第101話 美少女のモーニングルーティーン

*ここからしばらく、ロカ目線のお話になります。


 ピピピピ……ピピピピ……。


 朝7時15分。そろそろ出かける時間だ。


 スマホのアラームを止めると、アタシは玄関に行ってスニーカーを履く。

 上下は、カノエさんがいつも来ているブランドの色違い。アタシの髪色とおんなじ、パールホワイトのオーバーサイズのジャージだ。


「それじゃあ、タラちゃん。行ってくるね!」

「ふご、ふごごごごご!!」


 玄関までお見送りをしてくれる、パグのタラオの頭をわしゃわしゃとなでると、アタシは弾けるように家を飛び出した。 


 今日は第2土曜日。学校はお休みだ。

 とはいえ、休日でも朝のルーティンは変わらない。

 朝と夕方、毎日10キロのランニングをしている。


 アタシは、休日がだいすきだ。


 普段は通学も兼ねているからランニングルートは固定されちゃうけれど、休日ならどこを走っても自由だ。

 アタシは、最近のお気に入りコース、鳥がさえずる緑いっぱいの公園を2週してから帰路につく。


「はぁ、はぁ、ただいまー!」

「ふご、ふごごごごご!!」


 お出迎えにきてくれたタラちゃんの頭をヨシヨシしながら、玄関においておいたスマホを見る。


「はぁ、はぁ。やた! 45分切ってる! 新記録!!」

「ふご? ふご! ふごごっごーーー♪♪」

「一緒に喜んでくれるの? ありがとうタラちゃん!」


 自己ベストを出したアタシは、ごきげんでバスルームへと向かう。

 これも、休日がだいすきな理由のひとつ。ランニングの直後にシャワーを浴びれること。学校では制汗剤で我慢してるけど、やっぱりホントはシャワーを浴びたい。

 アタシはジャージと、汗で身体に張り付いたスポーツブラとショーツをぬぐと、頭から冷たいシャワーを浴びる。


 火照った身体がゆっくりとクールダウンをしていくのがわかる。

 でも、お楽しみはこれからだ。このあと、とっておきのが待っている。


 アタシはバスルームを出ると、バスタオルを巻いてキッチンに直行する。

 ジョギングに出かける前に作っておいた、あまっあまっでキンッキンッのスムージーを冷凍庫から取り出すとほっぺたにあてがう。


「うーん、ひゃっこい!!」

「ふごふご!!」


 スムージーを持ったまま、軽い足取りでリビングのソファに座ると、テレビのスイッチを押した。


 あれ? どの番組も緊急ニュースをやっている。

 へえ……うしとらのダンジョンのすぐ近くに出来たダンジョン、特別警戒ダンジョンになるんだ。


 アタシはチャンネルをピコピコかえて、どのチャンネルもダンジョンの速報をやっているのを確認すると、スムージーの入ったストローを思い切り吸い込んだ。そして、


「ブッーーーーー!!!」


 アタシは口いっぱいにふくんだスムージーを、盛大に吹きこぼす。

 おじさんが、鶴峯つるみね探索局長のとなりで見切れているからだ!


「あーあーあー! ソファがびちゃびちゃ!!」


 アタシは悲鳴をあげながら大慌てでバスタオルを外して、盛大に吹きこぼしたスムージをふきとっていると、2階から寝ぼけまなこのパパがおりてきた。


「おはようロカ。ってオイ! お前なんて格好してるんだ! 年頃の娘がはしたない!!」

「そんなことよりパパ、テレビ見て!! 大変なことになってる!!」


 アタシは大慌てでテレビを指差す。テレビの中の故泉こいずみ大臣は、得意のトンデモ構文でトンデモナイ発言をしていた。


田戸蔵たどくら小次郎こじろう隊長と精鋭メンバーは、裏鬼門うらきもんのダンジョン探索をします。つまり、ダンジョンを封印するということです』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る