第47話 美少女、あこがれの人にリベンジを誓う。

「……はぁ……はぁ……はぁ……」

「にゃはは! まんぞくまんぞく! JKのピチピチボディをたっぷり堪能できたのだ♪」


 息絶え絶えのアタシをよそに、カノエさんは満面の笑みで口を右手でしゅるりとぬぐう。


「ローちゃんは、かなりの逸材なのだ。カノエが隅々までボディチェックをしたからまちがいにゃい!」

「……はぁ……はぁ……ボ……ボディチェック??」

「しなやかな筋肉が、むっちりしたボディのしたに健やかに成長しているのだ。このままあせらず、じっくりと修練にはげめば、ローちゃんは間違いなく超一流の探索者になれるのだ!」

「……はぁ…………はぁ……ほ、ほんとうですか?」

「間違いにゃい! だから今回の最下層探索は、カノエとヒーちゃんにどーんと任せればいいのだ!」


 カノエさんの言うことはもっともだ。でも、アタシはどーしても諦めることができなかった。


「……はぁ……はぁ……ヒサメさん、最下層に潜るのは1週間後ですよね?」

「ええ。それが、なにか?」


 アタシは弾む息を落ち着けると、カノエさんをまっすぐ見つめて、思ってることを言った。


「だったら、1週間……いや、5日間待ってくれますか? それだけあれば、チェックタグでカノエさんをつかまえることができます!」


 アタシの言葉に、ヒサメさんとおじさんは目をむいた。


「あなた、まだ諦めてないの?」

「ロカ、霜月しもつきカノエとの実力差は、直接対決したお前が一番身に染みているだろう。大人しく引き下がるんだ」


 おじさんの言う通りだ。普通に戦ったら、アタシはカノエさんに絶対に勝ち目はない。

 でも、おじさんのを習得すれば、きっとカノエさんに手が届くはずだ。


「ヒサメさん、お願いします。もう一度チャンスをください!!」


 アタシはヒサメさんに頭をさげる。


「ロカ! わがまま言うんじゃない!」

「……露花つゆはなさん、これは遊びじゃないのよ」


 珍しくおじさんが怒っている。ヒサメさんも口調はやさしめだけど、その表情は氷のように冷めている。

 当然だ。なにせブラックライセンスが必要な最深部に潜入するんだ。JKなんかのワガママでどうにかできるものじゃない。


「いいよん♪ ローちゃんと、もう一回だけ勝負するのだ!」


 頭から声が聞こえる。カノエさんの声だ。

 見上げるとカノエさんが、パルクールステージのてっぺんで逆立ちしながらニヨニヨと笑っていた。


「カノエ! またそんなワガママ!!」

「にゃははは♪ カノエは売られたケンカは買う性分なのだ。たった5日間でカノエに勝つなんてふっかけられたら燃えてきちゃうのだ♪」


 カノエさんは、逆立ちのままパルクールステージの最上段から腕の力だけでジャンプして、アタシの目の前に飛び降りた。


「たった5日間で、どれだけ変身できるかにゃ?」


 ゾクリ。


 カノエさんは口角をニヤリとあげる。でも目は笑っていない。まるで肉食獣のようにギラリと光っている。

 その瞳は『自分が負けるなんてあり得ない』と言っているようだ。


 ヒサメさんは「はぁ」とため息をつくと、アタシに向かって言った。


「わかったわ、露花つゆはなさん、もう一度だけチャンスをあげる。

 5日後にまたチェイスタグで勝負でいいわね?」

「はい! ありがとうございます!!」

「にゃはは♪ 楽しみなのだ♪」


 カノエさんはいつものニヨニヨ笑いに戻ると、アタシのおしりをモニュモニュともみはじめる。


「そういうわけでおじさん。明日から5日間、学校休んで特訓するから付き合ってね!! 教えてもらいたい技があるから!」

「は? どういうことだ??」

「いーから、いーから! まだうしとらのダンジョンの閉園時間まで時間があるから、さっそく修行に付き合ってよね!」


 アタシは、カノエさんにおしりをモミモミされながらエレベーターの前まで見送ってもらうと、困惑するおじさんの腕をぐいぐいとひっぱって、最寄りの駅から電車に乗ってうしとらのダンジョンに向かった。



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