第137話 美少女、ケルベロス戦を見守る。
「……………………グルルル!!」
「……………………グルルル!!」
「……………………グルルル!!」
カンコさんに下手投げで投げ飛ばされたケルベロスは、すぐさま起き上がると態勢を低くして唸り声をあげる姿に、アタシは違和感に気づく。
田中さんのショートソードでできた、右頭の左目がぶくぶくと泡立っている。
「あれ? もう傷が塞がっている??」
「マナの濃度が高いから、あれくらいの傷ならすぐに塞がってしまうよ」
ミライさんから換えのショートソードを受け取った田中さんがアタシの疑問に答えてくれる。
「ふたりは、準備が整うまで安全圏で待機。ロカちゃん、何か合った時はミライをたのむ!」
「わかりました!!」
田中さんはケルベロスのもとに向かう。おじさんとカンコさんはすでに戦闘中だ。
「万全でないところすまない。田中くんは、右の頭をたのむ。俺は左、
「はい!」
「まかせてよ、お師匠!!」
「……………………グルルル……ギャンギャン!!」
「……………………グルルル……ガウガウガウ!!」
「……………………グルルル……バウワウワウ!!」
「ハードニング!!」
「ハードニング!!」
ケルベロスが飛びかかってくるなか、おじさんは左腕の義手を、田中さんは盾とショートソードを白いシェールストーンで強化し、カンコさんは指を組んでボキボキと鳴らしている。
ガギィンン!!
ケルベロスの前足を、おじさんと田中さんがはじくなか、カンコさんが真ん中のケルベロスにガブリと頭からかじられる。
「カ、カンコさん!!」
「食べられちゃったー!!」
アタシとミライさんが悲鳴をあげるなか、おじさんと田中さんはいたって冷静だ。
「大丈夫だ、問題ない」
「あれがお師匠の戦闘スタイルなんで」
食べられるのが戦闘スタイル? ちょっと何言ってるかわかんない。けれど、カンコさんをかじったケルベロスは、
「……グア!! ガガガガウ!! ガウガウガウ!!」
苦しそうなうめき声を上げながら、腰を引いて首を左右にふり、やがて、
「……グア……グア……グア……グア……ブべらぁ!!」
えづくような声をあげながら、血まみれのカンコさんを吐き出した。
「カンコさん!!」
「ひゃああ!! 血まみれー!」
アタシとミライさんの悲鳴がこだまするなか、吐き出されたカンコさんが素早くたちあがる。
服はズタボロになっているけれど、よくよく見ると身体には傷ひとつついてない。これ、ケルベロスの血だ!!
「はっはっは! 何でも食べるケルベロスでも、あたしゃの身体はお気に召さなかったようだねぇ」
カンコさんは「にたり」と笑いながら、血だらけのナイフをジャグリングする。
ええ!?
ワザと食べられて、口の中をナイフで攻撃したってこと?? この人、本当にめちゃくちゃだ。
「おっと、お前にはまだまだ相手してもらうよぅ!! ツイーンパンチ!!!」
「ブ……ブボ……ブボ……ブボ……ブボ!!」
カンコさんのめちゃくちゃな攻撃は終わらない。今度は両手をケルベロスの鼻の穴にねじ込んだ。
「ブ……ブボ……ブボ……ブボ……ブボ!!」
ケルベロスは、たまらず口を開けて苦しがる。
「幻獣といえど、結局のところはケルベロスも哺乳類イヌ科であることは変わりないからねぇ。非常時しか口経呼吸をしないあんたが両鼻を封じられるのは、さぞ辛いことだろうよ!!」
「ブ……ブボ……ブボ……ブボ……ブボ!!」
ケルベロスは、たまらす首を振り回す。けれどもカンコさんは、ケルベロスの短い鼻をガッチリとカニバサミしてしがみつく。
そうとう辛いんだろう、ケルベロスはおおきく反り返って2本足で立つと両前足をつかってカンコさんを剥ぎ取ろうとする。
「おいおい、弱点むき出しだな!! 合わせてくれ田中くん」
「はい!!」
ボグゥ!! ザシュ!!
おじさんと田中さんは、むき出しになったケルベロスの腹を、義手とショートソードで攻撃する。すごい! ケルベロスを圧倒してる!!
「回復のペースが遅くなってきた。ロカ、
「わかったよ、おじさん!!」
「はーい!!」
ミライさんは、腰につがえた矢筒から矢を引き抜く。
アタシも、おおきく息を吐いて集中すると、連携攻撃の準備をはじめた。
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