ニューヨーク

ある日曜日、ここれさんが10時に起きて窓辺に並ぶガラスの瓶を手入れしていると、今日は天気が良いことに気づきました。

向かいの屋根にすずめもいるので、気温もあたたかそうな気がします。

なるほど、今日はお出かけ日和ね。

ここれさんはお出かけをすることにしました。


ここれさんはいろんなところから持って帰ってきたポスターを机の上にばさあっと広げました。

こういうとっておきのポスターをいつも本屋さんやカフェなんかでもらってくるのです。

どんなとっておきかと言えば、美術館や舞台やアパレルのポップアップなんかです。

ここれさんは一枚のポスターをくるくる丸めて靴下を履き替えます。

よし、美術館へ行きますか。


日なたを選んで歩いて270円の切符で美術館へ。

ここれさんのポスターに書いてあるギャラリーへ向かいます。

ニューヨーク発!歴史的写真家!


「1500円ちょうどですね。

再入場できませんのでお気をつけください。」


ここれさんはマフラーを解いて中へ進みます。

あらら、黒ばかり。なんだか怖いかも。

周りを見渡してみると同じような写真が続いています。

この写真家は影が好きなのね。

ここれさんは黒があまり好きじゃないので、少し離れたところから何となく見てさくさく次へ進みます。

カラー写真はまだ見れましたが、構図がへんてこで何の写真かじいっと見ないと分からないものが多いです。

ニューヨークって疲れるのね。


ショップも見ましたが、5千円もするトートバッグやマグカップにお構いなしに手を伸ばす人たちが、ここれさんには別の生き物に見えました。


ここれさんは肩を落としてギャラリーを出ましたが、向かいの小さなギャラリーでも別の展示がされてることに気づきました。


「一般ですか?200円です。」


あまり期待せずに入ったのに、ここれさんの曇った気持ちがどんどん晴れていきます。

小さなギャラリーの真ん中で小さなソファに座って、ここれさんの気持ちはわくわくしています。

どうやら1500円の展示よりも200円の展示の方がここれさんの好みだったみたいです。


きっとみんなはワクワクしたくてニューヨークやパリやトーキョーなんてところに行くのね。

ここれさんにとっては、自分をワクワクさせるために世界の裏側まで行く必要はないのです。


ここれさんはマフラーを巻いて270円の切符で帰ります。

あっ、牛乳切れてたんだった。

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