第73話 おじさん、スマホデビューする。
駅につくと、俺はさっそうとスマホを取り出して自動改札をくぐる。
ピッ!
自動改札機は機械的な音をたてると、通用ゲートが無愛想に開く。
ふう、やっぱりスマホで改札をくぐるのは緊張するな……。
中でも一番興奮したのはスマートフォンだ。
「なにこれ!? 今のパソコンってこんなに小さくなってるの??」
「コンピューターじゃない、電話だ。それに携帯電話よりも大きくなっている。たかだか電話にあれやこれや機能をつけてもしょうがないだろう。電話は、電話さえできれば良いんだ」
「何言ってるのよ! 手に収まるサイズのパソコンを、だれもが簡単につかえるのよ。とんでもない進化だわ!!」
興奮したササメは、ダンジョンから帰るその足でスマホを契約し、ついでに俺も無理やり購入させられた。
その後、メッセージアプリやら、動画配信アプリやら、なんだかいろんなものを強制的にダウンロードさせられて、半ば強引に使わされる日々がおとずれた。
最初は苦痛以外の何物でもなかったが、使ってみるとなかなかどうして便利なものだ。中でもメッセージアプリがお気に入りだ。
ササメやロカから送られてくる、やたらと長いメッセージにも、スタンプひとつで返事ができて、面倒な会話のやりとりを打ち切ることができる。
あとは、やはり動画アプリだろうか。流行りの動画は全く意味がわからないが、知り合いが出ている動画を見るのは楽しい。
俺は電車に乗り込むと、椅子に座って動画アプリを立ち上げる。
(ダンジョン つ……ゆ……はっし……ロカ)
俺はなれないフリック入力でどうにかこうにか検索ワードを打ち込むと、一番トップに見慣れた顔を見つける。
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『ラブロカチャンネル』
ドキッ! ロカちゃん初めての生◯◯◯◯を大公開!
恥ずかしいけど全部見せちゃう♪
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黄色い極太フォントで、なにやらいかがわしいあおり文句が踊っている。
ん? ライブ配信中??
そうか。今は春休みか。てことはロカも高3か。時が経つのは速いものだな。
俺は軽い浦島現象をあじわいつつ、いかがわしいタイトルのライブ配信の再生ボタンを押した。
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