第144話 おじさん、旧友の違和感に気づく。
会見の場へ、
彼らの視点は、ロカと俺に集中する。
アイドル的な人気を誇るロカが、未制圧のダンジョンの攻略メンバーに選ばれているという驚き、そして、俺の左腕が欠損をしている事実に対する驚き。それらがまぜこぜになっているという印象だ。
「ただ今より、
俺達が席に座るタイミングに合わせて、演説台に立つ
「最初に探索庁局長の
「
ですが、事前調査により、構造が
「つづきまして、質疑応答にまいります。繰り返しとなりますが、ご質問は1媒体につき1問のみとさせていただきます」
「では……そこの前から2列目のメガネの方」
「○○新聞のN川です。
「………………………………」
俺は事前の打ち合わせ通り無言をつらぬく。
「先ほど、
「✕✕テレビのO木です。
これくらいなら返答してもいいよな? 俺は右手でマイクを持つ。
「左腕は義手なんです。若い頃の事故が原因です。探索のときは義手を武器にしているのですがダンジョン探索中に義手が壊れたんです」
「わかりました、ありがとうございます」
周囲に安堵の空気が広がる。確かに『ダンジョンに行ったら腕が失くなってました』は怖いものな。ハリボテでもいいから、義手をつけておくべきだった。
「……では、次の方。時間も押し迫ってまいりましたので、次の質問を最後と致します。では、そこのチェックのシャツの方」
「デュフフ。▢▢動画のK川です。ロ、ロカちゃんに質問です」
「え? は、はい!!」
名前を呼ばれて、ロカは慌ててマイクを取る。
「ロカちゃんは、本当にダンジョン探索に参加したんですか? 映像は非公開だし、怪しいなぁ」
「な! ワタシ、おじさんと一緒に戦ったよ!!」
質問者の不躾な質問に、ロカが反論する。
「デュフフ。本当ですかぁ?⤴️ 怪しいなぁ。ひょっとして、最近CMに出ている、清涼飲料水のタイアップかなにかじゃないのぉ?」
「黙れ!」
俺は無意識にマイクを持っていた。
「ロカが1日も欠かさず訓練をしているのは、この俺が誰よりも知っている。確かにまだまだ未熟な部分もあるが……今後も探索庁からダンジョン攻略を依頼されてもロカは必ずメンバーに加える。俺が最も信頼している探索者だからな」
「……あ、う……」
「では、これで質問を終了致します」
質問者が言葉に窮するなか、
「くだらない質疑応答はここまでにして……最後に、皆様には
「あ、はい」
ロカは改めてマイクをもつと、席から立ち上がって大きく息を吸った。
「アタシは、アタシの想いをどうしても伝えたい人がふたり居ます。最初に、ある日突然いなくなっちゃったママ! アタシ18歳になったよ。もう成人だよ。もしどこかで見ていたらお返事ください!!」
そうだったのか……俺は、ロカと初めて合った1年前を思い出す。探索者になったのも、有名になって母親にその存在を知ってもらうためだったのかもしれないな。
「もうひとり、アタシに今の戦闘スタイルを伝授してくれた第2のお師匠様! 今、どこに居ますか? 会ってお礼がしたいです!!」
は? お礼もなにも、
ゾクリ。
心臓をにぎりつぶされるような殺意に鳥肌が立つ。
俺はロカの隣にいる男の顔を見た。その男は、おもいきり口角を釣り上げて、キシキシと笑っていた。
…… お ま え …… だ れ だ ? ?
元最強探索者のおじさん。美少女配信者を助けて大バズりしてしまった。
Episode3に続く。
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なかがき
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
めっちゃ嬉しいです。
このあと、ほんの少しだけ登場した、地図職人の
ひきつづき、応援のほどよろしくお願いいたします。
少しでも「おもしろかったな」と思われましたら、★★★のご評価をいただけますと幸いです。執筆の励みになります!!
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