第51話 おじさん、美少女の対戦を見守る。

 霜月しもつきカノエを先頭に、俺たちは屋上の練習場へと向かう。

 屋上につくなり、ロカは開口一番、霜月しもつきカノエを挑発した。


「よろしくお願いします! アタシ、負けませんから!」

「ローちゃんは、チェイサーでいいのかにゃ?」

「はい、一発勝負で!」

「にゃはは! 一発でも百発でもローちゃんが気の済むまで付き合うのだ♪」


 霜月しもつきカノエは余裕綽々で柔軟をはじめる。

 霜月しもつきカノエが大きく身体を反ると、オレンジのパーカーが引っ張られて純白のパンツがコンニチワをした。


 俺があわてて目を逸らすなか、マネージャーのヒサメはご立腹だ。


「コラ、カノエ!! なんて格好してるのよ!」

「にゃはは、こっちの方が動きやすいのだ!」

義兄にいさんがいるんだから! 少しは恥じらいを持ちなさい!!」

「にゃはは! ヒーちゃんのおにーさんなら、カノエの家族も同然なのだ。カノエは全然気にしにゃいよ♪」

「カノエが良くても、義兄にいさんが困るでしょ! それに盗撮でもされたらどうするの?」

「にゃはは、カノエの素っ裸は町中に貼られまくってるから平気平気♪」


 まるで漫才のようなふたりのやりとりに俺が頭をかかえるなか、ロカはもくもくと柔軟をおこなっている。最後に、右手をショートパンツのポケットの中に入れると、あるものをつかんでギュッとにぎりしめた。


「はあ……カノエがボトムスをはくつもりは無さそうだし、そろそろはじめましょうか。ロカちゃんも準備はいい?」

「はい! いつでも大丈夫です!!」


 ロカと霜月しもつきカノエは、それぞれパルクールステージの対角線上に立つと、ヒサメが時計を見ながら合図を出す。


「レディ、ゴー!」


 霜月しもつきカノエは、ヒサメの合図を聞くなり、純白のパンツをチラチラとさせながら障害物を登って、頂上で仁王立ちをすると、


「にゃはは! オニさんこちらー♪ なのだ!」


 と、ロカを挑発する。

 一方のロカも、手早く障害物を登って霜月しもつきカノエを捕まえにいく。


「にゃはは! 5日まえとおんなじゃカノエは捕まんないのだ♪」


 霜月カノエは、ロカの手の届くすんでのところで後方に大きくジャンプをすると、そのまま伸身の宙返りではるか後方の障害物への着地を試みる。


 ……勝負ありだ。


 ロカは右手につかんでいた、緑のシェールストーンをパキリと割ると、大きな声で叫ぶ。


「アップドラフト!!」


 シェールストーンで生み出された緑色の竜巻にロカはちゅうちょなく飛び込むと、大ジャンプをしている霜月しもつきカノエに向かって一直線に突き進み、そのまま抱きついた。


「捕まえましたよ! カノエさん!!」


 霜月しもつきカノエを油断させたロカの作戦勝ちだ。


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