第126話 美少女、おじさんをグループチャットに参加させる。

*この会より、再びロカちゃんの視点となります。


 おじさんとカンコさんが足がいっぱいある幻獣を倒した後、アタシたちは本当の最下層を見つける作業に従事した。

 手始めに最初にアタシが緑のマナで創った竜巻で、上空からダンジョン内をぐるりと探索をした。


「ロカ、魔法陣は見つかったか? と、聞くまでもないようだな」


 顔に出ていたんだろう。上空からの探索を終えたアタシをみるなり、おじさんはかぶりをふった。


「仕方ない。手分けをして池の中を調べるか。ロカは池の水を持ち上げられるからいいとして、丙田ひのえだ未蕾みつぼみさんはどうする?」


 おじさん、多分だけど、女性に気遣っているのだろう。池の中を探索するような水着やウエットスーツなんてみんな持ってきていないし。


「あたしゃ全然構わないよ。あたしゃのスケスケセクシー姿で、殿方をもれなく欲情させてやる!」


 うーん、今の小学生のようなルックスのカンコちゃんに欲情してたら、法律的に危険がアブナイような気がする……。


「誰もお師匠のスケスケルックになんて興味無いッス!」

「なるほど、確かにそうだな」

「異議なし」


 よかった。とりあえずこの場には、そういう趣味の人はいないようだ。


「カンコさんがやるなら、わたしもー」


 カンコさんとのやりとりをじっと見ていたミライさんが、おもむろに服を脱ぎだそうとする。


「ちょ、ミライはダメっす!!」

「勘弁してくれミライ!!」


 鈴木さんと田中さんが大慌てで止めに入る。


「ちょっとちょっと、なんであたしゃは良くってミライちゃんはダメなのさ!」

「そうだそうだー! わたしも魔法陣の探索しーたーいー!!」」


 カンコちゃんとミライさんが反論するも、鈴木さんとたちが止める理由ははっきりしている。

 ミライさん、普段は山ガールルックだから分かりづらいけど、実は隠れ巨乳だったりする。(うらやましい)


「男女平等!」

「そうだそうだー」

「ダメだ。ミライに風邪でもひかれたら事務所になんと言われるか……」

「とにかく、ミライだけは絶対ダメっす!」


 ミライさんとカンコさんは、田中さんと鈴木さんと激しく言い争う。そんななか、じっと上を見て考え事をしていたおじさんが、重い口を開く。


「……未蕾みつぼみさんは、キャンプの設営と夕食の準備をすすめてくれないかい? なにせ、水に入っての重労働だ。精がついて温かいものがいい。フードコンサルタントのミライさんしか適任は居ないと思うんだが、どうだろう?」

「なるほどですー! じゃ、ちょっと名残惜しいけど、わたしは皆さんのバックアップにまわりますねー。本当になごりおしいけどー」


 おじさんの提案に納得したミライさんが、ようやく魔法陣探索を引き下がる。田中さんと鈴木さんは、やれやれと冷や汗をぬぐっている。


「そういうわけで、探索は俺とロカ。それから丙田ひのえだと田中さんと鈴木さんで手分けしてやろう」

「あたしゃもお師匠の意見に賛成だね。この階層にはさっきの幻獣以外は見当たらないし。だよね、ロカちゃん」

「はい。少なくとも目視でモンスターを確認できませんでした。1メートル級以上のモンスターは、居ないと言い切っちゃっていいと思います」


 アタシの言葉に、おじさんもカンコさんも大きく首肯する。


「決まりだな。5人で手分けをすれば、遅くとも明日中には魔法陣が見つかるはずだ」

「連絡はグループチャットでとりあうってことで。あ、そういやお師匠はガラケーだったっけ?」

「フッ、甘いな丙田ひのえだ。俺はとっくにスマホデビュー済みだ!!」


 そう言っておじさんはスマホを取り出す。待受画像には、おじさんの三つ子の赤ちゃんが映っている。


「おお! メカ音痴のお師匠が文明の利器を操るなんて世も末だ!! なにかの凶兆かもしれないねぇー……ほい。グループチャットつくったからそれで共有ってことで」


 カンコさんは憎まれ口をたたきながら、テキパキとグループチャットを立ち上げる。


「グループチャット?? 何だそれは??」

「あれ? おじさん、チャットアプリつかってるよね?」

「使ってるが、俺はスタンプしか使わない。設定もササメが全部やってくれたしな」

「もう! 相変わらずの機械音痴なんだから!!」


 アタシはおじさんのスマホをひったくると、カンコさんが立ててくれたグループチャットにおじさんを登録する。


「はい! 登録できたよ、おじさん!」

「ありがとうロカ、助かるよ」

「あは。このやりとり、ちょっとなつかしいかも」


 アタシはおじさんと配信を始めたばかりのことを思い出して、ちょっとだけ懐かしくなっていた。

 ……今思えば、あの頃のアタシってかなり世間知らずで失礼なJK だったかも。

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