第60話 美少女、おじさんとキャリアウーマンと待ち合わせをする。

*ここから再びロカ目線のお話しです。


 朝9時40分、アタシはいつものヘソだしミニスカのダンジョン探索コスチュームを着て、うしとらのダンジョンの入り口の前にいた。


 おじさんとヒサメさんとの約束時間は9時50分なんだけど、もう20分まえからここで待っている。


 今日は平日だから、ダンジョンはそこまでは混雑していない。

 でも、さっきからいろんな人にチラチラと見られている。


 こんな目立つ格好をしているのだから、仕方がないのかもしれない。

 探索者として有名になったんだ。と、前向きにとらえよう。

(でも、SNSに投稿されたら学校をサボってるのがばれちゃうな……)


 そんなことをぼんやりと考えていると、おじさんとヒサメさんがダンジョンの入り口に現れた。集合時間の5分前だ。

 ヒサメさんは、プラチナシルバーのジャージ姿。アタシやカノエさんも愛用しているブランドだ。

 おじさんはいつもの動きやすい格好だけど、背中にとんでもない大きさのリュックを背負っている。


「うわ! なに? おじさん、その大荷物?」

「ったく、こっちが聞きたいくらいだよ」


 おじさんは、おっきな登山用リュックを背負って、両手にもリュックを持って、ヒサメさんをにらんでいる。


「半年にいちど姉さんに届ける消耗品よ。もっとも、今日は義兄にいさんがいるから、いつもの倍以上あるけれど」


 そう言いながら、ヒサメさんはおじさんが手に持ったリュックを背負う。

 アタシもヒサメさんにならっておじさんが持ったリュックを背負った。


「うわ! これ結構重い」

「缶詰や米などの食料品だからな。重すぎるようなら半分くらい俺のリュックに入れてくれ」

「ううん。大丈夫!」


 アタシよりも何倍もおっきなリュックを背負っているおじさんを見たら、弱音を吐くのが申し訳なくなってしまう。

 アタシたち3人は、リュックを揺らしながらダンジョンの入り口に向かう。


 その時、ヒサメさんが思い出したようにジャージのポケットから、シルバーのカードを取り出した。


「はい、これがロカちゃんのネイビーライセンスよ」

「え? ネイビー? シルバーにしか見えないですけど……」

「ネイビーライセンスは、一般の人には内密の存在だから、カモフラージュしてあるの。カードに右手の人差し指を数秒間当ててみて。ロカちゃんの指紋を認証して、色が変化するから」


 アタシはヒサメさんに言われた通り、シルバーのカートに人差し指を当ててみる。

 すると、


「あ、色が変わっていく」


 カードは人差し指からじわじわと色が変化して、限りなく黒に近いネイビーに変色していった。


「シルバーに戻したい時は、左手の人差し指を数秒間当ててみて。最下層につながる魔法陣は、第13層の奥地にあるの。

 第13層の魔法陣を使用するにはシルバーライセンスが必要だから、色はシルバーにもどしておいてね」

「わかりました」


 アタシと受付のお姉さんに、シルバー(に偽装した)ネイビーライセンスを見せると、受付のお姉さんが第13層へと案内してくれる。


「そういえばロカ。飼っている犬はどうしてるんだ?」

「ミライさんに預かってもらってるの。シェールストーンを素手で割る修行をしたときも、ミライさんにタラちゃんのお世話をお願いしたの」

「そうか。確かに露花つゆはなさんは忙しそうだもんな」

「パパなんてダメダメだよ。

 タラちゃん、パパにはまったくなついてないんだもん。ま、日頃の行いよね!

 それに比べてミライさんは最っっっっ高だよ。ミライさん、タラちゃんの専用の特別メニューを考えてくれたの。食べ過ぎで太りすぎなタラちゃんのための美味しくてヘルシーなダイエットメニュー!」

「ほう、それはすごいな」

「だよねー。アタシもミライさんにダイエットメニュー考えてもらいたいよ」


 アタシたちは、これからダンジョンの最深部にいくとは到底思えないノンキな会話を交わしながら、うしとらのダンジョンの最深部へとつながる第13層の魔法陣へと入っていった。


 

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