24話 もう1人の自分1-鬼が出るか蛇が出るか-
「
「おい、大丈夫か・・・?」
「ごめん。少しぼーっとしちゃって」
柊がぎこちなく笑みを作った。
「2日も寝てたしな」
「――そうね」
「休んでた間のノートは相内に頼んでおいたから」
「ありがとう。ねぇ、
「眞白は塾だよ。お前の分の任務は
「眞白はそっか、塾だよね。冴木さんにお礼言わなくちゃ」
永遠は柊の反応を見て、
「・・・本当にお前柊か?」
「いきなりどうしたの?」
「何年一緒にいると思ってんだよ。柊のふりしてようが、お前が柊じゃねぇことくらい気づくっつーの。
永遠は真剣に尋ねたが、柊は笑いを堪えきれず、小さく声を漏らした。
「ふふふ。自分が間違っていたらとか思わないのね。柊の言うとおり、本当に面白い人。でも、私が悪い人だったらどうするつもりだったの?あなたが油断してる間に、殺しちゃってたかもよ?」
永遠は敵意を向けてきた柊に対し、
「冗談よ。柊が嫌がることを私がする訳ないじゃない」
「てめぇ・・・!」
「
「
永遠が驚く中、病室に現れた美鶴は柊のベッドまでやって来た。
「――分かったわ。特別に教えてあげる」
「お願いしますね」
美鶴がそう伝えると、柊は不気味に笑った。それは永遠が見たことのない笑みだった。
「私はあなたの言う通り、柊じゃない。私は柊の守護獣、澄義」
「守護獣・・・?何なんだそれ?」
「柊たち
澄義の言葉に永遠が
「柊は”索冥”と契約を結んだの。
「待ってくれ、ちょっと意味が・・・」
永遠は澄義の言葉をうまく消化できずに制止した。
「柊さんは第二解放をするために、守護獣の澄義さんと契約を結ばれているんです。結んだ契約者の魂は天国にも地獄にも行きません。永遠に守護獣の中に宿り続けると言われています。影響は死後だけではなく、契約後の身体は守護獣も自由に使えるようになります」と美鶴が澄義の言葉を補足した。
「美鶴先生、それは暗に、力を得た代わりに身体が乗っ取られるって聞こえるんすが」
「そうですよ」
「は?!」
「澄義さんは柊さんが望んだ時だけ身体を使っているんですよね。そんな守護獣は滅多にいないと思いますが」
「だって、柊のことが大好きなんだもん。どうして柊が嫌がることをしなくちゃいけないの?」
「お前は柊の味方なのか?」
永遠の言葉に澄義は頷いた。
「もちろん。もう一度私を必要としてくれて
「永遠さん、彼女が信頼に足ることは私が保証します」
「美鶴先生・・・分かりました。でも今の話だと、俺の中にも守護獣がいるってことっすか?」
「守護獣と対話をして契約ができる関係になるには、守護獣に認められないといけません・・・。第二解放をするには最低数年のかかると言われています。それに第二解放は一生しない方もいるし、一生できない方もいる」
「一生しない理由は?」
「簡単よ。守護獣と信頼関係が築けなければ二重人格状態だから。自分が破滅することを恐れているのよ」
澄義が美鶴に代わって答えた。
「・・・待てよ。なんで柊はずっと、第二解放を使わなかったんだ?使えばめちゃくちゃ強いんだろ?お前も協力的だし、使わない理由がねぇ気がするけど」
「柊はあなたたちに知られることをずっと怖がってた。だから、なるべく使わないようにしていたの。でも、聳弧の能力は
「無理をしたってことか?」
「・・・柊の性格はあなたもよく知っているでしょう」
澄義は少し悲しそうに笑った。
「そう・・・か・・・」
永遠はぎこちなく返した。
「では、その数日間はこちらに入院していてください。この医院の中にいらっしゃれば、私がフォローできますし、任務につくことを回避できるでしょう」
「ありがとうございます」
澄義は一礼した。
――ブー・・・ブー・・・。
永遠のスマートフォンが振動した。
「本部長からです。ちょっと出てきます」と言って、永遠は病室を後にした。
「・・・柊さんは無茶をしましたね。第二解放をして、回復スピードを急速に高めるということは、寿命を縮めることに
「もちろん、柊も分かっています」
「これ以上、無理をしないように澄義さんからもお伝えください」
「――柊は他の誰かが傷つくことが耐えられないの。だから前世だって・・・。あなたも知っているでしょう?無理をしてほしくないと一番思ってるのはきっと私よ?」
「・・・そうでしたね」
「もう一度生を享けたんですもの、柊の望む通りにしてあげたい。私は本当にそれだけなの」
「3年前、あのような仕打ちをした私に怒っていますか」
「それは別に。柊が望んだことだから。千年待っていたのよ?数年くらい、気に留めてないわ」
「言葉遣い・・・現世のものを使えるんですね」
「柊を通してずっと見ていたから。来たるべき日のために学んでいたの。でも勉強はちょっと心配」
澄義はくすりと笑った。
「そうでしたか」
「ねえ」
「なんでしょう?」
美鶴は真剣な表情で澄義を見つめた。
「あなたは柊の味方と思って良いのよね?・・・それとも、ひょっとしてーー」
「澄義さんのご想像にお任せします・・・では、食事を準備してお持ちしますね。少し待っていてください」
そう言って美鶴は病室を後にした。
「・・・味方だとは答えないのね」
澄義は美鶴が出ていった後の扉を見つめていた。
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