第十二話 優華 ロンランス王国の状況 その二
『ユーカ、ノーラは話していなかったけれど、実はルピオン帝国は先に、わたくしのロンランス王国に攻め込む可能性があります』
『えっ!?』
『ロンランス王国は毎年対魔王国の費用として、ルピオン帝国にお金や食料を送っているのです。
その費用を支払う事で、ルピオン帝国がわたくしの国に侵攻して来る事はありません。
しかし、今年は魔王国に侵攻すると言う事で、例年の倍額要求されています。
当然、倍額など支払う余裕はありませんので、例年通りの金額を支払うと伝えたのですが、向こうは納得せず先にこちらに攻め込むぞと脅して来ました。
わたくしとしてもルピオン帝国に攻め込まれては困るので、どうにかならないかと交渉を続けている所です』
ノーラが紅茶を淹れてくれている間に、エネットが先程の話の補足をしてくれた。
花ちゃん!職業体験じゃなかったの!!戦争とか聞いてない!!!
大声で叫びたかったけれど、エネットを困らせてしまうのでぐっと我慢した…。
脅しか…。
喧嘩と同じで、舐められたら終わりだと思う。
多少痛い目を見てもガツンとやらないと、どんどん付け込まれる事になるだろう。
だけど、一国を守る女王としては、犠牲を支払いたくないと言う事なのかもしれない…。
一応、うちの考えを伝える事にした。
『エネット、うちとしては売られた喧嘩は買わないといけないと思う。
費用の増額を一度でも受け入れれば、次から次へと絶え間なく増やされると思うから』
『そうなのです…』
うちに言われずともエネットは分かっているのだろう。
そして考えているのか、黙り込んでしまった。
丁度その時、ノーラが紅茶を用意して来てくれたので、うちは淹れたての紅茶を飲んで一息つく事にした。
「美味しい!」
ノーラの淹れてくれた紅茶はほんのり甘くて、花のいい香りが心を和ませてくれた。
紅茶と一緒に用意されたクッキーも、甘すぎずに美味しい。
これよ、これ!
うちが想い描いていた女王の生活は!
戦争とか難しい話は放置して、ゆっくりと過ごしたい…。
『ノーラの淹れてくれた紅茶はとても美味しいのです。一口だけ代わって下さい』
『う、うん』
紅茶を直接味わいたいと言ったエネットと代わったら、エネットは一口とは言わず全部飲み干してしまっていた。
まぁ、ノーラがまた代わりを淹れてくれたから良いのだけど、そのままノーラに抱き付いて甘えるのはどうかと思う。
ノーラも突然抱き付かれて困惑しているし、うちが抱き付いたのかと思われたみたい。
すぐにエネットだと気付いたみたいだけれど、誤解される様な事は止めて貰いたいと思う。
エネットに代わって私が表に出て、話の続きをする事となった。
「ノーラ、エネットからルピオン帝国に支払う費用の事は聞きました」
「そうでしたか、では、ここで重要になって来るのがルワース聖国とヴィルムーム国です。
ロンランス王国としては増額の費用を支払えませんので、例年通りの費用しか支払うつもりはありません。
ですので、ルピオン帝国はロンランス王国に攻め込む大儀が出来たとして、大手を振って侵攻して来るでしょう。
そこで、ルワース聖国がその隙を突いてルピオン帝国に侵攻してくれれば助かるのですが、恐らくルワース聖国もロンランス王国に侵攻して来る、もしくはヴィルムーム国に侵攻する事でしょう。
状況としては最悪ですので、ロンランス王国としてはルピオン帝国との交渉をできるだけ引き延ばし、その貴重な時間を使ってルワース聖国内部で分断及び破壊工作を行っております。
ですが、あまりうまく行っておりません…」
話を聞けば聞くだけ、最悪な状況なのが分かって来た。
戦争になって負ければエネットは無事では済まないだろうし、最悪殺されてしまうだろう。
もしかして、うちもエネットと一緒に死んじゃう?
いやいやいや…そうなったら花ちゃんが助けてくれるよね!?
それに確か、エネットと花ちゃんの契約は、一度だけこの国を危機を救う言う物だったはず。
大丈夫だと思うけれど、一応エネットに確認してみる事にした。
『エネット、花ちゃんじゃなくて静寂の魔女が守ってくれるよね?』
『はい、そういう契約ですが、わたくし達も努力しないと、一度守られた後に滅ぶ事になってしまいます』
『そうですね…』
戦争は一度きりでは無いだろうし、誰かに守って貰った後はまた守って貰えると言う甘えが生じてしまう。
エネットはしっかりと理解していてそういう気持ちにはならないだろうけれど、実際にこの国を守っている兵士達はそう思うに違いない。
「それで、実際にルピオン帝国と戦えるのですか?」
「短期戦なら戦えますが、数年かかるような長期戦は、国力に差がありますので無理があります」
「短期戦戦えるのであれば、大丈夫では無いでしょうか?」
「ユーカはどうしてそう思われるのですか?」
「それは、ガルガロンド魔王国があるからです。先程ノーラはガルガロンド魔王国がルピオン帝国に戦争を仕掛けると言ってましたよね?」
「はい、言いましたがそれは可能性の話であって、確実ではありません」
「魔王にはクラスメイトの宮下が入っているから、連絡する手段があれば、うちから戦争する様に言う事は出来るけれど…遠すぎるかな…」
「なるほど…」
思い付きで言った事だけれど、話が出来れば宮下にやる気を出させる事は出来そう。
でも、魔王がいる国は遠く、スマホとかの連絡方法が無い限り無理だと思う。
『連絡する方法ならあります』
『そうなの?』
『はい、ノーラも知っていて、その方法を使うか迷っているみたいです。わたくしが許可しますので、魔王と連絡を取る様にノーラに行って貰えませんか?』
『分かりました』
うちはエネットの言葉をノーラに伝えると、ノーラは凄く嫌な表情を見せていた…。
なんだか分からないけれど、ノーラの表情からすると良い方法では無いみたい。
だけど、魔王に頑張って貰わないとロンランス王国が危険だから、ノーラも仕方なく魔王に連絡するのを認めた。
「分かりました。その件は私の方で処理しますので、ユーカは魔王様宛に手紙を書いてください」
「う、うん、分かった…」
手紙かぁ…男子宛に手紙を書くのは気が進まなかったけれど、うちが言い出した事なので頑張って書く事にした。
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