第139話 美少女、色々と情緒を揺さぶられる。
「おじさん! おじさん!! 返事をして!! おじさん!!」
アタシはすがるような思いでカンコさんを見る。
カンコさんは、アタシと目が合うと、がっくりとうなだれて首を左右にふる。
アタシは胸が泡立つように呼吸が浅くなる。
「はぁ……はぁ……そん……な! おじ……さん!? ウソ……だよね??」
アタシはどうにかこうにか呼吸を落ち着かせると、感情と涙腺を爆発させた。
「お、おじさんが死んじゃったーーーー!!」
『勝手に殺すな! ……すなーーすなーーすなーー』
!? なんだろう? おじさんの声が空から降ってくる。おじさんの声は、こだまとなって反響して、やがて静かに消えていった。
まさか、天からのおじさんの遺言??
『こっちだ!! こっちーこっちーーっちーーーちーーーー』
「え? どこ?? どこ???」
「うひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
アタシはカンコさんを見る。カンコさんはお腹をかかえてケタケタと笑っている。
カンコさんは、ひとしきり笑うと、ぜぇぜぇと肩で息をしながら、天井を指差した。
「おじさん!!」
おじさんは、天井からつららのように突き出している石に、右手一本でつかまっている。
「はっはっは! あたしゃがコイツでお師匠をふっとばしたのさ!! 投擲はあたしゃの
カンコさんは、オーバーオールの胸ポケットからシェールストーン粉砕機をとりだして、ポンポンとお手玉をする。
そっか、緑のマナで竜巻をつくって、上空に避難したんだ。
「ま、そのあと爆風にあおられて、あーんなとこまで飛んてったんだけどねぇ」
カンコさんは、上を見ながらケラケラと笑う。
『いいから、早くたすけてくれーくれーーくれー!!』
「ほんじゃ、ロカちゃん、お師匠の救出はたのんだよん! あたしゃは
そう言って、カンコさんは、ミライさんの元へと向かう。
心のケア? 何となく分かる……けど、とりあえず今は自分の役目に集中しよう。
アタシは、おじさんの真下まで移動してからポシェットを押すと、指揮棒で直径3メートルほどの円を描く。
「コーディング!!」
緑のマナは、アタシの叫びとともに巨大なボール状へと変化する。緑のマナの濃度を薄めて作った、簡易の救護シートだ。
「準備できたよー!!」
アタシは首を90°にかたむけて、おじさんを見上げる。
『耐久度は問題なさそうかー?』
「む!! おじさん、アタシを信用できないのー??」
アタシが、マナで作った救護シートを思いっきり蹴っ飛ばすと、防護シートは「ボヨヨ~ン!」と、その場で激しく波打った。
「どうー? 問題ないでしょー?」
『大丈夫だー!! 問題ないー!!』
おじさんは、ちゅうちょなく右手でもったトンガリ石を離すと、地面に向かってダイブした。
「な!?」
ボヨヨ~ン!
緑のマナの防護シートは「ぷるるるるん」と震えて、おじさんを弾き飛ばした。
ボヨヨ~ン!
ボヨヨ~ン!
ボヨヨ~ン!
10メートルほど上空に弾き飛ばされたおじさんは、防護シートに何度も何度も弾き飛ばされると、そのまま地面に不時着した。
「あははは! おかえり! おじさん!!」
「ロカおまえなあ!」
おじさんは無表情でヅカヅカと近づいてくると、「ぽん」と、右手をアタシの頭の上に乗せた。
「よく頑張ったな、ロカ!」
「うん……おじさんも無事で良かったよ……」
アタシはおじさんの熱い胸板に抱きつくと、顔をゴシゴシと押し付けた。あふれた涙をおじさんに見られたくなかったから。
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