第48話 おじさん、美少女の作戦に頭をかかえる。

*ここから再びおじさん視点です。


 俺は、ロカに腕をぐいぐいと引っ張られながら強引に電車に乗せられる。

 時刻は休日の午後。乗客はまばらで、俺たちは座席に座ると、俺は思ったことをロカに告げる。


「ロカ、正直なところ、お前に教える技なんてもうないぞ。なにせ俺とお前では、戦闘スタイルが違いすぎる。パルクール勝負ならなおさらだ。体術ならすでにお前の方が優れているぞ」

「おじさんに教えてもらいたいのは体術じゃないわ。それに付け焼き刃の体術でカノエさんに勝てるとは思えないもの」

「だったら俺に、何を教えて欲しいんだ?」

「おじさんに教えてもらいたいのは…………………………」


 ・

 ・

 ・


「ってことで、お願い! ね、おじさん!!」

「おいおい! 正気かロカ?」


 俺はロカの作戦を聞いて頭をかかえる。が、確かにその方法なら、霜月しもつきカノエのスキをつけるかもしれない。

 いやむしろ、その方法以外は考えられない。


「ねえ、おじさん、アタシ5日間で習得できるかな?」

「あれはササメに教えてもらった技だ。コツさえつかめば腕力はいっさい関係ない。5日間で習得できるかは、お前の努力次第だな」

「やった! アタシ頑張るよ!!」


 ロカは無邪気にはしゃぐ。


「ただ……霜月しもつきロカとの再戦は、さっきのパルクールフィールドだろう? どうやってつもりなんだ?」


 俺の質問に、ロカは悪戯っぽい笑みをうかめると、俺の耳に口をよせて小さくささやく。


「……おいロカ、俺を犯罪者にするつもりか!?」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ! バレたら『あれ? うっかりしてました!』で、すませばいいじゃん!」

「あのなぁ……」


 俺はロカのメチャクチャな提案に、ふたたび頭をかかえる。


「カノエさんに勝つためには、おじさんの力が必要不可欠なの!

 協力してくれたら、お礼になんだってするから!! ね、お願い!」


 そう言うと、ロカは俺に向かって手を合わせる。

 その手は「ぐぐぐっ」とものすごい力がこめられていて、今にも俺の顔面に突き刺さりそうだ。


 ……確か前にもあったな、こんなこと。


「わかった、わかった。協力してやる。だが学校をサボって大丈夫なのか? 親御さんがなんていうか」

「え? それは…………だ、大丈夫だよ! ちゃんと両親には説明するから!!」


 ? なんだ? 変な間があいたな……。


「ずいぶんと物分かりがいい両親だな」

「ひ、日頃の行いだよ! アタシ、学校でも優等生で通ってるんだから! ホ、ホントだよ!」

「……まあ、いい。まずは技の習得が最優先だ。俺もモノにするのに1ヶ月近くかかったんだからな」

「大丈夫、大丈夫! アタシ、おじさんよりセンスあるから!!」


 まったく……どっからその自信が湧いてくるんだ?


『次は艮町うしとらちょうー。艮町うしとらちょうー』


 ほら、おじさん着いたよ! 急いで急いで!

 俺は、ロカに腕をぐいぐいと引っ張られながらうしとらのダンジョンに強引に連れていかれると、そのまま受付を済まして第8層につながる魔法陣へと入っていった。


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