59話 涙ぼくろと邪悪な炎2-情けに刃向かう刃なし-
「お前が麒麟・・・?」
「だ・か・ら!そうだって言ってるじゃん!
「黛くん、君に聞きたいことは色々あるが・・・その前に
「そうっすね」
永遠の了承を得て、冴木は
――リーン・・・リーン・・・
「
神楽鈴を2回鳴らし現れた巨大な根から樹が大きく伸び、結界を突き破った。駒葉高校のグラウンドに戻ってきた時にはすでに日が暮れていて、規制線が張られていた。
「永遠、冴木さん!」
「
「2人とも怪我してるみたいだけど大丈夫?」
永遠と冴木の姿を見つけて柊が駆け寄った。
「僕は受け身を取ったから問題ないが橘くんが・・・」
「頭を少し切ったけど、大した事ない」
「何言ってるの、血だらけじゃない・・・!」
「
柊が目線をやると、璃玖が大きく息を吐いていた。
「あなたは・・・?」
「ごめんごめん、先に名乗れば良かった。俺は黛璃玖。璃玖で良いから・・・でも、
「・・・おい、勝手に話を進めんなよ。お前、その様子だと
永遠は怒りで体を震わせながら璃玖に尋ねた。
「お前に話して何になるんだよ?
「はあ?!」
「橘くん、落ち着くんだ」と言いつつ、冴木が永遠を制した。
(なんだこいつ・・・!すっげー腹立つ・・・!)
永遠が
「さて、そろそろ話そっか。1級情報統制官の茅野柊サン?」
「
永遠は驚きの声を上げたが、璃玖は平然と「隠す気があるならもっと気をつけた方が良いよ」と言い放った。
「お前なぁ!」
「永遠、落ち着いて」
柊は左ポケットにつけられていた校章と「
「
「茅野サンとも2年被ってるよ。でも全然気づかなかったでしょう?茅野サンは七中じゃ有名人だったもんね。高校でも言われてるの?・・・”茅野柊は
――ヒュン
「――
璃玖が
「
永遠は驚きのあまり大声で叫んだが、澪は反応を示さない。
「俺に近づく直前まで殺気消すとかどんな芸当?・・・アンタだけは情報が少ないから想定外だった。前世でもほぼ接点ないしね」
刀を突きつけられているものの、璃玖は平然と言い放った。
「麒麟ですね?」
「そっちは
「駒葉七中に怨霊の出現が多かったのは、索冥だけではなく麒麟・・・あなたがいたことも影響しているでしょう。なぜあなたは当時の柊さんに手を差し伸べなかったんですか?」
「どうして俺が助けなきゃいけないの。この人は好きで五麟の仕事をやってたんでしょう?」
璃玖がそう言った途端、澪は
「澪さん、刀を下ろしてください」
「ですが・・・柊さん」
「璃玖さんの言う通りです。私は自らの意志でやっていたのですから、彼を責めるのは筋違いです」
柊の言葉を受けて、澪は悔しさを
「交渉権があるのは茅野サン、あんただけだよ。他は聞くだけだけど良い?」
「それは――・・・!」
「構わないよ、茅野くん。どちらにせよ、僕たちに話させるつもりはないだろうからね」
柊が難色を示したが、冴木は
「・・・分かりました。あなたの話を伺いましょう」
「じゃあ条件を言うよ。俺はあんた達の情報を突き止めてる。本部のことも、あんた達の素性も。神官や外部に情報を売らない代わりに俺のことを
「それが条件ですか」
「そうだよ」
はっきりと言い放つ璃玖に対し、柊は一拍空けてから口を開いた。
「・・・私に決定権はありませんので、上層部に報告の上で回答させて頂きます。よろしいですか」
「やけにあっさりだね。俺が麒麟って分かっても全く驚かないし。全部想定の範囲だった?」
「――どういうことでしょう?」
璃玖の言葉に、柊がピクリと反応した。
「茅野サンは麒麟の存在にはずっと気づいていたよね?だけど見過ごし続けていた理由を教えてもらえる?・・・まぁ、想像はつくんだけどさ」
「柊、お前気づいてたのかよ!」
永遠は思わず声が出たが、すぐに両手で口を
「
「そう。まぁ、君は自分の能力を犠牲にしてまで、炎駒の記憶を封じていたんだから探さないよね。確かに俺は、
璃玖が悪びれることなく言うので、永遠にも澪の殺気が増しているのが分かった。2人の間に険悪なムードが流れたが、先に折れたのは璃玖の方だった。
「そういや、角端には
そう言って璃玖がスマートフォンを取り出したので、柊もスマートフォンを差し出した。連絡先を交換すると、璃玖は「じゃあまた今度」と言ってその場を離れようとした。
「待ってください。怨霊や神官から命を狙われる可能性もありますし、麒麟の正体が分かった以上このままにしておけません。あなたには警護がつくと思われますが、よろしいですか?」
「警護なんていらないよ。何かあっても自分で対処できる・・・じゃあね」
璃玖は手を振ってその場を後にした。
*
「4人とも、ご苦労だったな」
入江に現場を引き継いでシェアハウスに戻ってくると、本部長の芝山に出迎えられた。4人とも意気消沈していて、無言で各々テーブルに着いた。
「麒麟の件は聞いている。今後どうするかについてだが、本人が望んでいないとなると無理に引き込む訳にもいかない――茅野と澪が現場に出る前に集まって
そう言って芝山は4人に書類を見せた。
(これは・・・?!)
永遠は食い入るように書類を
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