第105話 おじさん探索メンバーのスカウトを始める。
*ここからふたたびおじさん目線のお話です。
「以上で、
ざわざわ……ざわざわ……。
司会が終了の声をあげると、会場は途端にざわめきにつつまれる。
電話をかける新聞記者と思われる人物、ものすごい勢いでキーボードを叩きまくっているテレビの記者と思われる人物、大急ぎで撤収作業にとりかかるカメラマン。
とにかくだ。このスクープのおかげで、大急ぎで紙面や番組の変更を余儀なくされた報道陣は大慌てだ。
俺は、
会場から出てから開口一番、
「さて、私はこれから派閥の裏金問題の集会に参加します。
つまり、国民に対して裏金問題をどうごまかすかを考える集会です」
「先生、お忙しいなかありがとうございました」
「では、これで、私は失礼します。つまり、あとは、全て局長に一任します」
「お任せください、先生にお手をかける事態には決していたしませんので」
チーン
エレベーターが到着すると、俺は、
「では、よろしくお願いします」
と言い残して、エレベーターの中に吸い込まれていった。
エレベーターが閉じると、
「さて。
お前のことだ、既にメンバーは決まっているのだろう?」
「確かに、ほぼほぼ決まっているんだが、ひとり、お前では絶対に説得ができないメンバーがいてな」
俺の言葉に、
「なるほど、カーバンクルランドの跳ねっ返りか。確かにボクではお手上げだな」
「相手がケルベロスとなれば、盾役は最低でも3人は必要だ。
・
・
・
翌日、俺は朝早く起きて、W県S市行きのジェット機に乗った。
「久々にハッちゃんたちに会えるの楽しみー♪」
「ずいぶん大きくなったわよ、体重なんて50キロ超えちゃったんだから。私より重いんだもん」
「ええ!? ヒサメさん、体重50キロないの!? すごーい! シンデララ体型!!」
ふたりがけの席の後ろから、かしましい声が聞こえてくる。なぜか
俺は、振り向いてシートの間からふたりをにらみつける。
「ロカ、お前、受験生だろう。学校はどうしたんだ?? ヒサメも仕事が忙しいんじゃないのか??」
「ヘイキヘイキ、アタシはもう大学決まってるから! 幼稚園からのエスカレート!」
「私は仕事よ。カーバンクルランドで稼働しているお手伝いロボット『クマメン』の、商品化に向けての定例会議があるから」
「本当か?」
俺はいぶかしげにふたりを見る。
「どうせ、理由をつけて、ケルベロスの子供に会いたいだけじゃないのか?」
「「そうでーす♪」」
「だろうと思ったよ」
もっとも、ケルベロスの子供目当てなのはロカとヒサメだけじゃない。俺だってそうだ。
事前にそのケルベロスを視察することで、
脳裏に、ササメと3人の赤ん坊の顔がよぎる。
この任務を無事に遂行するため、出来ることは、できるだけ準備をしておきたい。無事、家族のもとに帰るために。
やれやれ、15年前にくらべて、随分と慎重な性格になったものだな。
俺は自嘲めいた笑みを浮かべながら機内サービスのオレンジジュースをひと飲みすると、眼下の富士山をながめた。
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