあこの話しはルイの5歳の誕生日プレゼントだな!」




「えーーそれは嫌だよー」




「ははは!冗談冗談!お父さんには昔親友が2人いてな」








男はそう言うと椅子に腰掛け語り出した。










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