63話 涙ぼくろと邪悪な炎6-情けに刃向かう刃なし-
永遠が蒼空の頭を
「澪さん、どうしてここに・・・今日は別の任務に入っているはずじゃ・・・」
「知らせを受けて現場に急行したんです・・・状況は・・・」
大急ぎで駆けつけたためか澪は息が上がっており、肩を上下させている。
「異空間に引きずり込まれた
「そうですか、柊さんが一緒なのであれば心配要りませんね」
予想外の返事に永遠が戸惑っていると、澪は不敵に笑った。
「・・・以前、俺は柊さんに言いました。『貴女は剣も立つとは言え、”
その言葉を聞いてハッとした永遠は、柊が消えた場所をじっと見つめた。その隣で澪が
*
柊との戦闘で劣勢になった怨霊は、璃玖に
「おい、しっかりしろ!!」
璃玖が呼びかけると柊は薄目を開けた。
「・・・無事?」
「それは俺がアンタに言いたいんだけど」
柊の弱々しい声に、璃玖が
「アハハハハ!命中!命中!」
上空から
「清々しいくらい
柊は額から流れる血を手の甲で
「神官・・・?」
璃玖の言葉に柊はしまったという顔をしたが、小さく息をついて切り出した。
「あの怨霊は人間を取り込んでいる。浄化すると取り込まれた人間の精神の核が破壊されてしまうの」
「それって・・・」
「生ける
柊は真っ直ぐ怨霊を見据えながら言った。
「他人の人生を終わらせるのって怖くないの?いくら人を助けるためとはいっても、やって良いことと悪いことがあるよ。誰か他の人にでもやらせておけば?わざわざ自分の手を汚すなんて・・・」
「怨霊は誰でも対処できる訳じゃない・・・
「
璃玖の反応を見た柊は笑みを浮かべて首を横に振った。
「・・・『怨霊から人々を救ってほしい。そして師として、
なんとも言えない表情で柊のことを見つめる璃玖に対し、柊は璃玖の両肩に手を置いた。
「璃玖さん、私達は宿命を持って
「俺がどうしたいか・・・?」
璃玖の言葉に柊が
「体ガ重イダロウ。攻撃ヲ受ケタオ前ハモウ、サッキミタイニ飛ベナイ。覚悟ハ決マッタカ?」
「・・・私はそんなに軟じゃないわ」
そう言うと柊の
(ダメージの修復のために解放度を上げたのか・・・俺が咄嗟に自分の身を守れなかったせいで・・・)
俯いていた璃玖は大きく息を吐いてから、緑鷹を見据えた。
「
「それでは
「今の状況で
柊が驚いた様子で目を見張った。
「
璃玖の
「そういや前世ではほとんど共闘がなかったよね・・・索冥が五麟随一の機動力の持ち主だとしたら、俺は五麟の中で随一の強打力を持っている。右手の攻撃さえ当てられればアイツの動きを封じられる。
そういうことだから、索冥は相手に一発雷撃を入れて動きを鈍らせてくんない?あ、俺には当てないでね」
「ええ、頼んだわよ・・・!」
柊はそう言って空へと飛び出していく。
(2人ガカリデモ無駄ダ・・・ドウセ空ヲ飛ベルノハ1人ダケ。分カッテイレバ対処ハ容易イ。1人ズツ
「サア来イ!地面ヘ突キ落トシテヤル!」
緑鷹は迎撃の体制で構えていたが、柊は怨霊を通り過ぎて
「それは私の台詞よ・・・!
柊は上空で高速回転をしながら強風を巻き起こし、雷を
――バリバリバリバリ!
強風によって上手く飛べなくなった怨霊に雷撃が命中した。
「グッ・・・!」
怨霊がバランスを崩して落ちていくのを確認すると、璃玖は跳び上がり右手を大きく振りかぶった。
「
――ドゴン!
「クソ!シテヤラレタ・・・デモ詰メが甘カッタナ!」
璃玖の攻撃を真正面から受けた怨霊は地面にはたき落とされたが、怨霊は再び飛ぼうとした。しかし、体は地面についたままだ。すると戸惑っている怨霊の目の前を璃玖が華麗に着地した。
「――残念でした。俺の攻撃を受けると重力が加わるんだ。君はもう飛べないよ」
そう言うと璃玖はニタリと笑った。怨霊の緑鷹からしても悪魔のような微笑みだった。
「何ダト・・・有リ得ナイ!コンナコトハ・・・!」
「君を生かしておけば俺の大切な人を傷つけるかもしれない。そうなったら困るんだよ・・・ね、索冥?」
「ええ、終わりにしましょう・・・
柊は空中で鋼鉄の靴を放電させると、身体を反転させて右足を振り下ろした。
――ドゴォォォン!!!
「アァァアァァァァ!!!!」
緑鷹の悲鳴が響き渡り、どす黒い炎に包まれると目が虚ろな男が残された。同時に異空間も崩れ始めたので、柊はすかさず璃玖の傍に着地して警戒を強めた。
――パァァ・・・!
一瞬明るくなった後、柊と璃玖は元の都営団地の入口に戻ってきていた。
「柊!黛!」
「お兄ちゃん!柊さん!」
2人の姿を見つけた永遠と蒼空がすぐさま駆け寄った。
「・・・蒼空!」
璃玖は笑顔を
「良かった・・・!お兄ちゃんが無事で・・・!」
「蒼空・・・怖くないのか?俺のこと・・・」
「全然!お兄ちゃんはヒーローだったんでしょ?!」
困惑して口をまごつかせている璃玖の代わりに、柊は「そうね」と答えた。
「おい、索冥!勝手なこと言うなよ・・・!」
「今は良いんじゃないんかしら――・・・」
そこまで言うと柊の体は後ろ向きに倒れていったので、咄嗟に澪が受け止めた。
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