第55話 おじさん、美少女の父親の会食に乱入する。

「ロカちゃん、すぐにお父様の会社に向かいましょう。

 可愛い娘をほったらかしにして、奥さんにひどいことする時代遅れのモラハラ野郎にお灸をすえなくっちゃ!」


 そこからのヒサメの行動ははやかった。


 ヒサメは、ロカの父親の会社に電話をかけ、会食で外出していることを確認すると、その店の住所を半ば強引に聞き出す。

 電話をきるとすぐさまアプリでタクシーを呼び、キーボードをカチャカチャとものすごいスピードで叩いて、ロカがネイビーライセンスを取得するための保護者同意のサインをもとめる書類をプリンターで印刷する。


 ヒサメは、印刷した用紙をクリアファイルに挟むと、腕にはめた時計を見て、俺とロカににっこりと微笑んだ。


「そろそろ、タクシーが迎車に来るころね。でかけましょうか」

「スゴイ、ヒサメさんカッコイイ!」

「うふふ、ありがと。問題児のマネージャーをやってるとね、イヤでも鍛えられるのよ」


 ロカが目を輝かすなか、ヒサメはため息混じりで答える。

 確かに、霜月しもつきカノエみたいな問題児……もとい、常識では測りきれない天才のマネジメントをするとなれば、その労力も計り知れないことだろう。


 俺は、久しぶりに会った、頼もしく成長した義理の妹に感心しつつ、ロカとヒサメと一緒にマンションを出て、タクシーに乗り込む。


「港区の料亭『しらさぎ』までおねがいします」

「かしこまりました」


 助手席に乗ったヒサメが運転手に行き先を告げると、タクシーは静かに発進をする。

 5分ほど走っただろうか。タクシーは、ほとんどメーターがあがらずに目的地の料亭についた。


 ヒサメは、出迎えた店員にネイビーライセンスを差し出すと、手短に要件をつたえ、ロカの父親が会食をしている場所を聞き出して、パンプスをぬぎスタスタと料亭の中を進んでいく。


 俺とロカも、急いでヒサメについていくと、ヒサメは一番奥の個室で歩みを止め、「スパン!」と勢いよく襖を開けた。


 そこにいたのは……


「な、なんだ!? 突然??」

「うはw なんだこの非常識なオンナw」


 ロカの父親とおぼしき40代くらいの男性と、30代の見知った顔。

 ダンジョン整備士をしていたときの俺の上司、逆村さかむらさんがいた。

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