第2話 西暦二〇六九年七月四日
西暦二〇六九年七月四日――オレの十八歳の誕生日。世間は『独立記念日』(Independence Day)で祝日。
実際には『独立』した日ではなく『独立宣言』をした日、と歴史で習っているけどね。
日本州はアメリカの中でも時差があるため、一番最初にその日を迎える。
当日は全国各地でイベントが催され盛り上がるんだけど、『日本人』にはいまいちピンと来ない。けれどもDepartment storeや街中に"Stars and Stripes"が飾られ、『赤青白』の三色で着飾った人が多くいるので、いやでも『ああ、独立記念日なんだな』と思い起こさせる。
よくある独立記念日の過ごし方は家族友人で集まってバーベキューやピクニック、TokyoやYokohama、OsakaやNagoyaのような大都市での花火やパレード……オレはこじんまりと家族でのバーベキューが一番好きだな。
うちではハンバーガー、ホットドッグが独立記念日のお決まりメニューになっている。
パレードなんて人混みはイヤだから、自宅のApartment HouseからYokohama Portで打ち上げられる花火を見るのが好きだ。
十八歳になったのでオレは"Selective Service Act"(選抜徴兵法)に基づき、"Selective Service System"(選択的兵役登録)に誕生日から三十日以内に登録しなければならない。そして二十五歳までに、一年間の"Military TrAIning"(軍事訓練)を受ける義務もある。
アメリカ国民として同じ日本列島とは言え、分断されている地続きの他国、特に北方のソ連や西方の中国から日本州を守らなきゃいけない。いつ何時彼らが分割統治の条約を破って緩衝地帯を超え侵攻してくるとも限らないしな。
十八歳になったらアメリカ、日本州を守るのが当たり前……と十六歳の『あの日』まではそう思っていた。
そう、アメリカもイギリスの植民地から独立戦争で自由を勝ち取ったんだよな。ならオレたち『日本人』もアメリカから独立してもいい、というか独立するべきなのではないのかという考えが芽生えたんだ……。
両親ともUniversity(何大学だったかは覚えてないが)で『日本学』の教授をしているためか『日本文化の保護・継承者』、今時では珍しい『血統』を重視している。本来の『日本』は国籍は血統に基づいており、『同じ人種・日本の血』こだわる民族であると。
それはアメリカ国民としては『危険思想』であり、そのため常にというわけではないがMilitary Policeから監視されていると聞いている。
その息子であるオレもやはり監視対象であると自覚していたので、『アメリカからの独立』云々の考えはおくびにも出さずに表面上は『愛国者』として生きてきた。
話が脱線してしまったけれど、『愛国者』を装うために選択的兵役登録を済ませ、翌年にHigh Schoolを卒業。その後すぐに一年間の軍事訓練を受け、続けて二年間志願兵としての道を選んだ。
両親からは『せめて大学卒業後に……』と言われたけど、『人生何が起こるかわからないし、兵役を終えたら大学に進学して卒業したら連邦政府にでも就職するよ』の一言で了承を得た。
『アメリカからの独立』を胸に刻んで……。
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