第四十八話 優華 あーちゃんと再会
「ノーラ、次の仕事に行きますよ」
「はい、エネット様」
エネットは仕事を終えると、ノーラを連れて仕事部屋を後にした。
ノーラも態度を見ただけでエネットだと察し、従順に従っている。
うちの態度がエネットとは違い過ぎるのは理解しているのだけれど、他の人は騙されているのに、ノーラにだけ分かってしまうのは愛なのだと思う。
うちも、アリーヌと言う人の中にあーちゃんが入っていて、あーちゃんが表に出ていれば分かる自信はある。
あーちゃんもうちが表に出ていれば、分かってくれるんじゃないかと思いたい…。
「ノーラ、行く場所は分かっていますね?」
「はい、承知しております」
ノーラにはエネットの次の仕事が理解できているみたいで、迷わずエネットを案内していく。
二人の関係を羨ましく思っていると、ノーラはお城の外にエネットを連れ出していた。
たまに庭園を散策はしたりするのだけれど、向かっている先がいつも行っている場所とは違っていた。
まさかとは思うけれど…。
「エネット様はここでお待ちください。すぐに呼んで参ります」
「お願いします」
ノーラはエネットを待たせて、メイド達が洗濯物を干している所に向かって行った。
メイド達はエネットが来たのに気付き、仕事の手を止めてエネットに挨拶をしていた。
メイドの中には、黄色い声を上げている子もいる。
エネットは女王だし、人気があるんだよね…。
『エネット、うちはあーちゃんの仕事の邪魔をしたくないんだけれど!』
『観念しなさい!いつまでも話さないままだと進展しませんし、ユーカの仕事の効率も落ちています。
それに、戦場に行けば当分会えなくなるのですよ!今の内に話して仲良くなっていないと、きっと後悔しますよ!』
『うっ、それはそうなんだけれど…』
エネットの言う通りなのだけれど、いまだにあーちゃんと話す勇気が持てないでいる。
それに、何を話せばいいのかも分からない…。
色々な思いが頭の中を駆け回っている間に、やや俯き加減のメイドが一人こちらにやって来た。
一目見て、あれがあーちゃんなのだと分かる。
あーちゃんと話したい!そう思う気持ちが次々と湧き出て来た。
でも今は、エネットが体の主導権を握っていて、うちが話すことは出来ない。
その方が良いのかなとも思うし、少しでもあーちゃんと話したいと言う気持ちがある。
私が混乱していると、あーちゃんがエネットに話しかけてきた。
「エルネット女王様、私に御用との事でしたが…」
「はい、貴方に用があるのはわたくしでは無いのですが、分かっていますよね?」
「はい…」
あーちゃんはエネットの問いかけに、頷いて答えていた。
確信はしていたけれど、今はあーちゃんもアリーヌとして活動している。
あーちゃんもうちが女王になった事は知っているだろうし、呼ばれた理由も分かっているのだろう。
「それでは、わたくしも代わりますので、暫く二人で話してください」
「はい…」
『後は任せます』
『う、うん、頑張ります』
ここまで来て逃げることは出来ない。
うちも覚悟を決めて、あーちゃんと話す事にした。
「あーちゃん…だよね…」
「はい、ゆーちゃん」
あーちゃんはうちの問いかけに、はっきりと答えてくれた。
あーちゃんの声とは違うけれど、あーちゃんだとうちにはしっかりと分かる。
「元気にしてた?」
「はい、ゆーちゃんも元気そうですね?」
「うん、うちも色々大変だけれど、元気にやっているよ」
「私も仕事は大変だけれど、楽しくやっています」
「そっか、それは良かった!」
あーちゃんは元気に仕事をしているみたいで、ほっと一安心した。
それに、あーちゃんと久しぶりに正面から向き合って話をして嬉しくなった。
話題は、ここに来てからの日常の話だけだったけれど、あーちゃんと楽しく話せたことはとても良かった。
「うちは女王だからこっちからは中々会いに行けないけれど、あーちゃんが暇な時はいつでも訪ねてきてくれていいからね」
「えーっと、仕事が終わった後しか暇がないけれど、それでもいいなら…」
「うん、もちろん構わないよ!あーちゃんがうちと話したくなったらいつでも来てね!」
「はい、分かりました」
ずっとあーちゃんと話をしていたかったけれど、仕事の邪魔をしても悪いので、再会の約束をしてあーちゃんには仕事に戻って貰った。
『仲直り出来たみたいですね?』
『ううん、普通に話をしただけだし、仲直りとは違うかな?』
『そうですか?早く仲直り出来ると良いですね』
『うん、ここにいる間にあーちゃんとは仲直りしたいと思う』
『頑張ってください、応援していますよ』
あーちゃんにあの時の事を謝りたいけれど、あーちゃんも思い出したくないよね。
でも、何時かは謝らないといけないし、謝らない事には仲直りも出来ない。
エネットに言った通り、ここにいる間に謝って仲直りをしたいと思う。
「どうやら、上手く話が出来たみたいですね」
「うん、ノーラもありがとう」
「いいえ、エネット様の為にも必要な事でしたので、お気になさらず。
今後は、定期的にお話しする機会を設けるように致します」
「いいえ、仕事の邪魔をしたくないから、それはしないで…」
「そうですか?でも、ユーカ様の仕事の効率が落ちた時には、強制的に話して頂く事にします」
「は、はい…迷惑かけないように頑張ります…」
ノーラにも迷惑かけてしまう事になるし、仕事はしっかりと頑張ろうと思った。
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