12話 巡り合う運命2-竿竹で星を打つ-
「ちょっと待ってください。俺の話聞いてました?」
「もちろん聞いていた」
「
「・・・少し話をしよう」
芝山は車の近くのコンビニの駐車場に停車した。
「一般人の君に前線で戦ってほしいわけじゃない。任せたいのは、報告書の作成や一般人の避難誘導といった後方支援だ。いかんせん、怨霊が見える人間はあまりいないからな、人手が足りてないんだ」
「それはそうかもしれないすっけど・・・」
「困ったことに、
「芝山さんって、意外と柊に対して過保護なんすね・・・ひょっとして、柊は親代わりのあんたに見張りみたいなのをつけられるのが嫌なんじゃ?」
「なるほど・・・年頃の子は難しいな」
「苦労してるんすね、芝山さんも」
「茅野の性格は君もよく知っているだろう?」
「そうっすね。でも柊が俺と組むかどうかは分からないっすよ」
「――茅野は俺の性格をよく知っている。あいつは君と組むさ」
「え?」
「とにかく、君にとって悪い話ではないと思うぞ?引き受けてくれるなら、報酬も弾もう」
「どのくらいもらえるんすか?」
「最低でも日給1万円、働きぶりに応じて追加報酬もあるぞ」
「・・・
「おいおい、酷い言い方だな。犯罪に加担させるんじゃないぞ」
「分かってます。でもこんな重たいこと、即決するのは無理っすよ。時間ください」
「分かった。今日はもう遅いし、明日シェアハウスで続きを話そう。その足だし、君の家まで迎えに行く」
「・・・分かりました」
「飲み物でも買ってこよう」
芝山が車を降りて、コンビニの中に入っていく。永遠はスマートフォンを取り出すと、画面を操作した。
「待たせたな」
芝山がコンビニの袋を片手に戻って来た。中にはタバコと水が入っているようだ。
「タバコ吸うんすね」
「
「はぁ・・・」
そこから永遠の自宅に到着するまで、2人とも無言だった。
*
「芝山さん。管轄外で派手に暴れるの止めてくださいよ。せめてこちらと連携取ってからにしてって言ってたじゃないですか・・・」
都内の喫茶店の一角で、警視庁
「すまない。連絡は入れたんだが、連携する前に事態が動いてしまってな・・・」
芝山はタバコを取り出してふかした。近年は店内が全席禁煙の喫茶店が増えているが、この喫茶店は変わらず全席で喫煙可であるため、芝山もしばしば利用している。
「山梨県警が怒ってたのを俺が
佐奈田は頬を膨らませている。
「今度
「現場は
佐奈田は山梨県警が回してきた報告書を芝山に見せた。
「芝山さん・・・もう一度ウチに戻って来ませんか?」
「突然どうしたんだ?この間新人が2人入ったと喜んでいただろう?」
「この手の案件が増えすぎて辞めたんですよ・・・まぁ、嫌ですよね。周囲の人に見えないから助けも呼べない上に、
「そうか・・・」
芝山はコーヒーを口に運んだ。
「で、今日話したかったのはこれなんですけど」
佐奈田は別の書類を芝山に差し出した。その書類の表紙には『
「ずいぶん物騒な事件が起きているんだな」
芝山は書類をめくり始めた。
「先輩の部下の子たちに注意喚起してもらえます?ちょっと引っかかってて」
「・・・あいつらが
「あくまで可能性の話ですよ。でも、犯人は特定の人物を探してるみたいなんで」
佐奈田はコーヒーを口に含んだ。
「あちっ」
「相変わらずだな」
「猫舌なのは放っておいてください」
佐奈田はむすっとした。
「部下に情報を共有して問題ないか?」
「むしろそうしてください。あの子たちに何かあったら、こっちも影響出ちゃうんで。それも持っていって大丈夫です。明日には駒葉市内の中学校と高校に同じのが配られるし」
「わかった」
芝山は書類を
「先輩の方は順調なんですか」
「――何がだ?」
「仕事ですよ。警察辞めて3年でしょ」
「まぁ、そこそこな」
「あ、3年前の事件は相変わらず
「・・・だろうな。進展があったらお前は我先に言ってくるだろ」
「まぁ、そうですよね」
「柊ちゃんでしたっけ?大丈夫ですか?」という佐奈田の言葉に、芝山は書類から目を離した。
「分からんな、あいつは。感情的になることはほとんどない。まぁ、隠しているのかもしれないが・・・」
――ブブブブブブ・・・。
佐奈田のスマートフォンが振動した。
「あ、仕事の連絡です。そろそろ行きますね」と言ってお金を出そうとした。
「ここは出すから早く行け」
「先輩すみません。ありがとうございます!じゃあ、また!」と言って素早く身支度をすると、佐奈田は喫茶店を後にした。
――ピリリリリリリリリ・・・!
芝山が地下の駐車場に移動すると、スマートフォンが鳴ったのでディスプレイを確認した。【着信中 茅野柊】という表示を見て、芝山は画面をタップした。
『芝山さん、茅野です。今、話せますか』
「茅野か。あぁ、大丈夫だ。体調はどうなんだ」
『点滴を打ったらだいぶ良くなりました。もうシェアハウスに戻ってきています』
「そうか」と言いながら、芝山は車に乗り込んだ。
『永遠から一言だけ連絡が来ました。【俺、”本部”でバイトしないかって誘われた】って。永遠に打診したのは芝山さんですよね?』
「そうだ」
『彼がどういう存在か分かっていて、声をかけたんですか』
スマートフォン越しでも柊の声がいらついているのが分かる。
「無論だ」
『どうして彼を巻き込むんですか?!永遠は・・・!』と柊が声を荒げた。
「遅かれ早かれだっただろう?ならこちらの目の届くところに置いていた方が良い。それに、茅野は無理を重ねるからな。俺としても監視役がいた方が助かる」
『・・・彼を利用しようとしているんですか』
「今、
『芝山さんの意向は分かりました。本部でアルバイトするにしろしないにしろ、永遠は怨霊を引き寄せてしまうのは間違いないでしょう。だったら”本部”の誰かの目が届くところにいてくれた方が安心です』
「明日、シェアハウスに橘も呼んでいる。詳細はそこで話そう」
『分かりました。では明日、シェアハウスで』
柊との通話終了後、車に乗り込んだ芝山はタバコの封を開け、ライターで火を点けた。
「
芝山の言葉はタバコの煙と一緒に消えていった。
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