第122話 世界一の探索者と黒ずくめの男。
ダァンダァン!
ヒサメさんが拳銃をぶっぱなす音を背中で聞きながら、俺はワイヤーでグルグル巻にされたみんなを助け出す。
「
「うきゃうきゃきゃ♪」
「ブフブフ♪」
「ブヒブヒ♪」
「ブホブホ♪」
「みんな、ケガがなくて良かったよ」
ひとりと2匹の無事を確認して、ほっと胸をなでおろしていると、コヨミちゃんが、お団子頭にかぶしてある、まち針だらけのシニョンを取ろうとする。
「ウチも、カノエさんの手伝いします!!」
「い、いやいやいや! コヨミちゃんは、ここで大人しく観戦していてよ!」
「そうですか? カーバンクルランドの危機やのに、なんやお客さんのカノエさんとヒサメさんばっかりに任せるんは申し訳ないです」
俺が大慌てでコヨミちゃんの静止をすると、ヒサメさんも慌てて続く。
「だ、大丈夫よコヨミちゃん! コヨミちゃんには、このあとカーバンクルランドの修繕に力を温存していてほしいの。ホラ、カノエってところ構わず暴れるから!!」
「そうですか? ほんなら、お言葉に甘えさせてもらいます。カーバンクルランドの修繕はクマメンにあんじょうまかしてください! ウチとスケロクとナナちゃん、ハッちゃん、キューちゃんは、応援頑張ります! いくでみんな!! カノエさーん、めっちゃ頑張ってくださいーい!!」
「うきゃっきゃひうきゃきゃー!!」
「キャンキャン!!」
「ワンワン!!」
「バウワウ!!」
やれやれ……俺とササメさんは汗をぬぐう。
カンコちゃんが留守だってのにコヨミちゃんに真の力を発揮されたら、取り返しのつかないことになってしまう。
俺は大急ぎで窓際に行って、カノエさんのバトルを観戦する。
ビュウゥゥゥゥン!!
ゴォォォォォォォ!!
ブォォォォォッッ!!
黒ずくめの男は、右腕(に持っているスイッチのようなもの)から、3本ものワイヤーを繰り出している。
ワイヤーの先端は、緑色、赤色、青色に輝いている。それぞれが、風の力、炎の力、氷の力をまとっているのだろう。
「白、緑、赤、青のマナを同時に発動するなんて、あの強盗、かなりの腕前ね……」
「手に持っている武器が高性能なのかも。ハッちゃんのオシリから出る、超超高密度シェールストーンみたいな素材から削り出したとか?」
「あの強盗、なんやどっかのアニメで見た犯人にそっくりや!」
「うきゃっきゃー!!」
「キャンキャン!!」
「ブヒブヒ?」
「zzz…………」
俺達は、カノエさんと黒ずくめの男の戦闘を観戦しながら、口々に感想を言い合う。でも、ひとつ確実に言えることがある。
「にゃはははは! 攻撃が単純でたいくつなのだ!!」
戦局は、カノエさん圧倒的有利の状況だということ。
カノエさんは、黒ずくめの男がくりだす3本のワイヤーを、ヒラリヒラリと紙一重でかわしつつ、少しずつ少しずつ距離を縮めていく。
そして、あっというまに、カノエさんが持つ細身の剣の射程まで追い詰めていた。
「スキあり!」
バチバチバチぃ!!
「ぐふっ」
緑色の電撃を帯びた細身の剣が、黒ずくめの男にヒットする。
「にゃはは! ちょっち踏み込みが浅かったのだ! でも、次は確実にぬっころす!!」
「っく……やはりマトモに戦っていては勝ち目がなさそうです。仕方がないですね! 先に、あなたのマネージャーとその恋人を殺すことにしましょう!!」
そう言うと、黒ずくめの男は俺達が観戦している宿舎の壁にワイヤーを突き刺すと、すぐさまワイヤーを巻き取りながら猛スピードで近づいてくる。
「あ、待て! ひきょうもの!!」
カノエさんは大急ぎで黒ずくめの男を追いかける。だけど、俺は気がついた。気がついてしまった。
「ダメだ、カノエさん! 眼の前にトラップが……」
俺がそこまで言ったときだった。
「ありゃりゃ?」
黒ずくめの男を追いかけていたカノエさんの右足が、音もなく宙を舞った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます