67話 兄と弟4-蟻の思いも天に届く-
「おい、これはどういうことだよ・・・?!」
永遠が声をかけると、璃玖は永遠に視線をやった。
「・・・蒼空は無事なんだろうね」
「あぁ、蒼空なら無事だ。それより何があったんだよ・・・?!」
その言葉を聞いて安心したのか、璃玖は小さく息を吐いた。
「別に簡単な話だよ。あいつらの目的は、蒼空の誘拐と俺の抹殺だったってこと。そこに倒れている男は全員
「そうだったのか・・・お前を襲うなんて、まさか芝山家は
「そう、芝山家は
「悪かったな・・・でも、その貴重な情報源がなくなったのは痛てぇんじゃねぇの?」
璃玖は首を縦に振って同意した後、不機嫌そうに頬を膨らませた。
「そうだよ。おかげで貴重な情報源がパーだよ・・・蒼空を襲撃しないように抑制もできない。今日だってアンタがいなかったら蒼空を守りきれなかったーー」
璃玖はそこまで言うと、その場に倒れ込んだ。永遠はすぐさま璃玖に駆け寄った。
「おい!大丈夫かよ?!」
「この器で能力を使い過ぎたし、血も流し過ぎた・・・かっこ悪い。あと年齢が一回り上だったら全然違うのに、何で俺はガキなんだろ・・・」
嘆く璃玖の
「・・・無理し過ぎなんじゃねぇの」
「うるさいな・・・で、そっちの状況は?」
そう言いながら、璃玖はゆっくりと起き上がった。
「異空間で邪悪な炎と宿す怨霊と戦闘になったけど、黄色の炎だったし大きなダメージなく倒せたよ。蒼空の同級生が巻き込まれたけど、結界の中で伸びてるから夢だと思ってくれれば良いなって」
話を聞いた璃玖はジト目で永遠のことを見つめた。
「これだから炎駒は・・・嫌になっちゃうよ」
「は?」
「記憶がないのが尚更ムカつくけど、炎駒は
そこまで言うと、璃玖は一気に
「・・・あんまり大きな声出すなよ」
永遠が璃玖の背中をさすっていると、蒼空が永遠達の元に走ってきた。
「酷い怪我・・・早く病院に行かないと・・・!」
「蒼空、これは死ぬような怪我じゃないからとりあえず落ち着いてーー」
言い終わらないうちに蒼空が大粒の涙を流し始めたので、璃玖はぎょっとしている。
「お兄ちゃんはずっと幽霊が視えてたんだよね?特別な力を使って戦うこともあったんでしょう?・・・どうして僕の前では視えない振りを続けてたの?」
「・・・言える訳ないって。だって、俺は蒼空に”自由”に生きて欲しかったんだから・・・五麟の俺は敷かれたレールの上しか歩けない。だから蒼空には好きなことを見つけて、好きなように生きて欲しかったんだよ。俺が視えるって言ったら、”こっち側”に足を踏み入れることになっちゃうじゃん。だから言わなかったのに・・・
蒼空は涙ぐみながら璃玖に勢い良く抱きついた。その際に傷に触れてしまったのか、璃玖は「いっ」と小さく声を漏らしている。
「僕の生き方を勝手に決めないで!僕のせいでお兄ちゃんがこんなにボロボロになるなら、”自由”なんて要らないよ!」
「蒼空・・・ごめんな。お前は俺が思うよりずっと子供じゃなかったんだな」
璃玖は痣が広がって真っ黒に染まった右手で、蒼空の頭をそっと
「僕もごめんね・・・知らないからって、お兄ちゃんに酷いこと言っちゃった」
「全く世話の焼ける兄弟だな」
永遠が
「なに?」
「ずっと地べたに座ってないで、ベンチで休んだらどうだ?ほら、手を貸してやるから」
「だから、俺は炎駒に貸しを作りたくないんだって・・・」
「あのなぁ。五麟同士、これを貸し借りと呼ぶに値しないだろ?」
璃玖は自力で起き上がるのが難しかったのか、観念して永遠の手を借りて起き上がった。永遠の肩に腕を回すと、ベンチまで移動をして腰を下ろした。
「ねぇ。ずっと気になってたんだけど、五麟って何なの?」
「5人の正義の味方ってことだよ。で、俺らの上にボスがいるんだ」
永遠が代わりに答えると、璃玖が「ちょっと」と不満を漏らした。
「戦隊モノみたいだね!じゃあ、5人揃わないといけないんだ!でも、お兄ちゃんは仲間に加わりたくないんだね・・・そしたら、僕が五麟になるよ!」
蒼空の言葉に、璃玖が目を見開いた。
「いや、ちょっと待てって!五麟は誰でもなれる訳じゃなくてーー」
「じゃあお兄ちゃんが五麟として、他の4人と一緒に困っている人たちを助けるべきなんじゃないの?!」
「そ、それは・・・」
「もう、お兄ちゃんったら駄々っ子みたい!やだやだばっかり言ってないで、ちゃんと五麟として頑張ってね!」
璃玖はバツの悪そうな顔をしている。
「・・・だってよ。今後、お前はどうするの?」
「情報源も抑制力もなくなったから、俺だけで蒼空を守ることは難しい。本意じゃないけど、アンタらに協力するから蒼空を守ってほしい」
「りょーかい」
話がまとまって安心した永遠はニヤつきながら言った。
「何その顔、俺の本意じゃないんだけど?!蒼空のために仕方なく!!!」
「はいはい、分かってるって」
「お兄ちゃん、怒っちゃだめだよ」
「蒼空、俺は怒ってないって」
璃玖は不貞腐れながら蒼空のことを
「蒼空、悪いけどあのガキ達が目覚めてないか見てきてくれないか?俺もすぐ行くから」
「わかった!」
蒼空はそう言うと2人から離れて行った。小さくなっていく蒼空の姿に、永遠は幼い頃の
(・・・そうだよな。兄妹なら分かりあえるはずだよな)
「どうしたの?ぼうっとして」
璃玖に尋ねられた永遠は、少し重苦しい雰囲気で口を開いた。
「いや、柊にも兄ちゃんがいるんだけどずっと険悪だから、お前らみたいに和解してくれたら良いのになんて考えちゃって・・・。お前らも十分複雑な家庭だけどさ、柊のところも兄ちゃんと柊で名字が違うんだ。柊は
その言葉を聞いた璃玖は勢いよくベンチから飛び上がったが、傷に響いたようで「!!!」と声にならない声を上げて
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