第4話 光の帯

急速にアンバーナインの体から発生する無数の木々。


その光景にすかさず周りのオドを凝縮させ、純粋なエネルギーは光を発生させながら空間を滅却する矛へと化す。


『ガンマレイ』


無数の光が既に巨大な球体になりつつあるアンバーナインに殺到。


しかし球体から出る触手のごとき樹が振るわれガンマレイとの一瞬の拮抗の内、急速に弱まる一閃の光。


これではまるで...


そう、思考した隙間を縫うように迫り来る触手に本能的に触れるのは不味いと回避を選択。


驚くべき速度の無数の木々に避けきれずに腕の一部に掠れば忽ちその場所だけが水分が極限に失くなった様に枯れていた。


「お前は危険だ、ここで殺すことこそが我々にとっての最善だと判断した」


その腕の一部を即座に毟り回復させながらその球体、その中心のアンバーナインを目視する。


その姿は先程の若々しい姿とはうって変わり長く生きたエルフのように酷く老け、肌は木目の様な皺に覆われている。


木々の循環と吸収と言う概念は術者さえも例外では無いと言うことなのかそれとも真言詠唱の反動なのか...


なんにせよ今の自分ではこの男を滅するには兵装が足りない...故に


抽出テイクアウト


瞬間、異邦人エトランゼの体の中から現れる黒い何かに。


アンバーナインが考えるよりも速く、樹木が異邦人へと振るわれる...


しかしその驚異的な速さの触手を止めたのは黒く刺々しくも流線的な外骨格であった。


奴は今の一合で生身では危険だと即座に看破したのか!何より...


ゴアッッ!!


思考の暇などない。

名称不明の外骨格の後ろが瞬いたかと思うと

掴んでいた樹木を引き裂いて突貫!


その速度亜音速に届き得る...


「おぉぉおぉ!!」


宿主が反応するよりもなお速く触手が感応しアンバーナインを守るかのようにその樹木を瞬時に折り重ねて前へ。




瞬間、12トン強はある樹木の球体がくの字に折れた。





何処までも続く森を薙ぎ倒し突き出た岩盤を一個粉砕してもなお止まらない突貫。


触手の一つが地面に伸び起点にし力を逃がすことで漸く終わる。


今の一撃で樹木の大半が傷つく程の損害。

只の速いだけのタックルでどれ程の威力なのか...!



改めて相対する二体。


奴の外骨格の大きさは人を一回り大きくしたような形状。

頭は完全に隠され表情と言う表情は見えないあるのは敵を殲滅せんと赤く光る眼光だけ...


そして樹木達はアンバーナインの思考を置き去りにして既に対策を示した。


唐突に異邦人伸ばされる樹木。


当たり前の様に奴も籠手で受けて...しかし待ち受けていたのは籠手が砕けると言う結果。


そう樹木は内部の炭素を先端に集中させ驚くべき硬度を持つ槍へと変貌させていた。


そうして邪魔な外骨格を剥がそうと無数に振るわれる樹木に奴も受け流すかの様な体術に変わりながらアンバーナインへ近づく。




樹木の対応も機械的なら奴も機械的だ。


持っているもの達はいつも只人を置いて行ってしまう...



「ギリィィ!」


歯を噛み締めてしまうアンバーナイン。

思わずにはいられないのだにもこのような力があればよかったのにと...







樹木との鬩ぎ合いに徐々に外骨格を剥がされながらエトランゼは自己の思考に埋没していた...


それは自らの力を連続で行使した影響なのか...


抽出テイクアウトを使うと何時も自分から何かこぼれ落ちる感覚がある。


破壊の為だけの力だ。


だから呼び出した外骨格『アイアンフィスト』が代物なのか代物なのかも分かりはしない。


だがこのの機能は分かる。


これは罪人に着せて戦わせる為に使われる代物だ...


だから、機能もついていると言うことを俺は知ってる...




 触手との無数のやり取りにて削られているのは異邦人の方であった。


 現に奴の腹や肩の装甲は見る影もなく砕かれ生身を露出させている。

 

 _________先に動いたのはエトランゼであった。


 唐突に現れる巨大なオドの渦...ちがう!


あれは、あれ自体がで在ると看破した、アンバーナイン


「無駄だ!」


 即座に展開される樹木の膜それはまるで網の様にオドの渦を覆い隠す。


樹木が選んだのは吸収であった。


  キィィィィィィィン!!


 直後、一番原始的で野蛮な魔術が空間を切り裂いた。


 悲鳴をあげる空間と傾く地盤。


その巨大なエネルギー砲を受け切る樹木の網の只中。


 重力の楔から解き放たれた美しき獣が光線の側面を滑るかの様に接近する...


 その光景にアンバーナインは心を奪われる。


 それは幼い頃、自分が憧れた森の勇者の伝承そのままだったからか...


