第10話 #10 20XX年8月24日 仮称『特殊部隊』改め『HINEWS』
しばらくするとノックと聞き覚えのある声がドアの外から聞こえる。
「ナカジマ入ります!」
「よし、入れ」
えええええ〜〜?なんだって〜?
軍曹いや、今は曹長か。曹長の方を見ると彼女も目を丸くしている。
ナカジマ中尉は入室するや否や開口一番、「タカオカ大尉、昇官おめでとうございます。カワカミ曹長も昇官おめでとう」と敬礼しながら言う。
オレと曹長も戸惑いながら答礼。
「ではアキヤマ中将、私から仮称『特殊部隊』構想についてご説明させていただきます」
「たのむ」
「承知しました。では改めまして私シノブ・ナカジマは仮称『特殊部隊』隊長タカオカ大尉の『完全義体』と、同じく仮称『特殊部隊』副隊長カワカミ曹長の『義手』メンテナンスを中心に、今後増員予定の仮称『特殊部隊』隊員の軍医を勤めさせていただきます」
こ、こいつ!ナカジマ中尉、最初っから『特殊部隊』構想を知っていたんだな!な〜にが『それ以上は自分が知り得る情報はない』だ!
が、まぁ内容的に軍事機密<だし仕方がないか。
中尉が説明した仮称『特殊部隊』の編成経緯は大筋はオレの予想通りだった。
だが、オレの新しい素性と仮称『特殊部隊』の今後の任務については全く思ってもいない内容だった。
・エイイチロウ・タカオカは先の北茨城迎撃戦で戦死。
・義体化前の戦術・戦略で卓越した知識を持った年齢17歳のロシア系ドイツ人アレクサンドラ・フォン・マイヤー"Alexandra von Meier"大尉として戸籍と軍籍が新たに作られるも、その履歴・軍歴は軍事機密とする。
・大尉本人は日本州生まれのため英語と日本語しか話せないので作戦上ドイツ語とロシア語の習得が必要となる。
・大尉の『完全義体』は陸軍総隊司令部サーバーと有線ないし無線・衛星回線での直接データリンクが可能でデータの全権限を掌握。ただしその権限は模擬戦・実戦中のみとする。
・『特殊部隊』の当面の任務は『北』が侵攻作戦を開始した場合に陸軍総隊司令部ないし近接地域の基地から敵軍のレーザー照射装置1K17の早期索敵を行い、発見次第我が軍が新たに開発した1K17を上回る高出力のマイクロ波兵器『High Power Microwave Weapon System ”HPMWS”』による1K17の無効化攻撃を行う。
・HPMWSは1K17の無効化だけではなく戦術として敵ミサイルの迎撃(電子機器の無効化)にも使用。
戦死、あ〜だから二階級特進なのか……あ、両親は悲しんでるだろうな、仕方がないか。
しかしアレクサンドラ(愛称はサンディ"Sandy"か?)として生きていくのか……まぁこの『少女』の姿で『エイイチロウ』は流石におかしいしな。
それに誕生日は7月4日のまま……そうしないと咄嗟の時に誤ってはいけないためらしい。
陸軍総隊司令部サーバーとの有線接続?あ〜この『うなじ』の突起物が接続端子か。
「そして……」と、ナカジマ中尉は「大尉と曹長はドイツ語とロシア語をこれから1ヶ月短期集中で日常会話が可能になっていただきます」
「1ヶ月でドイツ語とロシア語……」なんてこった。
「えええええ〜わたしもですか〜? あ、失礼しました」と軍曹改め曹長。
「以上が現在確定している仮称『特殊部隊』の任務案です。いかがでしょうか中将?」
「概ね良いだろう。が、隊の名称がいつまでも仮称『特殊部隊』ではな」
「はい。いかがいたしましょうか、アキヤマ中将」
「う〜む……高出力マイクロ波兵器『HPMWS "High Power Microwave Weapon Systems"』による『敵兵器の迎撃・無効化"Intercept/Nullify Enemy Weapons"』を行う『特殊部隊 "Special Forces"』か……任務名をそのまま略してHPMWS-INEWS……うん、HINEWSではどうか」
「ではHINEWSで皆さまいかがでしょうか?」とナカジマ中尉がオレたちに聞くが異論はない。
「そうしよう。では本日一一三○を以って仮称『特殊部隊』を『HINEWS』とし、正式に陸軍総隊司令部直属部隊とする。以上」と中将。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます