第124話 そして、深まる謎。

「ガルルルル!」

「ガルルルル!」

「ガルルルル!」


 黒づくめの男にタックルをかましたナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんが、さらなる攻撃を仕掛けようとする。


「みんな! やめるんだ!! もう決着はついている」

「……グルルルゥ」

「……グルルルゥ」

「……グルルルゥ」


 ナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんは、攻撃をピタリと止めると、気絶した黒づくめの男のすぐそばに寝そべって見張りを始める。


「カノエ! 今行くから!!」


 ヒサメさんが青ざめた顔で、大急ぎで外にでていく。


「コヨミちゃん! カノエさんの止血を! あと黒づくめの男も!!」

「りょうかいや!!」

「うきゃっひー!!」


 俺は、コヨミちゃんに指示を出すと、ベッドに置いていたスマホを取って大急ぎで警察に電話する。


「もしもし! こちらカーバンクルランドです! 強盗が侵入してきて……ひとりです。重症者が2名。うちひとりは強盗です。救急車を2台お願いします!!」


 警察を呼ぶと、俺も大急ぎでヒサメさんの後を追った。


「カノエ! カノエ!! しっかりして!!」

「にゃはは! うっかりしちった」


 カノエさんは、笑顔で答えるも、その額には玉のような汗がビッシリだ。


「返事なんてしなくていいから! ゆっくり休んで!!」


 ヒサメさんは、カノエさんを膝枕して目に涙をためている。


 カノエさんの右足は、膝上からザックリと切断されてしまっている。

 その断面を、コヨミちゃんの指示を受けたマナで動くクマのぬいぐるみ型ロボット、緑色と青色のクマメンが、右足に応急処置をおこなっている。


 ほどなく、カノエさんの右足が、ぷるんぷるんのエメラルド色の物体に包まれた。

 水を緑のマナでコーティングした応急の止血処置だ。


「すみません。ウチの力だと止血がせいいっぱいで……」

「おっけーおっけー。ありがとうなのだ!!」


 カノエさんは、ニヤリと笑ってウインクをしながら親指をたてる。


「だから、カノエはしゃべらなくていいから!!」

「ホンマです! 救急車くるまでおとなしくしといてください!!」

「にゃはは……」


 ふう、とりあえずカノエさんは無事そうだ。

 俺は黒づくめの男の方を向く。気絶した男は緑色と青色のクマメンに治療を受けている。


「さてと、こいつの正体を調べないとな」


 俺は黒づくめの男に近づくと、覆面を脱がしにかかる。すると、ナナちゃんが近づいてきて、


「ブフブフ……」


 黒づくめの男の臭いを不審そうに嗅ぎ始めた。そして、


「キャンキャンキャンキャンキャンキャン!」


 いきなり吠え始めたと思ったら、


「ぐえっ!」


 強烈な頭突きで俺のことを突き飛ばしてきた。

 治療に当たっていた緑色と青色のクマメンも、ハッちゃんとキューちゃんの頭突きを食らって巻き添えになって吹き飛ばされる。


「こら! ナナちゃん! 治療をじゃましないでくれ!! 確かにこいつはカノエさんを傷つけた悪いやつだけど……」


 そこまで言った時だった。


 ドッグワーーン!!


 黒づくめの男の上半身が、突然爆発した。あたりには火薬の匂いと、肉が焼ける嫌な匂いがたちこめる。


「……そうか、ナナちゃんは危険を感じて俺たちを突き飛ばしてくれたのか」

「ブフブフ♪」

「えらいぞ! ナナちゃん! ハッちゃんもキューちゃんも!」

「ブヒブヒ♪」

「ブホブホ♪」


 やれやれ助かった。クマメンは一体2000万もするんだ。壊れてしまったら今でさえ苦しい経営が火の車になってしまう。

 それに黒づくめの男の正体をたどる手がかりが、完全に途絶えたわけじゃあない。


 俺は周囲を見渡す。あった! 黒づくめの男の右手だ。

 あいつが使っていたワイヤーが飛び出すバッチのような武器。あれを調べれば手がかりがつかめるかもしれない。そう思った時だ。


 ドッグワーーン!!


 またも大きな爆発音がして、黒づくめの男の手が爆発する。おそらく、武器に自爆装置がしかけられていたのだろう。


 ここまで完全に証拠を消し去るだなんて……どこまで用意周到なんだ?


 俺は、遠くから聞こえてくるパトカーと救急車のサイレンを聞きながら、黒づくめの男と、その後ろにあるであろう得体の知れない組織に、空恐ろしさを抱いていた。






 


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