 しかしそのような心の機微を解さない樹木はシステムが作動するかの如くこれ迎撃せんとする。


 その数、実に二十有余はあるか。


本来ならそれで倒せないまでも光線を吸収しきるまでは迎撃できるはずであった。


 樹木の出力配分は完璧であった。



異邦人エトランゼの外骨格がいなければ...


直後、驚くべき加速をもって瞬時に千切れ飛ぶ触手。


 奪われていたアンバーナインの心が帰ってきたのは眼の前まで接近したエトランゼがその巨大な拳を振り抜かんとする間際。


「うぉぉぉぉ!!」


 それはどちらの咆哮か...


 同時に振り抜かれた拳と槍が火花を散らしながら交錯する。


 顔面に迫りくる槍を避けきれず弾けるバイザーに怯みもせずに振り抜かれる拳。



 こちらは奴のエネルギー砲にかなりのリソースを割いている。 


奴にの拳を捌ける手札がないっ...!


       ゴッァ!!


 直後、轟音。


 あまりの威力に樹木の巨体が浮き上がるほどの衝撃。

 しかしアンバーナインが想像していた結果は起こらず、あるのは自分を守るために展開された樹木の束。


 これでは先程の焼き直しだ。


なるほど確かに、亜音速の不意打ちでさえ反応してみせた触手を誰が強化された程度の拳で突破できようか...


「全ては無駄に終わる!」

「お前の才能も研鑽もここでいっ...!」


 思わず喜色に染まるアンバーナイン、そうして奴から吸収した力を以て貫こうとしたところで。


『ガコン』


 聞いてはならぬ音を聞いた。


瞬間...______________『インパクト』


 アンバーナインが最初に感じたのは冷たさだった。

 冷たさのあとに感じたことも無い熱さがあって...


この醜い姿になって初めて痛みを感じた。


 そうしてアンバーナインの腹から下半身を一瞬にして破壊される。


それは見るものが見ればこう言ったであろう。


 ...だと


「がぁぁぁやぁぁあぁ!!」


 腹から下が消失し自重を保てずに傾く樹木の球体。


 すでに吸収している場合ではないのか樹木の網を解除させ少しでも炎の痛みを紛れされるようにのた打ち回る。


 最初に比べ余りにも小さくなった魔砲は森を破壊しながら後方へと流れてゆく。


 エトランゼの右腕の外骨格は先程の攻撃で自壊している。

 しかし、まだ左手が残っているとばかり最後の決着をつけるべく前へ


 だが、業炎の只中であって尚、敵を排除せんと魔手は驚くべき速さで伸びる二本の触手は異邦人の脇腹と肩を容易に貫通しその場に釘付けにする。


「くっ……!」


「エェドォランゼェェ!!!」


 炎の中でさえ爛々と輝く奴の憎しみと憎悪に濡れた瞳がこの闘争がまだ終わって居ないことを知らせる。


 現に奴の炎は樹木の吸収により勢いを弱めていく。


 

一手だ。


一手が足りない。



  すべてを置いて…    前に…


 そうしてエトランゼは致命的な何かを顕現させようと…


 アンバーナインと樹木も更に吸収を早め、みるみる内に下半身の損傷を治し眼の前の敵を殲滅せんと気炎を揚げようとして。


 だから殺意に気づいた者はおらずそのタイミングはにとって致命的であった。


  トス…!


  「え、なん…で?」


 いきなり、アンバーナインの胸には暗部の黒剣が刺さっていて…


 一瞬、静止した時間。


 エトランゼのに自然と目が向けられる。

 そこにはエルフの少女が魔具である弓を番えた姿が。

 その姿が似ても似つかない重なってみえた。


「キサァマァァァァ!!」


 眼の前が真っ赤に成る程の激高。


 即座に放たれる触手は少女を破壊するために奔った。

 もはや門などどうでも良いこの少女が目障りでしょうがない…この恐怖するも立ち向かおうとする少女が


「エトーーーーーーー!!」


「はァァァァあああ嗚呼」


「なっ!」


 だからアンバーナインと樹木は致命的な隙を晒してしまった。 


 ふたたびの轟音インパクト


其れだけで奴を張り付けにしていた触手は砕け散っていく。

 

 その、木片と奴の外骨格の破片が飛び交う中で時間が急速に伸びて行く感覚…


 そうして奴は私の胸に今も尚、刺さっている剣を手に取り…


時間がゆっくり流れているせいか。


   奴の声はよく私の耳に届いた…

 

付与アサイン


選定セレクト オド』


 剣にエトランゼの強大なオドが付与される。


その、あまりにも過剰なオドの輝きに光る剣を人は故にこう呼んだ…



光の剣クラウ・ソラス』と。



 生物の身で防ぎ切れぬ極光が瞬いた…



 










 



 






 


 


 






 









 

 






































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