第11話 #11 20XX年8月24日 幹部専用食堂と通常勤務服
司令官室を辞した後、昼食を摂ることに。アキヤマ中将も同席いただきたかったが、忙しい方だ。残念ながらまた今度の機会にということになった。
食堂に行く前、更衣室に用意されていた新しい階級章のついた通常勤務服に着替える……が、アーミー・グリーンの上着、ライトブルーのブラウスとブラックのネクタイはいいんだが、オプション仕様のスカートとパンプスがある。
「ん?女性も通常勤務服、標準はパンツじゃなかったか? スカート履かなきゃいかんのか。ブラを付けるのが最後の一線だと思ってたんだが……」
「はい、大尉はまだ『女性』としての自覚をお持ちでないので女性らしさを身につけるようにということではないでしょうか?」とニヤニヤする。
そこ、ニヤつくとこか!と言いたかったが「しょうがないな……」とあきらめることにした。
食堂は幹部専用でアキヤマ中将の計らいで全員同じテーブルを囲むことできた。
カワカミ曹長は初めての場所であたりをキョロキョロして落ち着かない。ま、オレも同じようなもんだけどな。
ナカジマ中尉だけは落ち着き払っているのが小憎らしいが、『特殊部隊』の件で何度も司令部を訪れているんだろう。
勝田基地の幹部・士官食堂はビュッフェ形式だったのとは違い、ちゃんとウェイターが給仕をしてくれる。さすが陸軍総隊司令部だけはある。
「今日は『HINEWS』の発足式のようなものだから一杯だけ乾杯をするか」と大佐がウェイターを呼び止め、グラスワインを四杯と言いかけると「全身義体の方用に一杯だけノンアルコールにしてください」とナカジマ中尉が訂正する。
「え!アルコールはダメなのか?」とオレが尋ねると「ええ、人工肝臓に悪影響がありますし、第一召し上がっても酔えません」なんだ、そうなのか……ま、いいか。
運ばれて来たワインで乾杯。
せめて食事だけでも楽しもうと思ったのだが、当然他の三人とは異なりオレだけが完全義体専用食だ。
事前に用意されていたと思われるが、さすが陸軍総隊司令部だけはある。病院で摂った食事より味も食感もかなり良かったのが救いだ。
「オレはこれから一生酒も飲めず完全義体専用食なんだな……」ぼそっと呟くと、「『完全義体』なので致し方ありません、大尉」と慰めにならない言葉を中尉から受ける。
「まぁ大尉、そうしょげるな。今日から曹長と同室で暮らして『女性』らしさを身につけてもらうから悩んでいる暇などないぞ。それに語学もな」
「オレと曹長が同室?」「えっ!自分は大尉と同室でありますか!」二人同時に驚く。
「ほら、そういった『オレ』とか男言葉を使わないようにな」と嗜められる。
「曹長、もし大尉が『男言葉』を使ったり身だしなみが整っていなかったら、上官とは思わずビシビシ指導してやれ」とニヤニヤしている。
「では大尉殿、足を広げて座らないでください。膝はちゃんと揃えるのが基本です!」と注意される。うわ〜鬼軍曹の復活だ!
あ〜あ、士官学校で受けた『罰』の方がまだ気が楽だ。
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