第106話 おじさん、美少女の〇〇〇に衝撃をうける。

 オレンジジュースを飲み干した頃、ロカとヒサメの話題は裏鬼門うらきもんのダンジョンの選抜メンバーの話題に切り替わっていた。


「でもビックリしたよ。おじさんがアタシを選んでくれるなんて」


 ロカの言葉に、俺は反応をする。


「今回の作戦で、ロカの存在は欠かせない。最初は鶴峯つるみねを誘ったんだが、流石に断られてしまってな。シェールロッドを使いこなせる探索者は、鶴峯つるみねとロカぐらいだからな。換えの効かない大事な戦力だ」

「そ、そうかなぁ~!!」


 頬を赤らめながらも、ロカの顔には「まんざらでもない」と書いている。俺は話しを続ける。


「意外だったのは、露花つゆはなさんだよ。あの過保護の露花つゆはなさんが、ロカの探索をすんなりと認めてくれるだなんて」

「事前にお願いしといたの。今回の探索はどーしても行きたいって。でもでも、どうしてアタシじゃなくてパパにかけたの? アタシ、18歳なんだから! もう成人だよ!! パパの許可なんて必要ないんじゃない??」

「学生で親のスネかじってる分際で生意気言うんじゃない!」

「スネなんかガジって無いよ! 家にだってお金入れてるんだから、月◯◯◯万!」

「な!? 月◯◯◯万だと??」


 俺は、びっくりしてシートから身を乗り出しロカを見る。俺の数カ月分の月収だ。

 おどろく俺をよそに、ヒサメがケロリと言ってのける。


「一流の探索配信者なんだもの、これくらいは当然よ。来年は企業案件がびっしり埋まっているし、もう一桁あがるんじゃないかしら?」

「は……はははは……」


 おもわず、乾いた笑いがもれてしまう。

 たしかロカのADにさそわれたとき、配信のギャラは等分でいいっていってたよな。もしあのままADを続けておけば……いちまつの後悔が頭をかすめる。


「そんな一流探索者のロカちゃんがあこがれる、カノエを選抜メンバーから外すってのが、マネージャーの私としては納得がいかないわ」


 ササメがメガネをかけ直しながら、俺をにらむ。口調はずいぶんと穏やかだが、納得がいっていない表情だ。


霜月しもつきカノエは、現役最強の探索者だ。それは間違いは無い。ただ、霜月しもつきカノエのあの戦闘スタイル、紙一重で攻撃を回避する戦い方は、一撃くらえば致命傷になりかねない」

「それは、並の回避盾の探索者の話でしょ? カノエは目視できる攻撃は完璧に回避できるのよ。いくら攻撃が重くてもカノエには関係ないわよ」

「あくまで通常のモンスター相手にだろう? ケルベロスの3つの頭の同時攻撃となると、霜月しもつきカノエも苦労するはずだ」

「そんなことないわよ! おじさんはカノエを見くびりすぎよ!」

「そーだそーだ!! おじさんは見る目がないよ!!」


 ヒサメの反論にロカが加勢する。

 確かに霜月しもつきカノエなら、ケルベロスの同時攻撃にすら、傷ひとつつかないかもしれない。


 だがそれでも、探索者の最高戦力である霜月しもつきカノエを地上に留まらせるのには重大な訳がある。それは……


『当機はまもなくS浜空港に到着します。お客様はシートベルトを装着し……』


 おっと、そろそろ着陸の時間だ。俺は前に向き直ると、シートベルトを着用した。

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