第九話 優華 勇気をだして
「ほら、彩ちゃんは一人でいるから声を掛けるチャンスにゃぁ」
「でも、小説読んでいるし、邪魔しちゃ悪いから…」
「ゆーかは喧嘩は強いのに、意外と度胸が無いよね~」
「け、喧嘩は何も考えなくていいから…」
もこに言われたように、喧嘩なら相手が強くてもぶつかっていく事が出来る。
幼い頃に、パパとママから喧嘩のやり方は教わったし、弟とも喧嘩しまくったから…。
けれど、仲直りの仕方は教えて貰えなかった。
そもそも、パパとママは、うちとあーちゃんの仲が悪くなっているとは思ってもいない。
ママはあーちゃんと買い物で会った時は良く話をしているし、パパもあーちゃんを見かければ挨拶をしている。
うちも家の前では、毎日あーちゃんと挨拶しているから…。
「とにかく、もう少し心の準備をさせて頂戴…」
「分かったにゃぁ」
「しょうがないね~」
二人に納得くして貰い、何とかこの場を切り抜ける事が出来た。
チャイムが鳴り、花ちゃんが教室に入って来たのは良いのだけれど、何故か魔女のコスプレ姿だった。
しかも超似合っていて、有名なレイヤーにも負けて無いと思う。
うちはと言うか、みんなスマホを取り出して花ちゃんの写真を撮っている。
花ちゃんから話を聞くと、今から行う特別授業の為の雰囲気作りという事だった。
特別授業が何かは分からなかったけれど、勉強しなくていいのなら嬉しい。
その特別授業の為に、情報教室へと移動した。
「ゆーか、これはチャンスにゃぁ」
「彩ちゃんを隣の席に誘えば、少しだけでも話せるよね~」
「う、うん、頑張ってみる…」
みんなより先に情報教室へと向かい、あーちゃんの席を確保した。
うちの左隣には、ひなともこが座って見守ってくれているので、思い切ってあーちゃんに声を掛けた。
「い、五十嵐さん、うちの隣が空いているから…こっちに来ない?」
「あ、うん…藤崎さん、ありがとう」
あーちゃんは嫌がる事なくうちの隣に座ってくれて、そしてうちに微笑んでくれた!
可愛い!可愛い!可愛い!可愛い!可愛い!
久しぶりに見たあーちゃんの微笑みは、まるで天使みたい…。
ずっとあーちゃんを見ていたいけれど、今は花ちゃんの話を聞かなくてはいけない。
花ちゃんの特別授業は、花ちゃんが作ったゲームみたい。
ゲームは弟が良く遊んでいて、うちもたまに一緒にやるけれど得意ではない。
それで、うちは女王?
良く分からないけれど、それよりもあーちゃんのメイドと言うのはとても似合っていていいと思う。
花ちゃんは良く分かっていると思いながら、ひなともこのも聞いてみた。
「ひなは剣士にゃぁ」
「あたしは治療士だって~」
「うちの女王よりかはましね…」
「そうかにゃぁ、ゆーかは女王って似合ってるにゃぁ」
「うんうん、そうだよね~」
ひなは中学校の時まで剣道をやっていたと聞いたことがあるから、剣士は合っていると思う。
でもゲームだから、剣道の技術は関係無いのかな?
もこの治療士も合っていると思う。
もこは側に居てくれるだけで、心が癒される時があるんだよね。
うちの女王は良く分からないけれど、他の三人は合っていると思う。
そして、なぜだか花ちゃんからクラス全員の職業を見て回るように言われた。
うちはあーちゃんに声を掛けて、一緒に見て回る事にした。
ゲームだと言う事で、やっぱり戦いに向いている職業が多い。
その中でも気になったのが、うちと同じように戦いとは関係の無い聖女かな。
「ビッチが聖女とか意味わかんねー」
「やっぱそうおもうよな。花ちゃんのミスなんじゃね?」
「「ぎゃはははははは」」
花ちゃんから聖女の職業を与えられていたのは、
彼女が酷いあだ名で呼ばれているのには理由がある。
だけど今はそんな事より、うちはそのあだ名を言った二人の男子を捕まえて睨みつけた。
「あんた達、うちの前で女子の悪口を言うとはいい度胸してるじゃねぇか!覚悟は出来てるんだろうな!」
「「ひぃぃぃっ、ご、ごめんなさい!」」
「ちっ、謝る相手が違うんだよ!」
一発殴ってやろうかと思ったらすぐに謝りやがった…。
二人の男子は慌てて水谷に謝罪に行ったが、水谷は男子を全く相手にしていないので気にもしていない。
でも、クラスの女子はうちが守ると言う事にしている以上、口を出さない訳にはいかない。
他に気になると言えば、勇者と魔王だろう。
勇者はよりにもよって、クラス一の馬鹿で不良の
そして魔王が、小松にいじめられている
花ちゃんは、いじめを無くそうとこの組み合わせにしたのかも知れないけれど、普通逆じゃない?
小松は「魔王を倒すぜ!」とか言いながら宮下を蹴っているし…。
男子の事はどうでもいいので勝手にすればいいと思うけど、見ていて気持ちの良いものではないかな。
あーちゃんも目を逸らしているし、次の所を見に行こう。
「委員長が暗殺者!?」
「あはは、そうなんだよね…」
このクラスの委員長、
細い目でいつも笑みを浮かべていて、クラスの皆から慕われて委員長も任されている。
そんな彼がゲームでも暗殺者と言われれば、信じられないと皆が言っている。
花ちゃんがなぜ暗殺者にしたのかは分からないけれど、たまには羽目を外して見ろと言う事なのかも?
「で、あんたが聖女を守る聖騎士ってわけね」
「…その様だ」
うちの問いかけに渋々答えたのが、他の人を見て回らず、一人だけ席に座っている
彼は芍薬高校に入学してくるなり、この学校の不良達を全員叩きのめしたので、誰も怖がって声を掛けないし何をしていても文句も言わない。
入学して以来試験で満点しかとっていないので、花ちゃん以外の先生も口出しはしない。
禁止されているバイク通学も彼は堂々と行っている。
そんな彼が聖女を守る聖騎士とは、噂はやっぱり本当だったと言う事なのかな?
彼は水谷と付き合っていると言う噂が流れたことがある。
その時はクラス全員驚いたけれど、水谷の事を知っている女子達は絶対にないと思っていた。
でも、水谷は学校一と言っていいほど可愛い顔をしているから、兎滝川が好きになっても不思議ではない。
花ちゃんの耳にもその噂は入っていたのだろうから、これはゲームを通して二人の仲を確かめる為のものなのかも知れない。
うちはあーちゃんと一通り見て回り、席へと戻った。
うちは女王であーちゃんがメイドだから、ゲームでうちのメイドになってくれれば話す機会は多くなるかな?
そんな事を思いながら、花ちゃんが魔女っぽく呪文を唱えている姿を見ていた…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます