第118話 美少女ダンジョン最深層に向かう。

 アタシはぷよんぷよんの水面を飛び跳ねて地面に着地をすると、水面に手をあてて精神を集中する。


「フロート!!」


 プヨンプヨンの水面がターコイズ色に光り、ゆっくりとりゅっくりと上昇していって、上空3メートルのところで停止した。青と緑のシェールストーンの複合技だ。


「おお! やるもんだねぇ」


 カンコさんが小さな身体を思い切り上に反らして、ぷよんぷよんの水面をながめている。

 アタシも上を見た。ぷよんぷよんの水面は、陽の光を浴びてキラキラとひかっている。

 水漏れもない。成功だ。


「あー! あそこに魔法陣があるー」


 今度はミライさんが水の底を指さした。アタシもその方向を見る。そこには、まるで鮮血のように赤く鼓動する魔法陣がしっかりと刻まれていた。


「あれ?」

「うん?」

「むむむ?」


 魔法陣を見て、首を傾げている人が3人。おじさんとたすくさん、そしてカンコさんだ。

 おじさんが、首を傾げたままたすくさんに質問をする。


「なあ、たすくくん。君が最初に訪れたときも、池のそこの魔法陣はこんな色だったのか?」

「いえ。紫色です。変だな」


 おじさんの質問に、たすくさんも首を捻りつつ回答すると、カンコさんが口をはさんだ。


「お師匠、あたしゃどうも悪い予感がするんだけどさ。まさか、が湧いて出たんじゃあないのかい?」


 カンコさんは、腕組みをして、右手の人差し指を「とん、ととん、と、とととん」と、不規則にたたきながら、顔をしかめている。

 ぷよんぷよんの水の上で、アタシとたすくさんを囃し立てていたときと同一人物とは思えない。


「ああ。かもな」


 おじさんはカンコさんの問いに、短く答えると、たすくさんの方を向いた。


「とりあえずたすくくん、君の任務はここまでだ。ありがとう、助かったよ」

「礼はいらない。これが俺の仕事。それじゃ」


 そう言うとたすくさんは、背中を向けて立ち去ろうとする。


たすくさん! 約束ですよ!! 今度コラボ配信やりましょう!!」


 アタシの声に、たすくさんは少しだけ足を止めてアタシに向かって手をふると、風のように消え去った。


「おいロカ、ぼさっとするんじゃない!」


 アタシが感慨にふけっていると、背中からおじさんの声が聞こえてくる。

 ふりむくと、みんなもうとっくに池の中の魔法陣の前にいる。いつの間に!?


「わ、まってよぅ!」


 アタシは大急ぎで川の底に飛び込んで、魔法陣へと向かう。


「さっきまで水の中だったんだ。かなりぬかるんでるから、足をとられるなよ」

「わかってるよ! アタシこれで二度目だもん!」


 アタシはおじさんに憎まれぐちをたたきながら、でもしっかり歩くのを早めておじさんの待つ魔法陣へと向かい、おじさんたちに合流すると、そのまま魔法陣の中に吸い込まれていった。 

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