第46話 美少女、あこがれの人に完敗する。
「よろしくお願いします! アタシ、負けませんから!」
「そんじゃ、どっちが先にチェイサーをするかにゃ?」
「アタシが先にやります!」
「りょーかいのすけ。だったらカノエはイヴェイダーをするのだ」
チェイサーは追いかける側で、イヴェイダーは逃げる側のことだ。
アタシとカノエさんは、それぞれパルクールステージの対角線上に立つと、ヒサメさんが時計を見ながら合図を出す。
「レディ、ゴー!」
カノエさんはヒサメさんの合図を聞くなり、ひょいひょいと目の前の障害物を登って、頂上で仁王立ちをする。
「にゃはは! オニさんこちらー♪ なのだ!」
根っからの負けず嫌いのアタシは、カチンとくる。
自分から距離をつめてくるなんて! ずいぶんと甘く見られたものだ。
「カノエさん! すぐに捕まえますからね!!」
アタシは障害物をよじ登ると、思い切り手をのばしてカノエさんの足にタッチしようとする。だけど、
「え!? 消えた??」
「にゃはは! オニさんこちらー♪ なのだ!」
カノエさんは、アタシのはるか後方の障害物の上でおいでおいでをしている。
「ええ? ウソでしょ!?」
立ちジャンプでアタシを飛び越えて、あんな遠くまでいくなんて、とんでもない身体能力だ。
「タイムアップ!」
ヒサメさんの声が響き渡る。
結局アタシは、カノエさんに触るどころか近づくこともままならず、あっという間に20秒が経過した。完敗だ。
アタシがイヴェイダーをやったときはもっとひどかった。
カノエさんは、逃げまどうアタシにあっという間に距離をつめて逃げ場をなくすと、
「つかまえたのだ!」
「うひゃあ!」
カノエさんはアタシをはがいじめして、アタシのおしりとかバストとか腰回りをモミモミともんでくる。
結局アタシは、カノエさんに身体じゅうをくまなくモミモミされてあっという間に10ポイントを取られてしまった。
最後の方なんて、アタシは完全なスタミナ切れになってしまって、走ることさえままならくなっていた。勝負以前の問題だ。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「にゃはは! まんぞくまんぞく! JKのピチピチボディをたっぷり堪能できたのだ♪」
カノエさんは満面の笑みで、口を右手でしゅるりとぬぐう。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
カノエさん、ひょっとしてアタシの身体をモミモミしたいがために、チェイスタグ勝負を持ちかけた……ってことは……ない……よね?
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