チューリップ


ここれさんはある日の帰り道にお花屋さんへ寄りました。


商店街の入り口にある昔ながらのお花屋さんですが、大将が新しいもの好きの粋な人なのでエアープランツだとか最近流行りの植物も置いてある穴場のお花屋さんです。


ここれさんがお花屋さんへ入ると、ここれさんがぐるっと店内を一周見渡した時を見計らって大将が声をかけてきます。


「たくさんかわいいの届いたよ。」


大将はそう言っていくつかのバケツをここれさんの前に並べました。

バケツの中はすべて同じ種類のお花で、どうやら大将の今日のおすすめはチューリップのようです。


「これなんかオレンジの明るい色だよ。」

「わあ、ぷっくりしてて可愛い。」


「そうだろう、こっちはうすいピンク。」

「ふんふん、ちょっと肉厚な感じですね。」


「ううん?うん、こっちは普通のより花びらが多くて珍しいよ。」

「しゃんとまっすぐになってて綺麗。」


「ああ、でもこれは花が大きいから咲いたら少し頭が垂れるよ。」

「ふんふん、こちらを一輪いただけますか。」


「おーけい、一輪ね。」




ここれさんは家に帰ってさっそく花瓶に移します。

チューリップは水をたくさん吸いたがるので、しっかりチューリップが水を吸えるように茎は斜めに切ります。

そしてチューリップは半身浴じゃないと機嫌を損ねるお姫様なので、お水は花瓶の半分です。


ここれさんはテーブルにチューリップを入れた花瓶を飾ってしばらく見つめます。


やっぱり綺麗にまっすぐ伸びていて、緑の色も鮮やかだし健康的で見ていて気持ちがいいとここれさんは満足します。



実はここれさんがチューリップはお花よりも葉っぱが好きで、ついさっき選ぶときにも葉っぱの形ばかり見ていたと知ってしまったら大将もびっくりするでしょう。


ここれさんは昔からチューリップのぷっくりしていてみずみずしい葉っぱが好きなのです。


ここれさんはしばらくして、あっと思いました。

そっか、わたしは黄色いチューリップを選んだんだった。

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