62話 涙ぼくろと邪悪な炎5-情けに刃向かう刃なし-
最後の
「あれ?!永遠くんだ!」
団地の入口の公園で遊んでいた蒼空は、嬉しそうに永遠へ駆け寄った。
「蒼空!どうして――?!」
「蒼空、こいつと知り合いなのか?」
「お兄ちゃん、前に話したでしょ?つばめヶ丘神社のお祭りでね、永遠くんと
永遠と璃玖はお互いに顔を見合わせた。
(蒼空の母ちゃんだったのか・・・!道理で既視感あるはずだよ・・・!)
「
「はあ?!」
「永遠くん、お兄ちゃんと知り合いだったの?」
永遠は璃玖に食ってかかろうとしたが、目を輝かせている蒼空の手前もあり、静かに握り
「こんにちは、蒼空くん」
「柊ちゃん、また来てくれたんだね!」
「「柊ちゃん・・・?」」
永遠と璃玖はポカンとしながら柊の方を見た。
「蒼空くんと会っていたことはお母さんと私達3人だけの秘密って言ったのに」
「何がどうなって・・・?」
柊は状況を飲み込めない璃玖の様子を見て、いたずらっぽく笑った。
「つばめヶ丘の夏祭り以降、澪さんと定期的に接触していたのよ。蒼空くんが
「蒼空・・・お前そんなこと一言も・・・」と言いながら璃玖は
「お兄ちゃんは受験生だし、余計な心配をかけたくなくて!」
「お前はそんな心配しなくて良いんだよ・・・」
璃玖はそう言いながら
「璃玖さんが守りたいものが何なのか、私にも分かってしまった。私は・・・蒼空くんが少し
柊は璃玖と蒼空のことを見つめながら悲しそうに微笑んだ。
(柊・・・?)
「とにかく、今日提示した条件は検討してくださいね」
「・・・分かったよ」
渋々承諾する璃玖を見て笑みを浮かべていた柊だったが、突如血相変えて首から下げている水晶を手に取った。
「永遠、2人を連れて逃げて・・・!」
「え?」
そう言った瞬間、柊は走り出した。
「
柊は団地の入口で待機していた男に向かって
「
――バリバリバリッッッ!!
団地の入口にいた男に切りかかったが、男は素手で柊の雷撃を受け止めた。
(
「・・・オ前、
男は口が裂けたようにゆっくりと笑みを浮かべた。辺りに殺気が満ちていくのが分かる。
「・・・だとしたら?」
柊は鋭く言い放つと、雷刀を握り直した。
「五麟ガイナケレバ、俺ハコンナニ惨メナ思イヲスルコトナンテナカッタンダ。オ前ノ
男はそこまで言うと印を結び、異空間の形成を始めた。璃玖は
「お兄ちゃん!」
「柊!!!」
蒼空と永遠の叫びは2人に届くことなく、柊と璃玖は異空間に引きずり込まれた。
*
(ここは・・・)
璃玖が顔を上げると、目の前には柊と男が
「そっちは無事?」
「璃玖さんもいたのね・・・他に巻き込まれたのは?」
「いや、俺だけ」
柊は視線を男に向けたまま、「そう」と
「生気ガ足リナイ!モット生気ガ必要ダ!」
空に飛び立った鷹の怨霊は頭上で叫び続けている。
「璃玖さん、結界は張れる?」
「索冥はどうするつもりなの?アイツがさっき言ってた怨霊でしょ?しかも緑の炎って、普通に戦ってもまあまあ強いじゃん・・・?」
「相手がどんな相手だろうと、逃げる訳にはいかない」
柊がそこまで言い終えたその時、緑鷹は2人に速攻を仕掛けて来た。柊は璃玖を突き飛ばし刀で怨霊の
――ドゴン!!
爆煙が上がり、怨霊は空高く舞い上がった。
「索冥!」
柊は立ち昇る
「雷刀では分が悪そうね・・・ならば――」
そこまで言うと、柊は雷刀を水晶へと戻した。
「ドウシタ?!降参スルノカ?!」
頭上高くから怨霊のあざ笑う声がする。その声を聞いて、柊は空は見上げながらくすりと笑った。
「いいえ?私も
「ナンダト・・・?!」
柊はアームカバーを外し、天高く右腕を伸ばした。
「我、索冥と契りし
柊がそう叫び空を舞うと、その両足には鋼鉄の靴が出現した。
「あれが・・・第二解放・・・?!」
璃玖は驚きの声を上げた。
「さぁ、始めましょう?」
そう言って柊は瞬時に緑鷹の背後を取り、左足を振り下ろした。
――ドゴン!!
怨霊は柊の一撃によって地面へと
「――っ!」
光線は柊の頬をかすめた後、彼女の後方で爆発した。
「飛ベルカラッテ、俺ト互角ニ戦エルナンテ思ワナイコトダナ!」
怨霊はそう言い放つと一気に高く飛び上がり、柊めがけて急降下した。
――フワッ
柊はぶつかる直前に
――ドゴン!!
「クソッ!チョコマカト!」
「空はあなたの専売特許じゃないのよ」
――ガキン!ガキン!
柊の雷針と怨霊の爪が空中で何度もぶつかり合う。
空中で互角の勝負ということに腹を立てた怨霊は、攻撃に
――バチン!バチン!
柊と怨霊の周囲で神術と雷撃が何度もぶつかり合う。
「
――バリバリバリバリ!
ここで柊の雷撃が
「すげぇ・・・空を統べる武器なんて・・・」
「俺ガ何度モ攻撃ヲ受ケルナンテ屈辱ダ・・・」
地に落ちた緑鷹はゆっくり起き上がろうとすると、近くにいた璃玖と目線が合った。
「ソウダ、始メカラコウスレバヨカッタンダ」
(まさか――!)
柊の俊足も及ばず、怨霊はひと足早く璃玖に向かって大量の神術を打ち込んだ。
――ドゴゴゴゴゴゴン!!!
粉塵で辺りが何も見えなくなる中、璃玖は全身に重みを感じた。
(痛く・・・ない?)
璃玖が恐る恐る目を開けると、柊が璃玖に覆いかぶさっていた。
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