第134話 美少女、作戦を実行にうつす。

 アタシと、カンコさん、田中さんとミライさんは、おじさんの前に集まって作戦の最終確認を行う。


「よし、じゃあおさらいだ。敵はケルベロス。大きさは不明。だが、少なくともカーバンクルランドのナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんよりは大きいハズだ」

「最悪の状況で、母親と同じ体長2メートルってところだねぇ」


 カンコさんの補足に、おじさんが首肯する。


「ああ。性質は凶暴で攻撃的。食べられるとわかったものは、何にでもかじりつく無尽蔵な食欲を持っている。おそらく俺達のことも『獲物』と認識してちゅうちょ無くとびかかってくるだろう」


 本当にそうなのかな……アタシは未だに信じられないでいる。あの可愛らしかった赤ちゃんケルベロスが、たった一年足らずで凶暴な猛獣になってしまうだなんて、ちょっと信じらんない。


 アタシがぼんやりと考えている間も、おじさんが説明をつづけている。しっかり聞かなきゃ!


「……まず最初に、機動力のあるロカと田中さんがケルベロスを見つけ出して、出会い頭に閃光弾をおみまいする。そして充分に距離をとりつつケルベロスを誘導し魔法陣の近く、つまりは今、俺達がいる場所へとおびきよせる」

「まかせて、おじさん!」

「了解です」


「でもって、あたしゃとお師匠と田中が、ケルベロスの頭1頭ずつと対峙して体力を消耗させる。誰かひとりでもケガをしたら、無理をせずに鈴木がいる第13層へ退却。絶対に無理は禁物だよ」


 カンコちゃんとおじさんは、アタシのことをジロリと見る。自覚はしているけれど、やっぱりアタシの戦い方は、はたから見ていると危なっかしいんだろうな……。


「ケルベロスの体力が消耗してきたら、俺がスキを見計らってケルベロスの動きを止める。数秒は止めることができると思うから、そこにロカと未蕾みつぼみさんのコンビネーション技を炸裂させるんだ」

「はい!」

「はーい!」


 アタシとミライさんは勢いよく返事をする。


 そう。今回の作戦は、アタシとミライさんのコンビネーション技にかかっている。ミライさんの大火力攻撃を、アタシの能力を使って確実に命中させる。

 そこまでやれば、アタシたちの仕事は終わりだ。

 

「最後に充分に弱ったケルベロスを、地上にいる鶴峯つるみねたちが準備している庚申こうしん塚を発動させて封印完了だ」

「あたしゃ個人としては、最後のおいしいところを鶴峯つるみねのヤツに奪われるのがしゃくだけれど、ま、最良の作戦だわね」


 おじさんの説明に、カンコさんが渋い顔をしてうなづいている。

 ……カンコさん、本当に鶴峯つるみね局長のことキライなんだ。過去になにかあったのかな?


「そういうわけで、ロカ、田中さん、早速探索をはじめてくれ」

「オッケー!」

「了解です」


 アタシは精神を集中すると、指揮棒で緑色のマナの球体を4つ作り出す。

 田中さんは、シェールストーンを粉砕機で破壊すると、シャカシャカと振って、盾の内側に装着する。


 ブルルウッルウルン!!

八分音符の上昇気流エイトノーツ・ドラフト!!」


 田中さんは浮遊する盾に乗って、アタシは緑色の竜巻を駆け上がって、ケルベロスの探索を始めた。

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